G7が石炭融資終了を発表

bannar

2021年5月、G7の環境担当大臣は、G7閣僚会議において石炭への海外への資金提供を停止することで合意しました。
G7(Group of Seven)とは、米国、英国、カナダ、フランス、ドイツ、イタリア、日本の先進国7ヵ国から成る政治間フォーラムです。

これら7ヵ国によるG7閣僚会議では、世界の経済・金融情勢や国際通貨制度、金融規制などについて意見交換を行っています。G5と呼ばれていた先進5か国にカナダ、イタリアを加えて、1986年から開催されるようになりました。
合意の内容には、石炭プロジェクトへの国際的な融資における各国政府の役割を終わらせるという明確な意思が含まれています。会議では、「我々は、未稼働の石炭発電への世界的な投資は気温変動をプラス1.5℃に止める目標と両立しないことを認識し、2021年末までに、政府開発援助、投資、貿易促進支援を含む、国際的な石炭発電への支援を停止することを約束する。」と述べられました。

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石炭への資金提供停止のメリット、脱炭素化への前進や地盤沈下の解決

近年、世界銀行やJPモルガン・チェース、アイルランド政府など主要な金融機関や政府が、石炭への資金提供により利益を得ている企業や国家に対して圧力をかけるという動きが見られています。
この動きを後押しする理由はたくさんあります。まず第一に、石炭への資金援助が減れば、生産され燃やされる石炭の量も減り、脱炭素化に大きく貢献します。また、G7が公約を発表することで、中国やオーストラリアなど脱炭素への取組を十分に行っていない国に対して牽制することができるでしょう。
実際に、2019年日本は、インドネシアとバングラデシュの急増した電力需要に対して石炭発電所への融資を検討していたため、他のG7諸国の取組に加わるするよう圧力をかけられていました。

また、石炭採掘による地盤沈下が長く問題となっています。この問題は、石炭に限ったことではなく、化石燃料を扱う他の業界や、その資金源となっている企業にとっても、いずれ危機となるでしょう。著名な未来学者であるアレックス・ステファンは、今回のG7での発表よりも少し前にSNS上で、石炭の問題は石油やガスなどの高炭素部門に起こる危険の兆しではないかと指摘していました。

これらの問題を解決するために世界の主要な7ヵ国が影響力のある公約を発表したことは、大きな意義を持ちます。

石炭融資の停止は、確実に気候変動問題の好転に繋がる

ブラックロック社のCEOであり、「ラリーの手紙」で金融の根本的な改革を呼びかけたことでも有名なLarry Finkは、以下のように主張しています。
「資本市場は将来のリスクを先取りするので、気候そのものの変化よりも、資本配分の変化の方が早く現れるでしょう。近い将来、資本の大幅な再配分が行われると考えられます。」
資本市場において、石炭への資金の流れは止まりつつあります。このことは、少しずつではありますが確実に石炭火力発電から持続可能なエネルギーへの転換がなされ、気候変動問題の好転に繋がる前兆です。
石炭融資の停止は徐々に進んでいるものの、発展途上国における電力需要など、解決しなければならない課題は多くあります。しかし、今回のような発表は、数年前には考えられなかった革新的なものであり、世界が脱炭素化に向けて前進した証なのです。

石炭に関する気候変動問題は、さまざまな産業に共通していることから、今回のような発表は今後も影響力を持ち続けることが推測されます。

参考記事:G7 Countries to End Coal Financing This Year (treehugger.com)

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