環境経営とは?メリットとデメリットを比較!

bannar

持続可能な社会の形成が急がれている昨今、環境経営という概念が広がりつつあるのをご存じでしょうか。環境経営とは、企業が自社の経済的発展と環境の保護を両立させようとする経営方針で、持続可能な社会の構築には有効な概念です。
この記事では、環境経営の概要と実例、メリット・デメリットまで分かりやすく説明します。

目次

環境経営とは

環境経営とは、環境保全を重視した経営手法のことです。
生産から流通、また製品の使用時にいたるまで、さまざまな事業活動に伴う資源・エネルギー消費を抑制し環境に配慮した開発の実現を目指します。
また、企業による取組のみならず、研究機関や教育機関が環境負荷の低い開発に関する研究や環境教育を実施することも重要な取組の1つです。

環境経営を行う目的

企業にとって、環境経営を行う主な目的は企業価値を高めることにあります。
環境経営の度合いを評価する基準や表彰の制度は、すでに数多く存在します。もし評価を受けることができれば、パブリックイメージの向上ひいてはリクルーティングや消費者の獲得に繋がるという仕組みです。また、環境経営を行う企業に優遇措置を取る制度も整いつつあります。
このように企業側にもメリットを設けることで、環境負荷の低い経済活動を可能にし、
環境保全と経済発展の好循環が産出されるのです。具体的なメリットについては後ほどご紹介します。

環境経営の重要ポイント

それでは、実際に企業が環境経営を行うにあたって何が必要なのでしょうか。
長期的な環境経営を行うに当たって、以下の6つの事項が重要になります。

環境経営の6つの重要事項

経営者の主導的関与

まずは、経営者が環境経営の実施を社員や消費者に約束することが必要です。経営者がコミットしなければ、環境経営とは言えません。

環境への戦略的対応

環境経営に関する事業機会やリスク、変化には、適切な計画が望まれます。企業の経営に支障をきたさないための工夫が必要です。

組織体制と管理方法

環境経営の適切な実施のための組織体制と、組織体制が風通し良く効率的に機能する上での基礎となる管理方法を構築することが必要です。
環境保全のための取組を無理なく行うためには、社内での取組内容の周知や社員研修などの制度を整えなければなりません。

ステークホルダー(利害関係者)への対応

ステークホルダーの期待や要望を把握し、それらを事業のなかに還元していくことが必要です。具体的には、顧客相談や従業員満足調査、顧客や関係者との対話が挙げられます。
環境経営の主な目的である企業価値向上のためには、取組にステークホルダーの意見や要望を取り入れることは最も重要であるとも言えるでしょう。

バリューチェーン志向

原料の調達から廃棄にいたるまでの開発における循環での環境負荷を把握して、課題を特定し検討を重ねることが必要です。

持続可能な資源・エネルギーの利用

資源効率の向上に努めるなどして、資源やエネルギーの環境に負担の無い利用を目指すことが必要です。

環境経営のメリット 

環境経営には、環境保護への貢献のみならず、企業の経営自体にもさまざまなメリットがあります。これから、具体的なメリットを3つご紹介します。

企業のアピールになる

まず、環境経営の取組を公表することで、企業取引先・顧客から高評価を得ることができ、企業のイメージ向上に繋がります。これにより社会的信用を得られるため、長期的な顧客の獲得にも有効です。

優遇制度がある

環境経営を行う企業は、各種の優遇制度を受けられる場合があります。実際に、京都府では2015年に環境経営促進金利優遇制度と称した制度を設けました。 この制度では、ISO14001の認証を取得していることやエコ京都21(京都府独自の評価基準)の認定を受けていることなどの条件を設定し、それを満たす企業に融資を行いました。

ISO14001については後ほど詳しく解説します。

金融機関から融資を受けやすくなる

金融機関から融資を受ける際、融資を受けやすくなることや好条件で融資を受けられることがあります。この理由として、環境格付融資という仕組みが挙げられます。

環境格付融資とは

環境格付融資とは、金融機関が融資をする際に、企業の環境経営の実績を考慮して、金利などの条件や融資の可否を判断することです。
この仕組みは、2004年に日本政策投資銀行が環境経営の度合いを評価するシステムである「DBJ環境格付融資」の運用を開始したことから始まりました。「経営全般」「事業関連」「環境パフォーマンス」の3つの事項から、企業の環境経営を評価しています。

