電力自由化とは?電力供給の仕組みと導入の目的・メリット

bannar

電力自由化とは、「電力の小売全面自由化」とも呼ばれ、元々電力会社に独占されていた電力販売が2016年を境に自由化されたことを指します。これを機に、多くの企業が電力販売事業に参入しました。この電力自由化により、消費者は、環境に優しいエネルギーや価格の安いエネルギーを選択できるようになっています。本記事では、電力自由化の目的や仕組み、メリットを分かりやすく解説します。

目次

電力自由化とは

私たちはこれまで、住んでいる地域の電力会社からしか電気を購入することができず、また決められた電力会社以外が電気を販売することはできませんでした。しかし現在は、電力自由化によって、どの会社でも電力を販売することができるようになっています。つまり、私たちが住んでいる地域以外の電力会社から電気を購入することができるようになり、またガス・石油会社や商社が電力供給事業を始める、といったことが可能になったのです。本項では、この電力自由化が導入された背景と仕組みの変化についてご説明します。

図1 価格.com – わかりやすい!電力自由化|電気料金比較 (kakaku.com)より引用

電力自由化の歴史

2016年に実施された電力の小売全面自由化。実は、取り組みが始まったのは1990年代です。1995年に電気事業法が改正され、2000年から徐々に電力自由化が進められてきました。当初は、大型ビルや大規模工場など2000kWを超える電力を消費する施設のみ自由化が認められましたが、2004年には消費電力500kW以上の中規模の工場やビルが認められるようになり、完全な自由化が達成されたのが2016年になります。現在は、コンビニや一般家庭といったそこまで多くの電力を消費しない施設においても、自由化が認められています。

電力自由化による仕組みの変化

電力自由化によって、電力流通にはどのような変化があるのでしょうか。

これまで、電力の流通は、発電から販売までを地方の電力会社が一貫しておこなってきました。しかし、電力自由化を経て、発電した電気を販売する部門が電力会社から分離されています。つまり、発電はこれまで通り電力会社がおこないますが、販売のみが自由化されたということです。

大きな変化は、私たちが電力の供給側にもなれるという点です。再生可能エネルギーの普及が急がれる現在、電力事業は将来性の高いビジネスと言えます。これを機に、企業として電力事業に参入してみてはいかがでしょうか。

電力自由化の目的

電力自由化の目的とは何でしょう。本項では、代表的なものを3点ご紹介します。

電力の安定供給に繋がる

電力の供給源が住む地域で制限されず、災害時などの緊急事態においても電力の安定供給をおこなえます。例えば、2011年3月の東日本大震災。もし他の地域から電力を送る仕組みがあれば、停電の被害を抑えられたはずです。このような悲劇を回避することを目的の1つに、電力自由化が導入されました。

電気料金を安く抑える

電気料金の負担を軽減することも、目的の1つです。これまでは、地域の電力会社が独占していたため電気料金が値下がりすることはありませんでした。しかし、多くの会社が電気事業に参入することで、価格競争が起こり電気料金の低下が期待されています。

企業間競争と電力事業の活性化を促す

電力自由化は、あらゆる会社が電力事業に参入することも目的としています。企業にとっては大きなビジネスチャンスであり、電力事業の活性化が予測されます。そうすれば、再生可能エネルギーのさらなる普及が期待できるでしょう。

電力自由化のメリット

私たちが電力の供給業者を自由に選べるようになったことで、どのようなメリットがあるのでしょうか。

ライフスタイルに合わせた電力会社やプランを選べる

まず挙げられるのは、消費者が自身のライフスタイルに合わせた電力会社やプランを選べるようになる点です。電力自由化以前は、「基本料金+使用量に応じた料金」という料金プランに限られていましたが、現在は、基本料金が0円、時間帯や季節に応じて料金が変化するといった、消費者のニーズに合った柔軟なプランを選択できるようになっています。

価格競争によりサービスやプランが豊富になる

電力事業にさまざまな企業が参入すると、価格競争が起こります。そうすれば、他社との差別化を図ろうと企業は多種多様なサービスや料金プランを提示するようになります。つまり、電力自由化によって、より電気料金を抑えられるのです。

環境に配慮したエネルギーを選択できる

私たちが電力の供給先を自由に選べるようになることで、環境に優しいエネルギーを取り入れやすくなります。太陽光発電や風力発電といった再生可能エネルギーに力を入れている企業の電力を積極的に選択できるようになりました。

電力自由化のデメリット

電力会社を自由に選べるようになると、その分手続きや解約金の問題も表れます。ここでは、電力自由化のデメリットを2つ押さえておきましょう。

電力会社の調査と手続きが面倒

電力会社を自分で選べる、ということは裏を返せば、その分手間がかかってしまうということになります。電力会社を自分で調べなければならず、また事業者やプランの切り替えには解約手続きなどの各種手続きが必要になるため、少し面倒だと感じる人もいるでしょう。ただし、中には解約手続きや工事が不要な会社もあるため、よく調べましょう。

解約時に違約金が発生する場合がある

自分に合った電力会社を選んでも、現在の電力プランを解約する際に違約金が発生してしまうことがあります。特に、長期間の契約で電気料金が安くなるようなプランでは、違約金が発生することが多いため注意しましょう。

電力自由化のよくある質問

まだまだ登場したばかりの電力自由化、分からないこともたくさんあるはずです。本項では、特に疑問の声が多い2つを挙げておきます。

電力会社が倒産したら電力供給は止まる?

仮に電力会社が倒産したら、電力供給は止まってしまうのでしょうか。その心配はありません。なぜなら、どの電力会社を選ぼうとも、電力は地域の電力会社の送電網を用いて送られるためです。また、万が一選択した電力会社が倒産したとしても、電力自由化では地域の電力会社が代わりに電力を供給する仕組みになっています。そのため、契約した会社にトラブルがあろうと、電力の供給が止まってしまうことはないのです。

契約先によって電気の品質が変わる?

契約先によって、電気の品質が変わってしまうことはあるのでしょうか。こちらも、答えは「全く変わらない」です。すべての電力は地域の電力会社の送電網を用いて送られるので、どの企業から購入しても電気そのものの品質に違いはありません。電力会社を切り替えたからといって、電化製品への悪影響や停電の心配は必要ないのです。

まとめ|電力自由化により電力供給側にもなれる

電力自由化によって、私たちが電力の供給業者を選べるようになっただけでなく、すべての会社が電力事業に参入することができるようになりました。再生可能エネルギーの普及が進んでいる今、この電力自由化は大きなビジネスチャンスになります。適切な電力会社を選択し環境に優しいエネルギーを導入するのに加え、自社で電力事業を始めることも検討してみてはいかがでしょうか。

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