T-EAC(時間ベースのエネルギー属性証明書)とは?注目される背景とメリットを解説
T-EAC(時間ベースのエネルギー属性証明書)とは、従来よりも短い1時間単位で分析できるクリーンエネルギー認証システムです。Time-based Energy Attribute Certificatesの略で、米Googleが中心となって試験運用を進めています。電気がいつどこで生成されたのかを24時間追跡し、きめ細やかな単位での脱炭素化に貢献する新ツールです。本記事では、T-EACの仕組みやメリット、そして現在利用されている国際的なエネルギー属性証明書について解説します。
T-EAC(時間ベースのエネルギー属性証明書)とは?
T-EAC(時間ベースのエネルギー属性証明書)とは、電力がどこでどのように生産されたかを24時間追跡し、その電力がいつ生産されたかを正確に証明する手段となります。本章では、T-EACの概要について具体的に説明します。
米Googleが実証実験
地球温暖化に対処するためには、脱炭素化を速やかに実現する必要があります。しかし、その際必要となるクリーンエネルギー認証システムは、年間または月間単位でしか機能していないという現状がありました。そのような背景から、Googleはアメリカ中西部とデンマークでT-EACの実証実験に参加しています。Googleは、Energy Tagなどの組織と連携して、クリーンエネルギーのマッチングを1時間単位で検証する手法を提供しています。
T-EAC(時間ベースのエネルギー属性証明書)の概要
T-EACとは、電力がいつどこで生成されたのかを24時間きめ細かく追跡する新しいツールです。24時間年中無休で追跡することで、電力の需要と供給のミスマッチなどを防ぐことができます。Googleを中心に、世界中のパートナーと協力して、T-EACの開発を進めてきました。
T-EAC(時間ベースのエネルギー属性証明書)が注目される背景
地球温暖化に対処するには、世界の消費電力の脱炭素化を速やかに実現する必要があります。具体的には、クリーンエネルギーと、すべての地域電力系統の毎時間の電力需要のつり合いをとる方法を見出す必要があります。しかし、現在のクリーンエネルギー認証システムでは、1年や1ヶ月といった単位でしか機能せず、リアルタイムで電力の需要と供給を一致させることは困難でした。より細やかなエネルギー追跡システムを構築することで、クリーンエネルギーを最も必要とされているときに、最も必要な場所に供給するアプローチを推進できるようになります。このような背景から、Googleは、アメリカ中西部とデンマークでT-EACという新しいコンセプトを試験的に運用しています。
T-EAC(時間ベースのエネルギー属性証明書)のメリット
T-EACにはさまざまなメリットが存在します。本章では、環境面とビジネス面に分けて説明します。
環境面のメリット
T-EACが完全に開発されれば、電力の需要と供給のミスマッチを防ぐことができ、最も必要な時間と場所での需給一致を推進することができます。また、1時間あたりの電力消費量をクリーンエネルギー生成と一致させることにより、再生可能エネルギーへのシフトを後押しできるとしています。
ビジネス面のメリット
T-EACが導入されることで、最も必要とされる時間帯にクリーンエネルギーを供給する技術や、プロジェクトに対する新しい投資を促進する価格シグナルが生まれると予測されています。
T-EAC(時間ベースのエネルギー属性証明書)の今後
まだ試験運用の段階にあるT-EACですが、今後どのように発展していくのでしょうか。
Energy Tagによる市場取引の想定
T-EACの開発を進めている国際イニシアチブのEnergy Tagは、2021年にホワイトペーペー『Energy Tag and granular energy certificates』で今後の構想を述べています。証書の生産者である発電事業者やトレーダー、サプライヤーに加えて、消費者も取引システムに登録することができます。証書と電気の使用データを突き合わせ、ダブルカウントなどがないかをチェックする仕組みとなっています。既存のEACシステムに適合できるような仕組みで検討されています。
テクノロジーへの期待
T-EACの潜在能力を十分に発揮するためには、エネルギー消費者が自分のエネルギーデータにアクセスして体系化し、エネルギー消費者と時間単位のクリーンエネルギーの購入をマッチングさせる優れたツールとシステムが必要になります。また、クリーンエネルギーの需要と供給の一致を可能にするために、人工知能による監視と分析が行われています。
世界中で注目されるその他のエネルギー属性証明書
近年、世界中でより環境負荷の低い電力を利用することが求められるようになっています。その際、発電に伴う環境面の特性(環境価値)を具体的に示したものが、エネルギー属性証明書です。日本では「非化石証書」「グリーン電力証書」「J-クレジット」の3種類、ヨーロッパではEUが推進する「GO(Guarantees of Orgin)」、北米では「REC(Renewable Energy Certificate)」、そのほかの40を超える国や地域では「I-REC(International Reanewable Energy Certificate)」が使用されています。本章では、各エネルギー属性証明書について詳しく紹介します。
GO
世界各国のエネルギー属性証明書の中で、最も数多く発行されているのがヨーロッパの「GO(Guarantees of Origin)」です。 EUがクリーンエネルギーの普及を目的に導入した証書で、加盟 27 カ国に非加盟の 4 カ国(アイスランド、スイス、セルビア、ノルウェー)を加えた合計 31 カ国で発行しています。 証書を管理する共通の証書管理システムを構築できている点が特徴です。
REC
「REC(Renewable Energy Certificate)」は、主に北米で使用されているエネルギー属性証明書です。GOのような共通の証書管理システムはなく、地域別に発行体が分かれています。
I-REC
「I-REC(International Reanewable Energy Certificate)」とは、各国のグリーン電力証書を国際的に認定するシステムであり、第三者の立場から認証しているため、信頼性が高いことで注目を浴びています。ヨーロッパや北米を除く40を超える国や地域で使用されています。ルールに従って国ごとに発行体が存在し、国をまたいでの発行や取引などは禁止とされています。
まとめ|T-EAC(時間ベースのエネルギー属性証明書)の動向に注目
Googleは、2030年までに24時間年中無休でクリーンエネルギーによる事業を運営するという目標を達成するため、今後もT-EACの開発・展開に力を入れていく予定です。T-EACが完全に開発されれば、世界の消費電力の脱炭素化が大きく進む第一歩になるかもしれません。