メタネーションとは?仕組みと注目の背景・メリットと企業事例を紹介

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メタネーションとは、火力発電所などから排出される二酸化炭素(CO2)を水素と反応させ、天然ガスの主成分である合成メタンを製造する技術です。メタン燃焼時に生じるCO2が相殺されると見なされるため、次世代を担う脱炭素燃料の一つとして期待されています。国はメタネーション導入を加速化させる数値目標を設定しており、企業などが実証実験や設備の製造販売を進めています。

この記事では、天然ガスの脱炭素化や工場の排ガス利用に関心のある方、さらに都市ガスを利用している方向けに、メタネーションの仕組みや技術、メリット・デメリットや関連企業の取り組みを紹介します。

目次

メタネーションとは?

メタネーションについての説明

画僧引用:日本ガス協会「カーボンニュートラルチャレンジ2050 アクションプラン」

メタネーションとは、ガスの脱炭素化実現に向け、最も有望視されている技術です。水素とCO2を反応させることで、天然ガスの主成分であるメタンを合成します。合成メタンは燃焼する際にCO2を排出しますが、火力発電所や工場などから回収したCO2を活用することで相殺され、大気中のCO2の量は増加しません。すなわち、CO2排出量ゼロの脱炭素燃料として期待されているのです。

メタネーションが注目される理由

日本政府は、2021年6月に策定された「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」において、メタネーションを「次世代熱エネルギー産業」とし、成長が期待される重要分野として位置づけています。メタネーションはなぜこれほどまで注目を集めているのでしょうか。第一に、2050年までに国内のカーボンニュートラル化を実現するためには、ガスの脱炭素化が不可欠であるということです。日本政府は、都市ガスを合成メタンなどに転換することで、ガスのカーボンニュートラルを実現するという目標を掲げています。ガスの脱炭素化技術にはいくつか選択肢がありますが、その中で最も有望視されているのがメタネーションです。第二に、新たなインフラに巨額投資することなく、実現することができるということです。現在使用されている都市ガスの原料である天然ガスの主成分はメタンであるため、メタネーションにより製造した合成メタンに置き換えたとしても、既存のインフラや設備をそのまま活用することが可能です。すなわち、経済効率に優れ、コストを抑えてガスの脱炭素化を推進することができます。

国内のメタネーション導入目標

2021年6月、経済産業省は「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」を策定し、その中で都市ガスを合成メタンに置き換える導入量の目標と、供給コストの目標が定められました。

  • 2050年までに都市ガスをカーボンニュートラル化する
    • 2030年までに既存インフラに合成メタンを1%(年間28万トン)注入
    • 2050年までに既存インフラに合成メタンを90%(年間2,500万トン)注入
  • 合成メタンの安価な供給(液化天然ガス同等)を実現する

仮に、2050年までに上記の目標を達成できれば、8,000万トンのCO2削減効果があると見込まれています。しかし、合成メタンは割高になる傾向があるため(後述)、価格をいかに下げることができるかが目標達成の鍵を握るでしょう。

メタネーションの技術開発

従来のメタネーションとSOECメタネーションの比較

画像引用:大阪ガス「新型SOECについて」

将来的な期待の高さから、メタネーションの技術は進歩し続けています。従来のメタネーション技術では、再生可能エネルギー由来の電力で水を電気分解し、取り出した水素をCO2と反応させメタンを合成します。このようなサバティエ反応を用いた場合、エネルギー変換効率は55〜60%程度でした。しかし、大阪ガスが開発したSOECと呼ばれる新しい技術を利用した場合、エネルギー変換効率は85〜90%まで向上すると期待されています。SOECを利用した技術では、水をCO2と同時に電気分解することができ、取り出した水素と一酸化炭素を反応させメタンを合成します。メタン合成時の排熱を有効活用できるためエネルギー損失が少なく、従来のメタネーションと比べ、高いエネルギー変換効率が期待されています。また、東京ガスはより一層の効率化を目指す「ハイブリッドサバティエ」の開発や、IHI(元石川島播磨重工業)はメタネーションの反応を加速させる触媒をシンガポールの研究所と共同で開発を進めています。

