近年話題のカーボンロックイン、インフラの選択で回避

bannar

インフラに投資する際は、予算と照らし合わせながら長期的な視野を持つことが必要です。
ここで、誤ったインフラに投資してしまうと、インフラの寿命が尽きるまでの間温室効果ガスの排出が固定化される、「カーボンロックイン」と呼ばれる現象に直面することになります。
この問題を解決するには、脱炭素化をまだ遠い未来のことであると考えるのではなく、「2050年は今」という意識を持つことが重要です。

インフラが低炭素社会への移行を阻止する?

カーボンロックインは、化石燃料を大量に消費するシステムが、その稼働する期間低炭素社会への移行を妨害する現象です。

科学的には、気候変動による壊滅的な影響を避けるためには、2050年までに地球温暖化を産業革命以前より1.5℃以内に抑え、二酸化炭素の排出量を実質ゼロにする必要があると言われています。しかし、既存のインフラからの温室効果ガスの排出量を算出した最近の研究では、気温上昇を1.5℃に抑えるために世界に残された「炭素予算」は、すでに建設されたもので完全に使い果たされてしまうことが分かりました。

つまり、気温の上昇を目標値に抑えるためには、炭素集約型のインフラの新設を避け、排出量の多いインフラの早期廃棄を検討する必要があります。

2021年に導入したインフラは2049年まで影響を与える

インフラの寿命は、その中央値を取ると27.5年と言われています。

これをもとに計算すると、2021年に導入したインフラは2049年の半ばまで稼働することになり、ちょうど世界が脱炭素化を達成しなければならない時期にあたります。このことから、将来の経済のあり方を左右するのは現在の意思決定であることが分かるでしょう。

ここで重要なのは、インフラの選択です。どのインフラに投資するかによって、決定的な違いが生まれます。

例えば、電力会社が新たな発電所を設置するとしましょう。その際、原子力発電所の選択は、寿命である50年間の稼働で1㎾あたり12gの温室効果ガスしか発生させないのに対し、石炭発電所の選択は、45年間の稼働でその68倍の820gの温室効果ガスを発生させます。

カーボンロックインを回避するには?

このような厳しい状況にもかかわらず、安価な炭素集約型のインフラは、アジア・中東・アフリカの新興国を中心に今も建設され続けています。

また、中国、米国、インド(CO2排出量の上位3国)は、化石発電所からの排出量でも未だ世界をリードしています。この状況が続けば2050年の脱炭素化達成は不可能でしょう。

それでは、どうすればカーボンロックインを回避することができるのでしょうか。

最も簡単な方法は、政府が炭素集約型の開発の停止を決定することです。この方法は難しいものですが、炭素集約型インフラの代替となるクリーンエネルギー技術は、従来の化石燃料を使用した技術に比べてコスト競争力が高まってきています。

実際にナイジェリアでは、COVID-19の復興策として、6億1900万ドルを投じて太陽光発電システムを導入し、500万世帯に太陽光発電とミニグリッドへのアクセスを提供することを目指しています。この自然エネルギーは、石炭火力発電と比べて、長期的に見ればコストが低いためです。

また、化石燃料を中心とした社会システムを克服する活動も有効です。

社会運動や著名人の声明によって、化石燃料を使用するインフラや機器の廃止を支持する声が高まります。例えばイギリスでは、2019年に行われたExtinction Rebellionによる抗議活動が、同国の脱炭素目標の制度化に向けて重要な役割を果たしたと評価されています。

カーボンロックインは私たちの問題である

インフラ投資において、長期的な排出量の影響を考慮することは、電力会社だけでなく、すべての社会構成者にとって重要なことです。政府や企業、また家計を支える人々は、今日行う投資や購入の決定が長期にわたって気候変動に影響を与えることを意識しなければなりません。

今世紀半ばまでに脱炭素化を達成するためには、社会のすべての構成者が「2050年は今」という考え方を持ち、私たちが望む未来に向けた意思決定を今行うことが重要です。

参考記事:What to Know About Carbon Lock-in and How to Avoid It | World Resources Institute (wri.org)

この記事をSNSでシェア
目次
閉じる