重力発電とは?注目されている理由やメリットと海外事例を解説

bannar

重力発電とは、コンクリートブロックなどの重りを上げ下げすることで位置エネルギーを電気エネルギーに変換する蓄電システムを指します。供給量が不安定な再生可能エネルギーのエネルギーを貯蔵する装置として注目を集めています。そこで本記事では重力発電の仕組みやメリット、重力発電の事例について詳しく解説します。

目次

重力発電とは

重力発電とは、名前の通り、物体が地面に引き寄せられる力である「重力」を使った発電です。コンクリートブロックなどの重りを上げ下げすることで、位置エネルギーを電気エネルギーに変換する蓄電方法を指します。「脱炭素社会」を目指して世界中で再生可能エネルギーが普及する中、重力発電への関心が高まっています。

重力発電に必要な蓄電技術

太陽光や風力などの再生可能エネルギーは、天候などに左右されるため電力供給が不安定になりやすいという課題があります。そのため、不足分の電力を補い、余剰分の電力をストックする蓄電システムを取り入れることは欠かせません。重力蓄電の技術は、余った電気を活用する「揚水式水力発電」の技術が応用されたものになります。揚水式水力発電とは、低い位置から高い位置に水を汲み上げることで蓄電し、汲み上げた水を落として得られるエネルギーによって発電を行います。「位置エネルギー」を利用できれば、水資源に頼らなくてもよいのではないかという発想から重力蓄電の技術は生まれました。

重力発電が注目されている理由

重量発電が注目されている理由には、再生可能エネルギーの「供給量が不安定で蓄電が不可欠」という性質があります。太陽光や水力、風力などの再生可能エネルギーは、化石燃料由来のエネルギーと比較して、温室効果ガスを排出せず、環境に優しい持続可能なエネルギーです。一方で、天候に左右されやすいため、出力が不安定になりやすいという課題もあります。そのため、不足分の電力を補い、余剰分の電力をストックする蓄電システムが注目されるようになりました。特に、ローテク技術を使った蓄電システムである「重力発電」が今注目されているのです。

重力発電のメリット

重力発電にはさまざまなメリットが存在します。本章では、主要な4つのメリットについて説明します。

環境への負荷が少ない

構造がシンプルで汎用性が高いため、場所さえあればどこでも設置することが可能です。工夫次第では、環境への負荷を抑えることができます。

低コスト

従来の蓄電システムである揚水式水力発電では、コストが割高であることが課題でした。しかし、重力発電は「ローテク」と言われるほど構造がシンプルなため、コストを低く抑えることが可能です。

変換効率が高い

一般的な揚水式水力発電の変換効率は約70%ですが、重力発電の変換効率はそれを大きく上回ります。後述するスイスのEnergy Vault社では、90%という高効率を実現しました。

応答時間が短い

揚水式水力発電では、応答時間が10〜100秒と再生可能エネルギーの出力変動を吸収するには遅いという課題がありました。重力発電では、比較的応答時間が短いというメリットがあります。

重力発電の海外事例

海外では、既に重力発電の実用化へ向けた取り組みが進んでいます。ここでは、スイスのEnergy Vault社とスコットランドのGravitricity社の事例を紹介します。

スイス|Energy Vault社

Energy Vault社の重力発電は、コンクリートブロックが積まれたタワーとその上に取り付けられた特殊なクレーン車で構成されています。1つ35トンのコンクリートブロックをクレーン車で上げ下げすることで電気エネルギーと位置エネルギーを自在に変換します。同社は、一般的な揚水発電の変換効率が約70%なのに対して90%という高効率を実現しました。30年以上の長期使用が可能なほか、環境負荷の低減や、リチウムイオン電池よりも安価なコストで運用できるなど多くのメリットがあります。今後は、より大容量で悪天候にも耐えられる蓄電システムの開発に取り組むとしています。

スコットランド|Gravitricity社

Gravitricity社の重力発電は、地中15〜150mの穴に500〜5,000トンの重りを吊るし、上げ下げするシンプルな構造です。穴の深さや重りの重さによって、貯蔵できる電力量が変化します。起動から僅か1秒で最大出力に達することができ、応答時間の大幅な短縮を実現しました。50年近く長期使用できるだけではなく、リチウムイオン電池に比べておよそ半分のコストで開発、運用が可能です。今後はイギリス、ヨーロッパ、南アフリカの廃坑を活用し、4MW(4,000kW)級の大規模な実証機の建設を目指すとしています。

まとめ|重力発電は環境に優しい再生可能エネルギー

再生可能エネルギーは今後さらに普及していくことが予想されますが、そのためには安定した電力供給は欠かせません。再生可能エネルギーの主電源化を実現するための選択肢の1つとして、今後、重力発電の普及が加速するかもしれません。

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