露ノリリスク事故から1年、石油流出リスクを回避するには再生可能エネルギーの普及がカギ

bannar

ロシアを悲劇に陥れた石油流出事故、ノリリスク事故から1年が経ちました。この事故の調査から石油貯蔵施設の老朽化が判明、続発を防ぐには施設の見直しと再生可能エネルギーへの移行がカギとなります。

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ロシアで起きた歴史的な大事故、ノリリスク事故とは?

ノリリスク事故は、昨年ロシアに大きな衝撃を与えた石油流出事故です。2020年5月、北極圏の都市ノリリスクで、金属大手ノリリスク・ニッケル社の子会社が運営する発電所から、2万トン以上のディーゼル燃料がアンバルナヤ川に流れ出しました。およそ350㎢に及ぶ高濃度汚染が確認され、地域一帯に甚大な環境被害を与えました。
政府との法廷闘争に敗訴したノリリスク・ニッケル社は、北極圏の生態系に与えたダメージに対する賠償金約1,500億ルーブル(約2,100億円)の支払いを命じられています。この賠償金は、環境破壊に対するものとしてはロシア史上最高です。
事故直後、国際環境NGOグリーンピースはMikhail Mishustin首相にこの問題を提起し、石油や石油製品を貯蔵している施設のシステムの点検とより精密な検査を要求しました。
これを受け、政府は公式に調査を行い、事故から10カ月後の2021年3月安全監査の結果をメディアに報告しました。監査の結果、3626件の産業安全要求事項の違反・219件の行政事件が判明、行政処分の総額は1,500万ルーブルに達したといいます。

ノリリスクだけではない、近年も起きている石油流出事故

今回のような事故は、ロシア全土で毎年発生している数百件の石油事故の1つにすぎません。現在も、同様の石油流出事故が各地で発生しています。
先週、ロシア連邦内のコミー共和国で、北極海に注ぐペチョラ川の水辺からわずか50〜70m離れた場所で、石油タンクが漏れているのが見つかりました。また、今月初めには、コミー共和国とネネツ自治州の境界線上の土壌や水路に原油が流出し、政府が緊急事態を宣言しています。

2018年5月の大統領令「産業安全の分野におけるロシア連邦の国家政策の基礎について」では、石油貯蔵施設で使用されている機器の60~70%は、標準的な耐用年数を超えていると述べられています。このような状況下では、事故による損害は年間6,000〜7,000億ルーブルに上る計算です。
つまり、このまま石油貯蔵施設を放置すれば、今後も同様の事故が起こり得るとともにロシアの経済に致命的な打撃を与える可能性があるのです。ロシア政府には、急速な対応が求められます。

事故を未然に防ぐには、石油貯蔵施設の段階的廃止及び再生可能エネルギーの開発が不可欠

気候変動対策に留まらずこのような事故の防止のためにも、石油貯蔵施設の廃止、及び化石燃料の代替となる再生可能エネルギーの開発が急速に求められています。
昨年、グリーンピース・ロシアは、ロシア全体が再生可能エネルギーへ移行するための具体的な施策、グリーンディールを提案しました。これは、気候変動に対処し、ノリリスクやコミーのような事故を防止するために設計された長期的な開発プログラムです。
ロシアのグリーンディールは、化石燃料への依存をなくし、新しい産業と新しい雇用を創出することで、社会に明るい未来をもたらします。人に良し、自然に良し、気候に良し。このような社会を実現するには、今行動するしかないのです。

参考記事:A year after the Norilsk disaster, where are Russia’s oil risks and what needs to be done? – Greenpeace International

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