マイアミの気候変動:熱とどう向き合っていくのか

bannar

アメリカ合衆国フロリダ州に位置するマイアミは、海面上昇や洪水、ハリケーンなどの気候変動のリスクが最も高い米国の都市の1つとして知られています。
「環境意識や気温上昇に対する危機感を持とう」という声は上がっているものの、2年前に発表されたレジリエンス計画には、気候変動によってもたらされる危険性についてはなにも触れられていませんでした。

しかし現在では、環境問題に対する危機感は上がってきており、加速する地球温暖化に対する取り組みを任務とする世界初の都市の地位を確立しました。
マイアミはこの気温上昇問題に対して解決策があるように感じている人もいますが、マイアミは今のままでは熱への対処ができないだろうという意見が多く出ています。

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気温上昇により発生する「静かなる殺し屋」

2017年に起きたハリケーンの後、ある地域の老人ホームでは長時間の停電の影響でエアコンが使用できず、14人が命を落とす、という事件がありました。
国連の記録によると過去10年間は世界で最も暑く、米国政府の研究者は今後10年でこれが改善するのは難しい、と語りました。
また、一般市民や政策立案者の間で気候変動に対する問題意識は高まっていても、熱に対する危機感は皆十分に抱いていないという意見も出てきています。
実際に熱による死は、密室で発生することが多いとされています。ほかの死に比べ、熱による死はメディアでの報道が少なく、熱は人々の認識していない間に人の命を奪うため「サイレントキラー(静かなる殺し屋)」と呼ばれています。
アメリカの団体の一部では、ハリケーンや山火事と同じく「暑い季節」に対する一般認識や危機感を高めることを目的として、幅広くキャンペーンを行っています。

「熱」は身体の健康にも悪影響を

熱がこんなにも問題視される理由は、命の危険性だけではありません。熱は私たちの日々の生活にも影響を与えます。暑さにより良い睡眠がとれないことで仕事に深刻な影響を与えたり、生徒が学校の授業に集中できなかったり、人々の健康を揺らいでいます。睡眠不足による仕事での怪我や死は熱の影響だと分類されないため、研究者たちは熱の影響を表わすデータ集めにとても苦労しています。

熱に関して寒い地域が抱えてる問題とは

マイアミのように暑い地域が熱に対する解決策を見出している一方、寒い地域もこの気候変動に戸惑いの声をあげています。
ミシガン北部では寒い気候に合わせた建物がほとんどなため、暑い気候に対応できず、これから新たな問題が多く生まれてくるだろう、と言われています。

しかし2019年にミシガン州の地方公衆衛生当局の役員を対象に行なった調べでは、全体のわずか約35%の役員しか、気候変動への対処を優先的に行ったほうが良いと考えていませんでした。このように、熱への問題意識はまだ低いままなのです。
暑い地域や寒い地域関係なく熱は人々の生活に悪影響を与える可能性があるため、研究者たちは働きかけを行っています。

危険と隣り合わせの生活

マイアミでは、熱による危険と隣り合わせで生活している人々を助けるための戦略を見つけ、それを広めていくことを研究者たちは目指しています。
フロリダ南部ではすでに平均気温が大幅に上昇しており、1995年と比べ、32℃を超える日が1年に27日ほど増えていることがわかりました。
気温の上昇は昼間はもちろん、夜間の人々の生活(主に睡眠)にも影響を与えています。

それを受け、研究者は気温が上昇した際に街の高齢者の安否確認がすぐにできるよう、高齢者の人数や家の場所を確認することが必要だとしています。
人々が熱の危険性の一般認識を正しく持つことができるような取り組みが研究者を中心に行われています。
最初の取り組みのステップとしては、医療従事者、気象専門家、防災専門家などを集め、熱に対する正しい認識を持つことを目指します。今まで持っていた認識と現実との差をなくすことが必要だと、研究者は考えています。

そして次のステップは、実際に木を植えたり、舗装や屋根の色を薄くしたりすることです。
危険なのは高齢者だけではありません。農業・建設の屋外労働者や外で遊ぶ子どもたち、そして道の歩行者なども危険にさらされています。
「現代を生きる人々は、日々熱のリスクについて考える必要がある」と研究者は言及しています。

熱とどう向き合っていくのか|まとめ

台風や地震ではなく、熱による人々への影響はあまりメディアで報道されないため、熱の怖さを正しく認識している人は数少ないと思います。だからこそ、この怖さや対処法を周りに広め、熱の対処を考えていく必要があります。エアコンや扇風機などを賢く使い、熱とうまく向き合っていくことが大事だと感じます。

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