IEAが新しい報告書発表、ネットゼロに向けて今すぐになすべきことや新型コロナウイルスとの関係について
国際エネルギー機関(IEA)は、新しい報告書「a Roadmap for the Global Energy Sector」を発表しました。この報告書は、現在の各国の取組状況は2050年までにネットゼロを達成するためには十分ではないと警告しています。
これからなすべき具体的な行動や新型コロナウイルスの影響はあるのかなど、報告書の内容を以下にまとめました。
新型コロナウイルスからの復興に際して、再生可能エネルギーの導入を
IEAは、以下のように、コロナ禍からの経済回復を支える投資や支出がネットゼロの目標に沿ったものであることが不可欠である、と提言しています。
「クリーンで効率的なエネルギー技術の導入を促進するために、政策を強化する必要があります。石炭融資の段階的停止のために、政府は、休止していない石炭火力発電所、ガスボイラー、従来の内燃機関自動車など、特定の燃料や技術の使用を制限するべきです。」
IEAの発表によると、2025年以降天然ガスの炉やボイラーの開発を承認してはいけません。これは、急速に住宅産業や建築基準法を変えなければならないことを意味します。
しかし、一方でIEAは、2030年までに世界の排出量を大幅に削減するために必要な技術はすべて存在しており、その導入を促進する政策もすでに実証されているとしています。新たな技術の発明を待っているのではなく、再生可能エネルギーの普及拡大を望んでいるのです。
具体的には、年間630ギガワットの太陽光と390ギガワットの風力の追加を求めており、これは2020年に追加された量の4倍にあたります。
実際には課題も、雇用減少や社会の意識変革など
このエネルギー移行への動きは資産と雇用を大きく再配分するものであり、化石燃料産業が停止されれば500万もの雇用が失われます。クリーンエネルギーへの新たな投資により1400万の雇用が創出されると予想されているものの、IEAは、これらの雇用の多くは異なる場所で、異なるスキルを必要とするとの認識です。
本報告書では、温室効果ガス排出量の削減は、2030年までにすべての人がエネルギーにアクセス可能になるという目標と両立されなければならないと述べられています。公平さと公正さはエネルギー転換における課題となるでしょう。
また、ネットゼロを実現するには、すべての国の政府が互いに協力し、企業や投資家、市民と協力して取り組むことが必要です。
IEAは、移動手段の徒歩や自転車、公共交通機関への移行や、長距離の航空移動を避けるといった市民の行動の変化が必要になると予想しています。さらに、電気自動車の購入やエネルギー効率の高い住宅への改修、ヒートポンプの設置などの消費者の選択は、排出量の55%を削減します。
このように、市民を含むすべての社会構成員がネットゼロに向けて主体的に取り組むには、政府のあらゆる部門が協力し、エネルギー転換を金融、労働、税制、運輸、産業に関する各国の政策に組み込む必要があります。
これらの政策決定や社会の意識変革は、ワクチンの普及などコロナ対策の後に行われます。新型コロナウイルス感染拡大により、さらに取組を急ぐ必要性が出てきたのです。
机上の空論から現実へ
報告書の最初の段落で、こう述べられています。
「我々は、現代の大きな課題である気候変動のための国際的な取組にとって転換点に近づいています。2050年までにネットゼロを達成し、気温上昇を1.5℃に抑えるためには、この目標と実現可能性のギャップを縮める必要があるでしょう。」
行動すべき時は、2030年でも2050年でもなく今なのです。今回の報告書に対する、各国政府や企業、投資家、市民の反応が注目されます。
参考記事:Getting to Net-Zero By 2050 Means Dropping Fossil Fuels Now (treehugger.com)