地熱発電とは?メリット・デメリットと注目の将来性について解説

bannar

地熱発電とは、地球の奥深くにあるマグマの熱を利用する発電方法です。CO2や有害ガスなどをほとんど排出しない再生可能エネルギーでもあります。

本記事では、地熱発電のメリット・デメリットのほか、日本の地熱発電の現状や、気になる今後の将来性について解説していきます。

目次

地熱発電とは

「地熱発電」とは、地下1,500m〜3,000mにある、マグマの熱で温められた150℃以上の蒸気や熱水を利用して電気をつくる発電方法のことを指します。この蒸気や熱水は地下の「地熱貯留層」に貯まっており、ここまで井戸を掘って蒸気や熱を取り出し、それらでタービンを回して電気を発生させることを地熱発電といいます。

有限でない上、CO2もあまり排出させず、さらに燃料費がかからないため、世界で注目を集めています。

画像引用:知っておきたいエネルギーの基礎用語 ~地方創生にも役立つ再エネ「地熱発電」 (enecho.meti.go.jp)

地熱発電の発電方法はおもに2種類

地熱発電には「フラッシュ発電」と「バイナリー発電」の2種類があります。

フラッシュ発電

「フラッシュ発電」とは、地熱貯留層から出る蒸気で直接タービンを回して発電する方法です。200℃以上の高温な蒸気に適しており、地熱発電の中ではもっとも一般的です。

フラッシュ発電の中でも「シングルフラッシュ発電」「ダブルフラッシュ発電」に分かれます。

「シングルフラッシュ発電」は地熱流体(地下で減圧沸騰した蒸気と熱水が合わさったもの)から蒸気を気水分離器で1回分離させ、その蒸気でタービンを回す方法です。日本にある地熱発電所のほとんどが、このシングルフラッシュ発電を用いています。

画像引用:蒸気発電 (geothermal.jogmec.go.jp)

「ダブルフラッシュ発電」は、気水分離器で分離させた熱水を減圧器(フラッシャー)を通してさらに蒸気を抽出し、高圧蒸気と低圧蒸気でタービンを回して発電する方法です。シングルフラッシュ発電に比べ、出力が10〜25%増加します。日本では八丁原発電所、森発電所、山葵沢地熱発電で採用されています。

画像引用:蒸気発電 (geothermal.jogmec.go.jp)

参考:蒸気発電 (geothermal.jogmec.go.jp)

バイナリー発電

「バイナリー発電」とは、水よりも沸点が低い二次媒体を使用し、地熱流体で温められた二次媒体から発生する蒸気でタービンを回して発電をおこないます。フラッシュ発電と違い、低温の蒸気が適しています。

画像引用:地熱発電のしくみ (chinetsukyokai.com)

参考:地熱発電のしくみ (chinetsukyokai.com)

日本にある有名な地熱発電所

本章では、日本にある有名な地熱発電所を紹介していきます。

岩手県松川地熱発電所|国内初の商用運転を開始

岩手県八幡平市にある松川地熱発電所は、日本で初めて運転を開始した地熱発電所です。1952年におこなわれた温泉開発のための調査で蒸気が噴出し、東化工株式会社(現在の日本重化学工業株式会社)が約10年間の調査と建設を経て、1966年に運転を開始しました。当時は9,500kWの出力だったのですが、現在は23,500kWとなりました。日本重化学工業株式会社は2003年に東北水力地熱株式会社に引き継がれ、2015年にはほか3社と合併し、東北自然エネルギー株式会社となっています。

発電所の隣にある松川地熱館では、当時の様子をパネルと映像で学ぶことができるほか、日本初の地熱タービンの展示がされています。

詳しくはこちら

>>日本で最初に運転を開始した地熱発電所 (tohoku-epco.jp)

大分県八丁原発電所|国内最大の地熱発電所

大分県九重町にある八丁原(はっちょうばる)発電所は、国内最大の地熱発電所として知られています。国内では5番目に運用開始された地熱発電所であり、1977年に1号機、1990年には2号機が完成し、合計出力は110,000kWにものぼります。年間の総電力量はおよそ8億7千万キロワットであり、約20万キロリットルの石油を節約することが可能です。

詳しくはこちら

>>八丁原発電所 (geothermal.jogmec.go.jp)

地熱発電のメリット

本章では、地熱発電のメリットについて説明していきます。

CO2をほとんど排出せず環境にやさしい

地熱発電はCO2排出量が少なく、環境にやさしいことで注目を集めています。資源エネルギー庁によると、kWhあたりのCO2排出量(単位:g-CO2)は

  • 石炭火力発電:975.2(直接排出886.8+間接排出88.4)
  • 石油火力発電:742.1(直接排出886.8+間接排出88.4)
  • 太陽光発電:53.4(直接排出0+間接排出53.4)
  • 地熱発電:15.0(直接排出0+間接排出15.0)

