インドネシアの脱炭素化計画、見えてきた問題点とは

インドネシアは今年6月、2060年までに化石燃料から自然エネルギーに転換し脱炭素化を達成すると発表しました。

石炭火力発電は、温室効果ガスを大量に排出するため、地球温暖化の主な原因の1つとして自然エネルギーへの移行が強く求められてきました。しかし、安価で安定的な調達が見込めるというメリットがあり、途上国では未だ需要が大きいのが現状です。
このような背景から、東南アジアでは長らく脱炭素に向けた取組がなされていないと言われてきました。そのため、このように東南アジア最大の経済大国であるインドネシアが脱炭素に関して意思表示を行ったことは、東南アジア全体での脱炭素化に大きな影響を与えるでしょう。

政府・国営電力会社PLN、石炭火力発電所廃止に向けた計画発表

政府は新規の火力発電所建設を認めず、すでに建設中であるか資金面での計画が済んでいるものについてのみ建設を承認しています。また、工場や発電所など温室効果ガス排出の源になる産業に対し、炭素税の導入も検討しているようです。

インドネシアの国営電力会社Perusahaan Listrik Negara(PLN)は、2050年までに石炭火力発電を徐々に減らすことでカーボンニュートラルを達成する公約を発表しています。2020年以降徐々に発電所の新設数を減らしていき、2028年以降は新設しないことで、化石燃料から再生可能エネルギーへと移行していく計画です。
2056年には合計4,900万kWの石炭発電所を廃止すると予定されています。

具体的な目標としては、PLNは2030年までに再生可能エネルギーの発電容量を現在の790万kWから2,410万kWへと3倍以上に増やすことを目指しています。このまま計画が実行されれば、2060年には、現在は1%にも満たないエネルギー需要のうち53%が太陽光と風力によるものになるとのことです。

具体性や経済的実現性に課題も

今回のインドネシアの発表は、東南アジアが脱炭素化に向けた一歩を踏み出した喜ばしい出来事ですが、取組に多くの問題点があるのも事実です。

まず、PLNの計画は具体性や透明性について懸念されています。
インドネシアの研究機関・エネルギー経済・財務分析研究所(IEEFA)の専門家であるElrika Hamdi氏は、「新規の石炭火力発電所を認可しないという発表は、現在のところ法的根拠がない」と述べています。建設を承認する定義を法的に明らかにしていないために、建設に長期期間を要する事業では、発電所が座礁資産となる可能性が極めて高くなるのです。

さらに、PLNは、石炭火力発電所の稼働率を維持するために、バイオマス混焼(石炭ボイラーの燃料の一部をバイオマスで代替すること)を検討していますが、今年初めに発表されたIEEFAのレポートでは、このバイオマス混焼の経済的実現性、原料供給の安定性、技術的課題について疑問が呈されています。

経済的実現性

インドネシアでは、他の新興国と同様に自然エネルギー変換の費用を政府のみで負担することはできません。実際、過去の電力開発計画に含まれていたいくつかのクリーンエネルギープロジェクトは停滞しています。再生可能エネルギーの開発は近年年間平均50万kWにとどまっている一方で、2020年、インドネシアのエネルギーシェアに占める石炭の割合は前年の37.1%から38%に上昇しました。一方、自然エネルギー開発のためには、投資家や民間企業の参入を容易にする新しい政策が必要です。

インドネシアではこのように脱炭素化に向けた画期的な政策が実施されようとしていますが、問題点は多数残されています。しかし、これまで経済的・技術的な理由から進んでいなかった途上国でのエネルギー変換の動きは、世界的な脱炭素化に影響を与えるものとして大きく評価されるべきではないでしょうか。

この記事をSNSでシェア