カーボンニュートラル投資促進税制とは?認定要件や企業事例を解説
カーボンニュートラル投資促進税制とは、民間企業の脱炭素化投資の加速を目的として政府によって整備された税優遇制度です。2050年までにカーボンニュートラルを達成させるため、企業は脱炭素化効果を持つ製品の製造設備もしくは、事業所の炭素生産性を向上させる設備投資に対して、税額控除か特別償却の優遇を受けることができます。本記事ではカーボンニュートラル投資促進税制の概要や、実際に認定を受けた企業事例を分かりやすく解説します。
カーボンニュートラル投資促進税制とは?
「カーボンニュートラル投資促進税制(以下CN税制)」は、国が新しく創設したカーボンニュートラルを促進するための支援制度です。2050年カーボンニュートラル目標を達成するため、政府や企業を初め、日本だけでなく世界中でさまざま取り組みがおこなわれています。CN税制もそのうちの1つです。
詳しくはこちらを参照してください。
>>https://www.meti.go.jp/policy/economy/kyosoryoku_kyoka/cnpoint.pdf
「カーボンニュートラル」については、こちらを参照してください。
「カーボンニュートラル」と「ゼロカーボン」は同じことを指します。
税制の支援措置がおこなわれる背景
地球温暖化の影響で世界中で環境問題に対する意識の向上が求められています。日本においては、2020年10月に菅元総理が「2050年カーボンニュートラル」宣言をし、2050年までにCO2排出量を実質ゼロにすることを目指しています。
そこで政府は「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」を策定し、予算や税、国際連携などの多様な支援をおこなうことを示しました。
※「CO2排出量実質ゼロ」とは?
「CO2排出量実質ゼロ」とは、CO2の排出量自体をゼロにするのではなく、できる限りゼロに近づける削減努力をおこない、どうしても削減できない分を相殺することを指しています。相殺する方法には、植林活動やJ-クレジットの購入など、さまざまな方法があります。
適用期間
適用期間は、令和6年3月31日までとなっています。
対象設備
CN税制では、対象とされている以下の設備を導入すると、最大10%の税額控除や50%の特別償却が認められます。
- 大きな脱炭素効果が期待される製品の生産設備の導入
- 生産工程などの脱炭素化と付加価値向上を両立する設備の導入
「大き脱炭素効果が期待される製品(需要開拓商品)」とは、具体的には
- 化合物パワー半導体
- EVまたはPHEV向けリチウムイオン蓄電池
- 定置用リチウムイオン蓄電池
- 燃料電池
- 洋上風力発電設備の主要専門部品
の製品を指しています。
なお、対象となる設備は3年で7%以上向上させること、そして炭素生産性を1%向上させる設備とされているので注意してください。
詳しくはこちらを参照してください。
>>エネルギー利用環境負荷低減事業適応計画(カーボンニュートラルに向けた投資促進税制)の申請方法・審査のポイント (meti.go.jp)
炭素生産性と付加価値額
「炭素生産性」とは、CO2排出をできるだけ抑えながら収益を上げていくことを評価する指標を指します。公式は以下の通りです。
また「付加価値額」は、
の公式から求めることができます。
税制措置
税制措置の具体的な内容は以下の通りです。
税額控除は5〜10%、そして特別償却は50%認められることになります。
手続きの流れ
認定への申請手続きについては、以下の①〜⑥の流れとなります。
- 事前相談:認定までの計画をしている時点から約2ヶ月ほど前に各省庁(事業を所管している省庁)への「事前相談」が必要となります。(WEB申請)
- 計画の申請(審査開始):申請書や添付書類の提出(WEB申請)
- 計画の認定(計画開始):※CN投資促進税制の適用を受ける場合、対象設備かどうかの確認は計画の審査プロセスと併せておこなわれます。
- 税制対象投資の実施:税制の適用期間内に設備などを制作、または取得しその事業の用に供した場合、税額控除や特別償却を受けることが可能です。
- 税務報告:税務署へ特例措置の申請をおこないます。
- 実施状況報告書提出:事業適応計画の期間中は、1年ごとの提出が必要になります。
詳しくは、こちらを参照してください。
>>エネルギー利用環境負荷低減事業適応計画(カーボンニュートラルに向けた投資促進税制)の申請方法・審査のポイント (meti.go.jp)
カーボンニュートラル投資促進税制の認定企業事例
カーボンニュートラル投資促進税制の認定企業について、実際に事例を挙げて紹介していきます。
フクシマガリレイ|太陽光発電設備の導入
フクシマガリレイ株式会社は、業務用冷凍冷蔵庫や冷凍冷蔵ショーケースの製造や販売を対象とし、太陽光発電の設備投資をおこないました。社内では「Dramatic Future 2050」を掲げており、食品の生産から食卓に並ぶまでのCO2排出量の実質ゼロを目指しています。太陽光発電設備は、冷凍庫や冷蔵庫などを製造する工場の上に設置し、炭素生産性の向上を目標にしています。
詳しくはこちら
>>フクシマガリレイが環境ビジョン 『Dramatic Future2050』を策定 (galilei.co.jp)
宝酒造株式会社|ボイラー、天然ガス製造設備の導入
宝酒造株式会社は、酒類を製造する過程においてボイラーや天然ガス製造設備の投資をおこないました。製造する過程で必要な重油貫流ボイラーを効率の高いガス貫流ボイラーに改造し、一部の工場において電力会社との契約を一部変更しました。これらの取り組みから製造時に排出するCO2の軽減を目指しています。
詳しくはこちら
サントリープロダクツ|排熱回収システム、冷蔵保管システムの導入
サントリープロダクツ株式会社は、清涼飲料製品を製造する事業において、排熱回収システムや冷蔵保管システムの設備投資を決定しました。そのほかにも自社の工場へ太陽光発電システムを設置するなどし、CO2排出量削減を通して付加価値向上や環境負荷低減の両立を目指しています。
詳しくはこちら
参考:カーボンニュートラルに向けた投資促進税制 認定事例すべて⾒せます! (meti.go.jp)
まとめ|カーボンニュートラル投資促進税制を活用した設備投資を
脱炭素社会に向けたシフトチェンジは、世界的な目標として各国が積極的に取り組んでいます。CO2排出量を削減しつつ自社の製品も売り出していけるよう、早急に税優遇制度を活用し、設備投資をおこなっていきましょう。