メタネーションのメリット

メタネーションは、近年注目が集まっているメリットの多い仕組みです。本章では、メタネーションの主要なメリットについて詳しく説明します。

ガスのカーボンニュートラル化

メタネーションは、ガスのカーボンニュートラル化実現に非常に有効であると有望視されています。メタンは燃焼時にCO2を排出しますが、メタンを合成する際に火力発電所や工場などから回収したCO2を活用するため、全体としてのCO2排出量は相殺されます。また、合成メタンの原料である水素を、再エネ由来の電力で水を電気分解して作る「グリーン水素」として用いれば、さらに環境への負荷を抑えることができます。CO2の排出量を大幅に削減することが可能な、次世代を担う脱炭素燃料なのです。

既存インフラを利用しやすい

メタネーションは、都市ガスの既存インフラを活用することができるため、経済性に優れた技術だといえます。仮に新規インフラ投資で全てを改修する場合、約20兆円規模となりますが、既存インフラの活用によりこのような追加負担を回避することができます。そのため、コストを抑えてスマートにガスの脱炭素化を推進することが可能です。

メタネーションのデメリット

メタネーションはメリットの多い技術ですが、主にコスト面でデメリットも存在します。本章では、メタネーションのデメリットについて詳しく説明します。

製造コスト

政府は合成メタンの供給コストを液化天然ガスと同程度まで抑えることを目標に掲げていますが、そのためには水素とCO2を安価に調達することが欠かせません。しかし、メタネーションは複数の生産工程を経るため、割高になることが想定されます。また、合成メタンを完全に脱炭素化するためには、原料となる水素を再エネ由来の「グリーン水素」にする必要があります。しかし日本では再エネ市場の規模が小さいため、再エネ由来の電力価格が高くなってしまいます。今後、FIT制度・FIP制度などを通して再エネのコストが下がれば、さらにメタネーションの普及が進むでしょう。

設備規模の課題

今後、商用化を実現するためには、合成メタンを生成する設備のスケールアップが大きな課題となります。現在は、海外の事例で1時間あたり数十〜数百Nm3の合成メタン生成を実現しています。しかし、商用化するためには、1時間あたり1万〜6万Nm3の合成メタンを生成する必要があります。設備規模の拡大を見据えた取り組みをしなければなりません。

メタネーション実用化に挑む企業事例

メタネーションの実用化を目指し、さまざまな企業が実証実験に取り組んでいます。本章では、メタネーション実用化に向けた、企業による取り組みの事例を紹介していきます。

日立造船|小型メタネーション試験装置を販売

日立造船株式会社は、大阪を拠点とした機械・プラントメーカーです。メタネーション装置の開発に成功し、高性能触媒を用いた試験用の小型メタネーション試験装置(0,1Nm3/h)の販売を行っています。神奈川県小田原市には、国内最大となるメタネーション設備の建設工事を完成させ、実証運転を開始しました。

アサヒグループ|食品企業初の実証実験(IHI製品)

総合重工業メーカーの株式会社IHIは、アサヒグループ研究開発センター(茨城県守谷市)にメタネーション製品を納入しています。アサヒグループは、2021年9月から国内食品企業では初となる実証実験を開始し、IHIのメタネーション装置が利用されました。

大阪ガス|新手法SOECの開発

大阪ガスは、メタネーション実用化の鍵となる新手法SOECの開発に成功しました。この新型SOECは、従来のメタネーション(約55〜60%)に比べ、約85〜90%と高いエネルギー変換効率が期待されています。さまざまな事業者と協力をしながら、2030年頃の技術確立を目指します。

Audi(ドイツ)|天然ガス自動車への供給

ドイツの大手自動車メーカーであるAudiでは、太陽光発電・風力発電を電力源としてメタンガスを製造し、Audiが市販する天然ガス自動車の燃料として供給しています。既存のガソリン車と比べ、約80%ものCO2排出量を削減することが可能であるとしています。

まとめ|メタネーションの技術開発に期待

「2050年カーボンニュートラル」に向け、ガスにおける脱炭素化の動きが進んでいます。特にメタネーションは、「次世代熱エネルギー産業」として最も有望視されている技術です。今後さらなる技術開発が進むと予想されることから、今のうちから理解を深めておくことが必要です。

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