地球上のすべてのモノが幸せであるために、パナソニックが取り組むこと

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パナソニックグループ(以下、パナソニック)は2018年に創業100周年を迎えた日本を代表する総合電機メーカーです。2022年4月から、パナソニック株式会社をパナソニック ホールディングス株式会社へと社名変更し、持株会社にするとともに各事業会社を設立し、新しいグループ体制に移行いたしました。7つの事業会社ごとに業界に向き合いモノと心がともに豊かな理想の社会をめざして、地球環境問題の解決と、世界中の皆様お一人おひとりの「くらし」 と「しごと」の場面での、人々のウェルビーイング、すなわち快適で安心で、心身ともに健康で幸せな状態への貢献を果たすことに取り組んでいます。環境経営の取り組みにおける日本のパイオニアでもあり、「Panasonic GREEN IMPACT」や「Panasonic Climate Action Handbook」など、革新的な取り組みをいくつもおこなっています。

今回は、パナソニックオペレーショナルエクセレンス株式会社の品質・環境本部環境経営推進部 グローバル環境推進課 エネルギー革新ユニット ユニットリーダーである野上若菜さんをお呼びし、パナソニックの環境経営の取り組みの概要や反響、また取り組む中での課題などについてお話をお聞きしました。

野上若菜 のがみわかな
パナソニックグループ
パナソニックオペレーショナルエクセレンス株式会社
品質・環境本部 環境経営推進部
グローバル環境推進課
エネルギー革新ユニット ユニットリーダー


2007年 パナソニックエコシステムズ(株)に入社 研究開発に従事
2017年 パナソニック(株)品質環境本部に異動 工場CO2削減に従事
2020年 エネルギー革新ユニット ユニットリーダー
〜現在 CO2ゼロの工場づくりのグローバル展開を推進中

目次

パナソニックの新たな中長期環境ビジョン「Panasonic GREEN IMPACT」

ーー今回は取材の機会をいただきありがとうございます。早速パナソニックが新たに発信した中長期ビジョンである「Panasonic GREEN IMPACT」についてお伺いさせてください。

野上:こちらこそありがとうございます。「Panasonic GREEN IMPACT」は2022年4月1日にCEOである楠見雄規から発表された新しい環境ビジョンです。

世界の10億人もの人がパナソニックの製品を使用しており、それはすなわち、パナソニックは世界の電力の約1%の責任を背負っていることだと捉えています。製品ができるまでの過程で排出されたCO2はもちろん、お客さまがパナソニックの製品を通して排出したCO2に対しても責任を持ってグループ一丸となって削減していくことを目指し、この「Panasonic GREEN IMPACT」が掲げられました。これはパナソニックが目指す「理想の社会の実現」という使命の実現であり、環境と事業の一体化で使命実現を目指し進めていきます。

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詳しくはこちらのYouTubeをご覧ください。
>>[CEOメッセージ] Panasonic GREEN IMPACT (Channel Panasonic – Official)
>>Panasonic GREEN IMPACT ~パナソニックのCO2削減への貢献 (Channel Panasonic – Official) 

ぶつかった壁、大きな課題

ーーなるほど。パナソニックは何十年も前から現在もさまざまな環境経営に取り組み、日本企業の最先端を走り続けているイメージがあります。パナソニックの環境経営は最初から順風満帆だったのでしょうか。

野上:それが、順風満帆ではなく、切磋琢磨し悩みながら環境経営に取り組んできました。環境経営を意識し始めた当初は環境革新企業として注目も頂き全社を挙げて取り組みを進めていました。しかし2012年2013年と事業赤字に陥った際に、経営数値は悪化しているのに環境指標だけは良化するということがあり、環境と事業の評価が相反してしまいました。本来は一体であるはずが、当時はこの2つを切り分けて考えていたためです。そこで環境経営と事業を組み合わせて考えることや、自社だけを見るのではなく日本や世界を見て、マクロに考えることでこの困難を乗り越えました。

「目線を外に置く」ことを意識し、政治や投資家、他社さまの動きが時代とともにどう変わっているのかを随時確認すること、そして、外からパナソニックの環境経営を見られたときにきちんと説明できるものにすることが重要だと考えています。

ーー社会から見ると先駆的に見えても、内部では山や谷がたくさんあったのですね。そういった課題や困難を踏まえ、環境経営に取り組むにはどういったプロセスが必要だと考えますか。