環境経営のデメリット

持続可能な社会の構築に有効な環境経営ですが、捉え方によってはデメリットもいくつかあります。ここでは、特に解決が急がれる2点を挙げます。

従業員の負担が大きい

環境経営に取り組もうとすれば、業務量が増加することもあります。もし従業員に負担を強いる形になれば、仕事へのモチベーション低下に繋がる恐れがあります。特に、働き方改革が進み労働時間短縮が推進されている現在は、このような事態が起きれば問題視されることもあるでしょう。

コストがかかる

環境経営を実施するにあたり、新規事業に取り組むこともあると思います。その際、社員への研修費や待遇改善費、環境に配慮した商品やサービスの開発費など費用がかさむでしょう。
本業とは別に環境保全のための費用を捻出しようとすれば、少なからず企業の負担になる恐れがあります。

環境経営具体化のための一例:ISO14001とは 

ISO14001の内容とメリット

ISO14001は、ISO(International Organization for Standardization)規格の1つです。ISO規格とは、国際間で商品の質やサイズなどを比較するための国際的な評価基準のことであり、業種・業態を問わずあらゆる企業が認証を受け利用することができます。ISOの後ろに数字が続き多岐にわたる評価基準を表しますが、ISO14001は、そのなかで環境保全を軸に置いた基準です。
現在、日本では建設業や製造業を中心に13,000社程度がISO14001の認証を受けています。

ISO14001の認証を取得するメリット

顧客満足度が高まる

環境負荷の低い物質を使用する仕組みを整えることで、顧客が安心して製品を購入・利用することができ、顧客満足度向上に繋がります。

企業のイメージアップにつながる

規格の認証を受けることで、環境に配慮した経営を行っているという社会的なイメージを獲得することができ、好感度や社会からの信頼を得られます。
また、イメージに留まらず実際に環境に配慮した取組を行うことで、顧客のみならず、ステークホルダーの満足度を高められるような経営の仕組みの構築が可能になります。

環境経営を行っている会社

ここからは、実際に環境経営を行っており社会的に評価を受けている企業を紹介していきます。

コニカミノルタ株式会社

コニカミノルタは、日本企業における環境経営分野のパイオニア的存在であり、これまでにさまざまな取組を行ってきました。
例えば、グリーンマーケティング活動では、取引先の環境問題について、企業独自の環境ノウハウを用いて省エネ診断や施策の提案を実施しています。また、エクセレントグリーンファクトリー活動と称して、工場の環境負荷を低減するとともに顧客や地域社会の環境問題を解決する取組も行っています。
これらの活動が評価され、温暖化対策・製品対策・資源循環・環境経営推進体制・汚染対策・生物多様性対応の5分野で企業を評価する環境経営度調査において、2019年度(第22回)製造業総合ランキング1位を獲得しました。

キヤノン株式会社

キヤノンは、環境負荷の少ない製品・サービスを優先して調達する「グリーン調達」やオフィス設備の見直し、社有車の使用によるエコドライブの徹底など環境保全のための取組を積極的に行ってきました。そして、上記の取組に加え、エコマーク、グリーン購入法など環境規格の対応商品や、使用している化学物質の安全性に関する情報などをホームページで消費者に公開しています。以下のサイトからご覧ください。
環境への取り組み | 製品の環境情報のご案内|サステナビリティ|キヤノンマーケティングジャパン株式会社 (canon.jp)
これらの活動が評価され、2020年にはコージェネ大賞最高位の理事長賞を受賞しました。

※コージェネ大賞とは
コージェネ大賞とは、一般財団法人 コージェネレーション・エネルギー高度利用センター(通称コージェネ財団)が新規性・主導性・新規技術および省エネルギー性などにおいて優れた資源利用システムを表彰する制度のことです。

パナソニック株式会社

パナソニックは、「使うエネルギー < 創るエネルギー」のスローガンを掲げ、商品の使用時及び工場における生産時のCO2排出量削減や、全国各地での清掃活動・植林活動などの取組を行っています。
これらの活動が功を奏し、パナソニックは2013年度の環境経営度調査ランキングで第1位を獲得しました。

より良い社会をつくるために

今後私たちが地球上で暮らしていくには、経済を発展させながらも自然と共存する社会が必要不可欠でしょう。このような社会を可能にする環境経営は、これからますます重要性を増していくはずです。
企業への負担など課題も残されていますが、国や自治体の優遇措置や金融機関の積極的融資など環境経営を行う企業を支援する制度は整ってきています。サステナビリティについて理解を深め、主体的に環境経営に取り組んでいきましょう。

この記事をSNSでシェア
目次
閉じる