深刻な森林の危機、カーボンクレジットで救えるか?

bannar

気候変動対策目標達成に関する基準を開発・管理する米国の国際NGO、Verraは、VCS(Verified Carbon Standard)は森林破壊を食い止めるためのカーボンクレジットの効果をより高めることができると述べています。
カーボンクレジットは、排出量を削減・吸収活動で相殺するカーボンオフセットの際に使用される、削減・吸収量を取引可能な形に置き換えたものです。

今後、気候変動対策の目標達成のために、森林保全活動をより活性化していく必要がありますが、そのためには官民一体となった投資が必要です。Verraはこの2年間で、プロジェクトレベルの排出削減量の会計処理を政府の会計処理と統一するための管轄権に包含されたREDD+(JNR)のフレームワークを発表しました。管轄区域の会計にREDD+プロジェクトを含めることで、プロジェクトの会計処理が容易になるだけでなく、地域全体で同じデータと手法を使用することで一貫性を高めることができます。

※REDD+とは

「REDD+」とは、先進国が発展途上国での森林保全活動への資金援助を行うための仕組みのことを指します。

目次

VCSの登場には、政治的・経済的政策による森林破壊が影響

VCSが現れた背景には、森林地帯の国や組織が、これまで経済的・政治的に強い圧力をかけられ森林を伐採せざるを得ない状況になったことが大きく影響しています。採掘や工業的農業などのために木を切り倒し、その過程で何百万トンものCO2を大気中に放出してきたのです。
そこで、森林を保全・再生するための活動が実施されるようになり、それに伴い活動による影響をクレジットに換算する基準が求められるようになりました。
そこで登場したのが、Verified Carbon Standard(VCS)です。VCSは、削減・吸収活動により発生したクレジットの品質を保証する基準で、この基準のもと、企業や組織は森林保護のためのプロジェクトを提案・実施することができます。例えば、地域住民を雇用した森林のパトロール実施や、山火事の延焼を防ぐための防火線の設置、農家と協力して農業生産性を向上させることによって森林への圧力を軽減することなどが挙げられます。プロジェクトを実施しなかった場合と比較して、排出されるはずだったCO2 1トンにつき1枚のカーボンクレジットを発行する仕組みです。
2011年には、森林減少が深刻であったケニアのカシガウコリドー地域において、森林保全活動が実施され、世界で初めてVCSの検証を受けてREDDの枠組みに由来したクレジットが発行されました。
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現在の熱帯林の減少を早急に食い止める必要性

パリ協定では、地球温暖化を+1.5℃以下に抑えるという目標が定められていますが、この数値を達成するためには森林破壊を77%削減する必要があります。つまり、6秒ごとにサッカー場1面分の熱帯林が失われている現状では、これまでの取組だけでは効果が足りないのです。

公的機関や民間企業は、この分野により積極的に投資しなければなりません。企業は、温室効果ガス排出量を実質ゼロにする「ネットゼロ」という新たな目標に追随し、市場でクレジットを調達し、企業内部で削減しきれない排出が残っている場合や、完全にコントロールできない末端部の排出を補う必要があります。また、一部の規制市場では、企業がコンプライアンス義務を果たすためにREDDプロジェクトからのカーボン・クレジットを使用することを認めています。

Verraが見据える目標達成への道

登場から10年が経過したVCS及びREDD+クレジットは、気候変動問題に取り組むための資金を活用する上で、その価値が証明されていると同時に、発展途上地域の持続可能な開発に向けた大きな進展をもたらしました。
しかし、パリ協定が求める2050年までに世界全体で排出量をゼロにする目標に繋げるために必要な規模と投資には、まだほど遠い状況です。
しかし、Verraは、新たなREDD+ののフレームワークを発表するなど、今も炭素市場への投資を集めるための条件作りに取り組んでいます。彼らは、森林破壊と森林劣化問題を好転させるために、地域の森林コミュニティ、管轄区域、援助国政府と手を取り合って成長し続けているところです。

参考記事:How carbon credits can save the world’s forests | World Economic Forum (weforum.org)

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