野上:環境部門だけに閉じず、いろいろな関係部門を巻き込むことが重要になってくると考えています。全体で平たい言葉やリアルな情報を共有し、練り込み、消化させることで、一丸となって取り組むことができると思います。

パナソニックの環境部門でも、トップダウンを引き出すためにさまざまなところに連携要請し、粘り強くインプットをおこなってきました。そのため、今ちょうど環境経営に取り組もうと奮闘している環境部門の方々の気持ちはよくわかります。ぜひとも一緒に頑張っていきたいと思っています。

サプライチェーンとの取り組み方 

ーーやはり他部門を巻き込んで進めていく、ということが重要なのですね。

​​一方で、御社では環境経営に対する取り組みの現状や課題を理解してもらう、という目的でPanasonic Climate Action Handbookという絵本を発行し、社員やサプライチェーン企業さまへ情報提供されていると伺っていますが、この絵本の概要や彼らからの反応を教えてください。また同時に、御社独自の取り組みとして、製品づくりの指標とされている「グリーン調達基準書」についても、その概要や、サプライチェーンさまへの働きかけについて、お伺いさせてください。

Panasonic Climate Action Handbookの発行

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野上:この絵本は関連部門が入り混じりの会議の中でお声をいただいたことでアイデアの整理ができ、また環境部門だけではなくデザイン部門の素敵なアイデアもいただきながら作り上げたものです。実は、まずは1番のステークホルダーである当社の従業員向けに作成する、といった形でスタートしました。「勤務地「地球」のみなさまへ」というサブタイトルのもと、現在当社がどういった課題認識をしていて、どういった状況に置かれているのか、ということを分かりやすい絵本風のイントロ編とデータで示すデータ編に分けて平易な言葉で紹介する内容となっています。このAction Handbookは2021年の10月に日本語版をリリースし、初月で約10万ダウンロードと大きな反響を受けました。さらには中国語版、英語版と多言語で発行しています。現在の合計ダウンロード数は14万を突破し、私たちが想像していたより遥かに多くの方にアクセスしていただきました。

やはり環境部門だけで取り組むと、自分たちのわかる範囲で考えてしまうことになります。自分の中では「当たり前」だと思っていたことも、ほかの部門からするとまったく当たり前ではないことに気づけていなかったことが1番のギャップでした。

例えば、2年前は「Scope」という言葉を環境部門以外から聞くことはありませんでしたが、最近は当たり前のようにいろいろな方の口から聞く機会が出てきた、といったようなことです。こういった従業員の環境に対する認識の高まりは大きな変化点でした。

欧州ではさらに英語以外の各国の言葉に翻訳して配信してくださっていたり、この内容をもとにかんたんなゲームを作成してくださったり、アジアではクロスワードパズルまで作成してくださいました。このように、世界中の皆さんがパナソニックの取り組みを広めたいと行動に起こしてくださったことが、1番のステークホルダーである従業員の変化点として、大きいものだったと捉えています。

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グリーン調達基準書の作成

野上:調達の取り組みはバリューチェーン全体でいうといわゆるScope3のカテゴリー1ということで、当社でいうと約1割強の部分にあたる、非常に大きな部分です。これに関しては責任ある調達活動として調達部門連携で現状把握をしていかなければならないと考えており、課題感も持ちつつ、歴史ある取り組みとなっています。この活動を進めていく上で、このグリーン調達基準書よりもさらに上位に位置する「調達の方針」では、「購入先さまは当社との相互信頼関係に基づき、研鑽や協力を重ねながらお客さまが求める価値を想像するための不可欠パートナーである」と記載をしています。

サプライヤーさまとパナソニックは「主従の関係」ではなく、「同じく目指すべき価値を実現していくために連携する大事なパートナーさま」であると位置付け、共存共栄の共同の活動をおこなっております。その取り組みの中の1つがこの「グリーン調達基準書」です。

このグリーン調達基準書は1999年に発行し、改訂を重ねながら取り組んでいます。内容についてはとても基礎的なものが多い中、特徴的なものとしては「コラボレーションによる成果の共有」が挙げられます。その中の1つの取り組みが「ECO・VC活動」です。「エコなValue Creation」の略であり、サプライヤーさまから毎年数百件の応募を募り、審査を2段階に分けておこない、コストの合理化や再生資源の活用、投入資源の削減、CO2削減などをサプライヤーさまに発表いただくという内容となっており、優秀な取り組みをおこなってくださったサプライヤーさまには表彰と御礼をしています。

