環境に配慮した住宅への資金援助プロジェクトーその問題点と教訓とは?

英国で2020年9月より、環境に配慮した住宅を普及させるために、断熱材や低炭素暖房といった設備への資金援助事業が実施されました。しかし、国家会計監査院(NAO)は、今回の「グリーンホーム補助金制度」はあまりに早急に行われたため住宅所有者や設置者に不満を与え、また二酸化炭素削減や雇用創出の効果も低かったと発表しています。

生活環境をより持続可能で快適なものに整える画期的な事業でしたが、なぜ失敗に終わったのでしょうか。その原因を探ることで、低炭素社会への道しるべが見えてきます。

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なぜ失敗と言われたのか?施工業者との連携やスタッフのトレーニングの不備に原因

当事業では、15億ポンド(約1,500万円)の予算が用意され、最大5,000ポンド(低所得者の場合は10,000ポンド)まで、断熱材や低炭素暖房などの住宅設備を導入するための費用に充てられました。これにより、60万世帯が最大600ポンドの節約に成功し、6ヵ月間で8万2,500人の雇用を支え、家庭からの温室効果ガス排出量を削減できると期待されていました。しかしNAOの報告書によると、実際には予想の数値を下回り、12ヶ月間で推定47,500軒の住宅の環境負荷低減、5,600人分の雇用創出に終わっています。住宅所有者や施工業者からは、複雑な申請条件の中でのクーポン券の発行や支払いの遅れ、プログラムに参加できる認定業者の探し方の煩雑さなどについて、3,000件以上の苦情が寄せられました。

今回の失敗は、施工業者との連携の不十分さや、事業期間の短さから、エネルギー効率の高い施工業者の需要に応じた動員が困難であったことが原因として考えられます。また、ヒートポンプの設置など、炭素削減効果は高いものの専門技術を必要とする事業に重点が置かれていたため、スタッフのトレーニングに長期間を要したことも挙げられるでしょう。

以上に起因して炭素削減効果は大幅に減少し、最終的には政府が期待していた数の雇用を生み出すことはできませんでした。新しい窓の設置などの専門性の低い分野では、より迅速に雇用が創出された可能性があり、また、2年間という期間を設けた当初の計画では、新しい雇用を創出するための時間をより多く確保することができましたが、財務省によって却下されています。

得られた教訓ープロセスの簡略化や長期的な雇用創出のためには、地元主導のプログラムが重要

住宅の脱炭素化は、イギリス政府のネットゼロ戦略の重要な要素となっています。今後の計画では、当事業の失敗から学ばなければなりません。

ビジネス部門に関しては、さまざまなエネルギー効率化計画が、2050年までにネットゼロを目指すという政府の全体計画とどのように整合するかを明らかにすること、また、プロセスを簡略化するために家庭や設置業者が何をしなければならないかを始めから検証し、長期的な効果を確認するために段階的に立案することが重要です。

また、経済長官のエド・ミリバンド氏は、「断熱性の低い住宅は、気候変動への取り組みを大きく妨げるものです。対策を遅らせる代わりに、この失敗した計画から教訓を得て新たな雇用を創出するための、地元主導の改修プログラムを実施すべきです。」と述べています。

ただし、当事業ではまったく成果が得られなかったわけではありません。「グリーンホーム補助金制度」は、短期的な経済刺激策として計画され、新型コロナウイルスの感染拡大が続く中で実施されました。しかし、このような状況にもかかわらず、99.9%の申請が処理され、約8万件の住宅の改修が行われています。グリーンホーム補助金の一部は、地方自治体の住宅のエネルギー効率を向上させ続けているのです。

今回のプロジェクトは短期計画であったため、関係者の混乱を招き期待された効果は得られませんでした。しかし、地元主導の小さいスケールで長期的に計画を立てれば、環境問題対策と雇用創出の双方に大きく貢献するでしょう。

参考記事:Green homes grants cost £1,000 in admin for each household that benefited – NAO | Chester and District Standard (chesterstandard.co.uk)

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