採石場の岩屑が二酸化炭素の回収に大きく貢献するーセメント業界の今後の可能性
慈善団体The Carbon Communityのチャールズ・ニコルズ氏は、ブレコン・ビーコンズに新たに植林された森林についてのセミナーにおいて、採石場の岩屑を新しい森林の造成の際に使用することで、大気中の二酸化炭素の回収に大きく貢献できると述べました。同セミナーの目的は、ウェールズの鉱物製品部門がネットゼロへの移行をどのようにサポートできるかを説明することです。
玄武岩が森林のカーボンマイナスに貢献する?
ウェールズ鉱産物協会主催のセミナーでは、カーマーゼンシャー州ランドカバリーの近くに10万本の木を植えた新しい森の一部として、28エーカーのテストサイトが設置され、炭素貯留を研究していることが紹介されました。その中の一つとして、砕いた玄武岩で地面を処理する実験が行われています。そこでは、玄武岩を砕いて処理すると1ヘクタールあたり8〜12トンの二酸化炭素を大気中から吸収できるという研究結果が得られました。
この結果に関して、チャールズ氏は以下のように述べています。
「岩石風化は、大規模な二酸化炭素回収を可能にする自然界の主要な解決策のひとつです。よって、1ヘクタールあたり8〜12トンの二酸化炭素を大気中から吸収するということは、非常に大きな意味を持ちます。Glandwr Forestでの実験は、自然に基づく複数のソリューションを組み合わせた世界初の試みであり、私はその可能性に期待しています」。
玄武岩は、アスファルトやコンクリート用の骨材を作る際の副産物として生産されるため、大気中から回収されるCO2は、輸送や植林による排出量をはるかに上回る予測です。これは、植林を完全にカーボン・マイナスにするための新しい方法となる可能性があります。
セメント業界がネットゼロを達成するには?
鉱物製品協会のエネルギー・気候変動担当ディレクターであるダイアナ・ケーシー博士は、産業界の視点から、セメント・コンクリート産業が2050年までにネットゼロを達成する方法を説明しました。
ケイシー博士は、英国の温室効果ガス排出量に占めるセメント・コンクリートの割合はわずか1.5%であるとした上で、2050年の目標達成に向けて、セメント・コンクリート業界はさまざまな取り組みを行っていると述べています。その中には、化石燃料の使用を廃棄物の燃焼に切り替えることや、セメント製造工程での水素の使用を実証することなどが含まれています。
彼女はまた、カーボネーションと呼ばれるプロセスで二酸化炭素を捕らえて貯蔵する、コンクリート製の建物の熱質量の重要性を強調しました。
「建物内のコンクリートの熱質量は、冷暖房の必要性を減らします。建物の設計においては、セクターの排出量をネットゼロよりさらに44%削減できるこの特徴を最大限に活かす必要があるでしょう。」
製造工程での炭素削減に留まらず、玄武岩を用いた炭素吸収やコンクリートの特性の建築への応用など、セメント業界はネットゼロに向けて進歩を続けています。
参考記事:Quarry rock dust can make big contribution to recovering CO2 | Hub-4