このような取り組みをパナソニック内で共有し、さらなる活動に繋げていくと同時に、取り組みを通してサプライヤーさまと協働しています。

グリーン調達基準書について詳しくはこちら

>>https://holdings.panasonic/jp/corporate/about/procurement/green/pdf/J_Green_Procurement_Standards_Ver6_4.pdf

ECO・VC活動について詳しくはこちら

>>https://holdings.panasonic/jp/corporate/about/procurement/partner/contest/pdf/2022_ECOVC_PAG_JP.pdf

社会に対する排出削減貢献量の捉え方・考え方

ーーなるほど。自社だけではなく、サプライヤー企業さまたちも巻き込んで取り組みをおこなっていくことが重要なのですね。また「( 自社バリューチェーン以外で貢献する) CO2削減貢献量」 について、 GREEN IMPACTの中でも2050年に向けて拡大していくとありますが、そのロードマップや具体的な取り組みについて 、 ご紹介いただけますでしょうか 。

野上:分かりました。まずは下のグラフを見てください。上半分が自社バリューチェーンの1.1億トンの部分、そして下半分が社会の排出量への削減貢献の部分を表しています。今話題となっている「排出削減貢献量」は下半分の数字が示しています。この下半分の目論見としては、まずは既存の事業での取り組みを増やしていくこと、さらに2030年、2050年に向けて今ない技術や事業を通じて新たな削減インパクトを生み出していきたいと考えています。

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そして課題としては、企業の排出削減取り組みを表す「削減貢献量」のグローバルコンセンサスを確立していくことと認識しています。企業の活動を適切に評価し、投資家さま、ステークホルダーさまに説明していくためには、やはり企業が“独自”すぎる考え方ではなく、グローバルに認められる統一の考え方が必要だと考えます。実は、パナソニックではScope1〜3と削減貢献量は切り分けて考えています。というのも、社会全体のカーボンニュートラルに貢献して事業を拡大していくと、見方によっては製品の排出が増えるため投資家からはネガティブな評価になります。ご存知の通り、企業の活動はScope1、2、3の排出量で評価されているのが現状です。その中でこのScope1〜3が増えてしまうとマイナスな評価になってしまうことに対して、このScope1、2、3を企業の責務として認識する一方で、この製品の取り組みの「貢献していく」という部分は企業が社会のカーボンニュートラルを加速させていくために必要なことであり、きちんと評価をしていただき、カーボンニュートラルに向けた取り組みが好循環を生み出していかないと社会が変わらないと思っています。

環境配慮への具体的な取りくみ

野上:当社グループも参画しているGXリーグでは現在440社(日本の国内排出の4割以上をカバーする企業)もの企業が賛同、参画しておりますが、日本がこのGX(グリーントランスフォーメーション)分野において国際競争力を維持・強化するためには、リスク偏ではなく、こういった取り組みを「機会」に変えるような発想の転換を提唱することが必要と考えています。また、公平なルールを構築していくことで世界に対して日本の貢献を正しく訴求していくべきである、という課題感を持ってパナソニックは参画しております。

この排出削減貢献量というカテゴリーは、非常にまだあいまいな部分がありますが、極めて重要な考え方であると捉え、今後はこの考え方・ものさしづくりが急速に高まっていくと予測しています。

時代とともに変わりゆくもの、変わらないもの

ーー環境経営を進めていくには、周りを巻き込んだ政策が必要となるのですね。パナソニックはこれから、どのような意識で環境経営に取り組んでいくのでしょうか。

野上:実は、環境経営やカーボンニュートラルはパナソニックの永久的な目的ではありません。目的は時代とともに変わっていくものであり、たまたま今の時代は環境負荷軽減が求められているため、環境経営に全力で取り組んでいるんです。

時代とともに変化していくこの「目的」に対し、時代が進んでも変わらない根本的な考えは、「地球中のあらゆるモノ・ステークホルダーさまが豊かで幸せに共存共栄していくためのお力になりたい」という願いです。私たちは地球の人々が共創していくために役立つ製品を提供していく、という昔から掲げてきたこの願いを叶えるため、そして創業100年を迎えたパナソニックが次の100年もお客さまに愛されるために、私たちは全力で取り組んでいきます。

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