2050年にネットゼロを達成するためには、適切なカーボンプライシングが必要

多くの化石燃料会社が新規の油田や鉱山に多額の投資を計画しており、今後数十年に渡って大量の温室効果ガスを排出し続けることが考えられます。パリ協定で掲げられた目標である、2050年までのネットゼロを達成するためには、この状況を変えなければなりません。
石炭への投資に歯止めをかけるために重要なのは、カーボンプライシング(炭素への価格付け)です。カーボンプライシングとは、排出された二酸化炭素に値段を付けることであり、企業に排出した二酸化炭素に応じて課税する炭素税などがカーボンプライシングに順ずる制度として挙げられます。
しかし、炭素価格が最低基準の40ドル/1トンに達しているケースはわずか3.76%と少なく、価格設定の基準も明確化されていないため、現状カーボンプライシングがネットゼロに貢献しているとは言えません。

こちら→ 下記記事をご参照ください。
>>G7が石炭融資の停止を決定 | NET ZERO NOW

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各国で石炭への投資が続いている、原因は適切な炭素価格が設定されていないから?

今年5月、国際エネルギー機関(International Energy Agency)は、2050年までにネット・ゼロを達成するために何をすべきかをまとめました。まず、最重要事項として2021年以降、石炭発電所、炭鉱、油田・ガス田の新設を認めないことが挙げられています。
しかし、多くの化石燃料会社が現在新規の油田や鉱山に多額の投資を計画しており、これらの施設は一般的に数十年の寿命を持つため、その多くは2050年までにネットゼロ達成という目標をはるかに超えて稼働し続ける可能性があります。

なぜ投資家は、これらの気候変動を加速させる事業に資金を投入し続けるのでしょうか。

原因は、炭素の価格基準の低さと不明瞭さです。炭素価格の基準を不明確にしておくと、石炭の短期的なコストの低さのために、高炭素事業の長期的な継続や、ネットゼロを実現するための研究開発が遅れるといったリスクがあります。
ほとんどの専門家は、ネットゼロを達成するためには、排出量に価格をつけることが不可欠であると考えています。しかし、世界銀行が発表した「World Bank’s State and Trends of Carbon Pricing 2021」によると、パリ協定の目標達成を実現するための下限である40ドル/1トン以上の炭素価格が設定されているケースは、世界の排出量のわずか3.76%にすぎません。

炭素価格の上昇がネットゼロへの近道、EUやニュージーランドでは明るい兆しも

ゴールドマン・サックスは、到達困難な排出削減を実現するために必要な技術的ブレークスルーを推進するには、100ドル/tC2e以上の炭素価格が必要であると予測しており、またウッドマックは1.5C目標の達成には160ドル/tCO2eの価格が必要であると予測しています。
現状はこの目標価格からほど遠いものですが、明るい兆しもあります。欧州連合(EU)では、排出権取引制度を2050年のネットゼロ目標や欧州版グリーンディールに合わせて調整している最中であり、ここ数カ月で炭素価格は記録的な高値を記録しているところです。

また、ニュージーランド政府は、パリ協定の目標に合わせて今後数年間の排出量上限を設定しています。
排出権取引制度とは、京都メカニズムで規定された、国の目標値を超えた排出量を国家間で取引する制度のことです。
このように、2050年までのネットゼロに向けた明確な道筋を示す、長期戦略の策定に関心を示す国も増えています。

こちら→ 下記記事をご参照ください。
>>京都メカニズムとは?内容や問題点、今後の動向など分かりやすく解説 | NET ZERO NOW

より多くの国がネットゼロの目標を達成するためには、その目標を具体的な計画に結びつけることが必要です。炭素価格の値上げは、その現実的な第一歩となり得るでしょう。

参考記事:To meet net zero by 2050 we need a long-term vision for carbon pricing (climatechangenews.com)

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