米フォード社、電気自動車を発売
米フォードは5月19日、アメリカで最も売れている自動車を全電気化したF-150ライトニングを発表しました。発表してから48時間でフォードは45,000台近くの予約注文を受け、これは昨年アメリカで登録された全ての電気自動車(EV)のほぼ20%に相当します。
2020年には1,000万台だった電気自動車の普及台数は、2030年には1億4,500万台を超えると予想されており、EV電池用鉱物の需要は急増すると考えられます。これらの電池に使われている鉱物の多くは、ロシア、インドネシア、コンゴ民主共和国などで採掘されていますが、これらの地域では、鉱業が地域社会との対立を助長してきた歴史があります。
今後EV革命はますます進んでいくことが予想されますが、EV電池の製造に必要な鉱物をどのように入手すれば良いでしょうか。
より良いリサイクル方法の確立
新たな採掘の必要性を減らすためには、電気自動車の電池をリサイクルする方法を大幅に改善する必要があると専門家は言います。使用済み電池が埋立地に埋まらないようにするために、より良いリサイクル方法を確立しなければなりません。
電気自動車の電池は複雑な技術を要しますが、基本的には携帯電話に搭載されているリチウムイオン電池と同じです。リサイクル業者が取り出したい貴重な素材のほとんどは電池セルの中にあります。しかし、電気自動車の電池は何年間も何千キロもの走行ができるように設計されており、分解して部品にすることはできません。
廃棄物を重要な鉱物資源へ
EV用電池の分解にはコストと手間がかかることもあり、現在のリサイクル方法はかなり粗雑なものとなっています。モジュールを細断して炉に入れることで、軽い物質は燃え、銅、ニッケル、コバルトなどの価値の高い金属を含む合金が残ります。そして、その合金から強酸を使って個々の金属を精製します。これらのプロセスは大量のエネルギーを必要とし、有毒ガスや廃棄物も発生します。
将来的にはよりクリーンで効率的な、直接的なリサイクルが可能になるかもしれません。個々の電池セルから正極材を分離し、その中に含まれる化学物質の混合物を再生する方法です。イギリス・バーミンガム大学のファラデー研究所のギャビン・ハーパー研究員は、「直接的なリサイクルはまだ開発の初期段階にあるが、この方法を使えば、リサイクル業者が電池内の材料をより多く回収し、より価値の高い最終製品を得ることができるようになるだろう」と述べています。
リサイクルの規模拡大
2040年には、1,300ギガワット時分の使用済み電池がリサイクルを必要としていると国際エネルギー機関(IEA)は推定しており、これを質量に換算すると800万トン近くにもなります。
リサイクルの規模を拡大できれば、この廃棄物は重要な鉱物資源となります。
Earthworks社が最近発表したレポートによると、EVの電池が100%リサイクルに回され、特にリチウムの鉱物回収率が高いと仮定した場合、2040年までにEV産業のリチウム需要の25%、コバルトとニッケルの需要の35%をリサイクルで満たすことができるとしています。
政府によるサポート
この可能性を引き出すためには、政府がEV用電池のリサイクルをサポートするしっかりとした政策が必要だと、レポートの執筆者たちは強調しています。具体的には、リサイクル業者が電池をより簡単に分解できるような電池の設計基準、電池の引き取りプログラムなどが考えられます。
欧州連合(EU)では、すでにEV用電池の廃棄を「拡大生産者責任」計画で規制しており、現在、鉱物回収の具体的な目標値を設定して規制を更新しています。
電池業界が急成長を遂げている今、電池用金属の需要を満たすには、リサイクルだけでは不十分です。ロードアイランド州にあるプロビデンスカレッジの政治学者であるテア・リオフランコスは、リサイクルは新たな採掘需要を減らすための「多くの戦略のうちの一つ」と考えています。他のアプローチとしては、より少ない鉱物を使用する新しい電池の開発や、公共交通機関の整備、自家用車の需要を削減することなどが挙げられます。
リオフランコスは、「地球から切り取って捨てるものではなく、できるだけ使いたいものとして扱いましょう」と語ります。