ゼロエミッションとは?推進する世界的な目的と5つの企業事例を紹介

bannar

ゼロエミッションとは、廃棄物を一切出さない資源循環型社会のシステムのことを指します。脱炭素社会など循環型社会の実現に向けて、企業による積極的な取り組みが必要とされています。本記事では、ゼロエミッションの意味と目的、企業の取り組み事例を5つ紹介していきます。

目次

ゼロエミッションとは

「ゼロエミッション」とは、廃棄物を一切出さない資源循環型社会のシステムのことを指します。1994年に国連大学が提唱した考え方で、1つの産業から出た廃棄物を別の産業が再利用することで、結果的に廃棄物を出さない、という取り組みです。

具体的には、〇〇会社が出した副産物を△△会社の原材料に換え、△△会社の廃棄物を□□会社が再利用するといった取り組みです。

※国連大学(国際連合大学)とは

「国連大学」とは、”大学”という単語がついていますが学生は在籍していません。おもに世界中の研究者や学者などが研究発表をおこなっています。国際連合の目的の達成や、国際課題の研究や人材育成を目的として設置された、日本が唯一本部を持つ国際連合の機関です。本部は東京都渋谷区にあります。

ホームページはこちら

>>United Nations University (unu.edu)

ゼロエミッションが注目される背景

日本は大量生産・大量消費型社会の方向に進んでしまっています。それにより廃棄物が増え、廃棄物処理や企業の事業活動によってCO2がたくさん排出されており、地球温暖化に拍車をかけています。

下の図を見るとわかる通り、1960年から1970年の高度成長期からごみの総排出量はぐんぐん増え、1955年からの20年間では約5倍となっています。2000年代に入ってからは緩やかに減少傾向であるとはいえ、毎年多くのゴミが廃棄されています。

そういった現状を変えるため、国連大学は「ゼロエミッション」を提唱しました。

画像引用:廃棄物処理・3Rに関する課題と対応 (env.go.jp)
画像引用:一般廃棄物処理事業実態調査の結果(令和元年度)について  (env.go.jp)

ゼロエミッションの目的

ゼロエミッションの目的としては、埋立地行きとなる廃棄物をゼロにすることが掲げられています。年々廃棄物処理の費用が高まっていることに加え、環境マネジメントシステムに関する国際規格「ISO14001」の普及により、ゼロエミッションに取り組む企業が増えてきました。

ゼロエミッション実現に向けた取り組み

ゼロエミッションを実現させるため、さまざまな取り組みがおこなわれています。本章では、具体的に3つの取り組みについて説明していきます。

エコタウン事業

「エコタウン事業」とは、1997年からおこなわれている、日本政府によってゼロエミッションに取り組んでいる地域を承認していく制度です。2005年までには、以下の26地域が承認されました。資源循環をきっかけとした産業復興や、地域活性化、また循環型社会の実現を目的に始まりました。

福岡県北九州市、岐阜県、長野県飯田市、川崎市、福岡県大牟田市、札幌市、千葉県・千葉市、秋田県、宮城県鶯沢町(現栗原市)、北海道、広島県、高知県高知市、熊本県水俣市、山口県、香川県直島町、富山県富山市、青森県、兵庫県、東京都、岡山県、岩手県釜石市、愛知県、三重県鈴鹿市、大阪府、三重県四日市市、愛媛県

ゼロエミッション東京戦略

「ゼロエミッション東京戦略」とは、2019年に東京都によって策定・公表された取り組みです。パリ協定で定められた気温上昇を1.5℃以下に抑えること、また2050年までにネットゼロを達成することを東京都内においても実現させることが目的とされています。また、途中目標として、2030年までにCO2排出量を2000年比で50%にまで削減させることを掲げています。

ゼロエミッション東京戦略は6つの分野と14個の政策に分けられています。

詳しくは、こちらの資料を参照してください。

>>概要版 (kankyo.metro.tokyo.jg.ip)

>>全文 (kankyo.metro.tokyo.lg.jp)

企業のゼロエミッション(ゼロエミ・チャレンジ)

企業のゼロエミッションの取り組みの1つとして、「ゼロエミ・チャレンジ」があります。環境産業省によって2050年までにカーボンニュートラル実現のため取り組んでいる企業をリスト化し、投資家へ情報提供をおこなったりTCFDサミットにおいて公表したりしています。

ゼロエミ・チャレンジの具体的な企業の取り組みについては、次の章で説明していきます。

ゼロエミ・チャレンジについての概要はこちらを参照してください。

>>ゼロエミ・チャレンジ企業リストについて (meti.go.jp)

ゼロエミ・チャレンジ企業の取り組み事例

前章で解説した「ゼロエミ・チャレンジ」の具体的な企業の取り組みについての事例をあげていきます。

旭化成

旭化成は、工場の4割を水力発電やバイオマス発電などの再生可能エネルギーで賄うなど、再エネ化を強く推進しています。生産過程で出る繊維くずをバイオマス発電の燃料として再利用する取り組みもおこなっており、2016年には99.8%のゼロエミッションを達成しています。

>>詳しくはこちら

サントリーホールディングス

サントリーホールディングスは、ほとんどの工場で使われるガス燃料を重油から都市ガスや液化天然ガスへ転換しました。これらはCO2排出量が低い上、硫黄分をほとんど含まないという特徴があります。また、2021年より稼働している長野県にあるサントリー工場では、初めてCO2排出実質ゼロ工場を実現させました。太陽光発電やバイオマス燃料などを効率よく活用しています。

>>詳しくはこちら

日清食品

日清食品は、2030年までの環境戦略を「EARTH FOOD CHALLENGE」と称し、さまざまな取り組みをおこなっています。具体的には、太陽光パネルの設置や廃棄物の再利用、また容器包装使用量の削減などです。

>>詳しくはこちら

中部電力

中部電力は、2030年までにCO2排出量を50%削減(2013年度比)、また2050年までにはネットゼロ達成を目指しています。具体的には自社保有車を100%電動化させることや、CCUSを利用した脱炭素実現に向けて取り組みをおこなっています。

>>詳しくはこちら

ゼロエミッション実現に向けた今後の課題

資源循環型社会を目指すゼロエミッションは一見良いことばかりに聞こえますが、課題も残されています。

具体的には、廃棄物を再利用するときにまた新たなエネルギーが追加で必要となってくるということや、廃棄物を次の活用場所へと運ぶためのエネルギーなど、まだ「完璧な計画」とは言えません。

今後はそういった課題にも目を向けながら、2050年までにネットゼロを達成できるように慎重に取り組んでいくことが必要です。

まとめ|ゼロエミッションのために企業ができることを

このゼロエミッションはもちろん、2050年目標も国だけのアクションでは確実に不十分です。必要となってくるのは企業の積極的な取り組みです。ゼロエミッションとして自社で可能な取り組みはなにか、環境問題を他人事だと思わず、環境経営に前向きに取り組んでいきましょう。

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