エネルギー効率の見直しによって、今すぐ始める脱炭素化

bannar

5月26日、業界のリーダーたちがウェビナーに集まり、脱炭素化の目標を達成するためにエネルギー利用効率に焦点を当てることの重要性について議論しました。
参加したパネリストは、Aberdeen Standard社のRuairi Revell氏、Grosvenor Americas社のLauren Krause氏、Hudson Pacific Properties社のNatalie Teear氏、ニューヨーク市のElizabeth Kelly氏、Siemens社のJohn Kovach氏です。
議論の要点を以下のようにまとめています。

民間企業にとって、事業活動の中で持続可能性を考慮することは、今や当たり前のこととなっています。
現在主に注目されているのは、再生可能エネルギーの利用です。実際に、事業運営で用いるエネルギーを100%再生可能エネルギーに移行させるというRE100プロジェクトには、多くの企業が参加し取組を進めています。
もちろん、再生可能エネルギーへの投資は脱炭素社会を実現するための重要な柱です。しかし、エネルギー効率も同様に重要であり、この事実は見過ごされているのが現状です。

目次

エネルギー利用効率を重視すべき、3つの理由

エネルギー効率向上策の実施は、主に3つの理由から、脱炭素化を達成する上で不可欠な取組です。

1) 自然エネルギーでは未だ十分なエネルギーを供給できない

太陽光エネルギーや風力エネルギーなどの自然エネルギーは、供給量が天候や時間に左右され一定ではないため、発電したエネルギーを貯蔵しておく必要があります。しかし、現在の電力供給インフラでは、蓄電が汚染に繋がるため長時間エネルギーを貯蓄することはできません。
そのため、当面の需要を満たすためには、残念ながら非再生可能資源が必要となります。このような背景から、エネルギー消費量を削減していくことは有効です。

2)天然ガスからの移行には時間がかかる

全てのインフラや設備の稼働燃料を電気エネルギーでまかなうには、数十年の長い移行期間と多額の初期費用が必要です。そのため、化石燃料の燃焼を最小限に止めることは現在の温室効果ガス排出量を減らすのに大きく貢献します。
実際、米国の温室効果ガス排出量の13%は冷暖房の使用などによる化石燃料の燃焼となっています。

3) エネルギー消費量の削減は、費用対効果の高い二酸化炭素削減方法である

二酸化炭素の削減方法は吸収活動や排出量を削減・吸収活動で相殺するカーボンオフセットなどさまざまですが、最も経済的で即効性があるのはエネルギー消費量の削減です。
実際に、ローレンス・バークレー国立研究所が実施した建物の効率化キャンペーンでは、100以上の組織の参加者の年間電気代を合計で9,500万ドル削減しました。各参加者の削減量の中央値は年間約300万ドルです。

消費量の測定や法律の制定など、これまでに行われてきた取組とは

エネルギー利用の効率を上げるには、現在の消費量を測定することが大切です。Longevity社は、RE100のメンバーである米国のCredit Suisse社や、欧州で展開しているBarings社と協力して取組を行っています。例えば、Credit Suisseとの共同事業では、テキサス州ヒューストンとオンタリオ州トロントにある2つのオフィスビルに対してエネルギー監査を実施しました。この取組では、資産や場所に応じた省エネ対策を実施し、年間15万ドル以上の削減を実現しています。この測定結果からビル管理システムにいくつかの修正を加えることで、資産を最適化し、新築の建物に留まらず既存の建物においてもエネルギー利用を効率化させられるのです。

また、行政による取組も行われています。米国ニューヨーク州では、気候変動対策法の一環としてLL97(Local Law 97)が制定されました。これは、2024年から市内の約40,000件の住宅・商業施設を含む25,000平方フィート以上の建物を対象に化石燃料消費を防ぐための設備投資を行うものです。

今すぐ始められる、脱炭素化への道

パネルディスカッションで紹介された企業のように、迅速な設備の見直しと大規模な技術革新の両方への投資を優先させる企業はますます増えています。
エネルギー消費量の削減は、既存の技術を使って誰もが今すぐにできる取組です。RE100 のメンバー企業をはじめ、再生可能エネルギーへの転換によってコストを削減したいと考えている企業や、長期的な脱炭素化の目標を検討している企業は、何よりもまずはエネルギー効率を重視すべきでしょう。

参考:Energy efficiency: The unsung hero of Net Zero Carbon | The Climate Group

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