と、ほかの発電方法に比べて圧倒的に少ないことがわかります。

さらに、もっともCO2排出量の少ない発電方法は水力発電であり、排出量はわずか11.3g-CO2となっています。

参考:発電別二酸化炭素(CO2)排出量 (hkd.milt.go.jp)

安定した発電量が確保でき価格が変動しにくい

太陽光発電や水力発電などの再生可能エネルギーの中でも、地熱発電は天候や日差し関係なく発電が可能なため、安定した発電量を確保することが可能です。特に日本は環太平洋火山帯に位置しており、地熱資源が豊富なことでも知られています。

また発電量に大きな変動がないため、価格にも大きな変化は生まれません。

蒸気と熱水が再利用できる

発電に使用した高温の蒸気や熱水は、河川水との熱交換を通して暖房や魚の養殖、農業ハウスに再利用することができます。例え寒さが厳しい土地でも、地熱発電後の暖かい水を使用することで、一年中きゅうりやトマトなどの野菜の栽培が可能になりました。

参考:地熱発電とは?メリット・デメリット、日本の地熱発電について解説! (nittoh-e.co.jp)

参考:マグマの熱エネルギーを利用する地熱発電とは?種類や普及しない理由は? (enechange.jp)

地熱発電のデメリット

地熱発電にはメリットが多い一方、デメリットも存在します。本章ではその代表的なデメリットについて解説していきます。

時間とコストがかかる

地熱発電は導入費用や計画から発電までに時間がかかるのが一般的です。地熱発電の発電設備には多くの地質調査が必要とされており、その土地に合う発電設備を開発する必要があります。またコスト面に関しても、地質調査や地盤調査、堀削作業などの各工程に莫大なコストがかかります。

この時間とコストの面が、日本において地熱発電があまり広まらない大きな理由だとされています。

規模に対して発電量が少ない

初期費用が高いものの熱効率が低く、地中からの熱の約8割は空気中に逃げてしまい発電に活用することができません。そのため、投資の元をとるだけでもだいたい20年以上の年月がかかるとされています。

参考:地熱発電投資は何年で投資回収できる? メリット・デメリットを解説 (tainavi-pp.com)

立地が限定されトラブルを招く恐れがある

地熱発電に適している場所として挙げられるのが、温泉地や国立公園などの自然豊かな場所が多いです。そういった場所に発電施設を設置すると自然破壊やその土地の産業(温泉産業や観光産業など)に影響が出る可能性が非常に高いため、地元の方々との連携が難しくなります。また、地熱発電の設備の設置には大規模な工事を要するため、近隣との騒音トラブルにもなりかねません。

参考:マグマの熱エネルギーを利用する地熱発電とは?種類や普及しない理由は? (enechage.jp)

日本の地熱発電の現状

「地熱発電のメリット」の章でもふれた通り、日本は世界有数の地熱資源の豊富さを有しています。地熱資源量はアメリカ、インドネシアに続いて世界第3位の日本ですが、地熱発電の発電設備容量で比較すると、日本は第10位に位置しています。

地熱発電の普及がスムーズにおこなわれていない原因としては、デメリットの章でふれていたもの以外には「金銭的リスクの高さ」が挙げられます。地熱資源が存在するのは地下2,000mほどの場所であり、そこの深さまで掘るためには約4億円ほどかかります。しかし地熱資源の豊富な場所をピンポイントで当てることも難しいため、空振りになる可能性も高いのです。

日本にとって、こういったリスクを抱えたまま開発を進めることはかなり難しいため、地熱発電の普及が進んでいないのが現状です。

ほかの国々の地熱発電導入事情

近年地熱発電の成長が著しいインドネシアは、国営企業と民間企業の割合がおよそ4:6であり、国が一定の役割を担っているように感じます。国が地熱発電に関する法体系の整備や政策の打ち出しや、優遇税制などの新しい取り組みをリードしているため、国全体で地熱発電が顕著に成長しています。

またトルコでは、地熱法やFIT制度などの国コミットメントや地熱発電に適した環境を受け、積極的に地熱発電が導入され始めています。元々国が設定していた2030年までの目標を既に2017年で達成するなど、成長度を加速させています。

参考:海外の地熱発電状況について (nef.or.jp)

地熱発電に将来性はあるのか

本章では、地熱発電の将来性についてふれていきます。

日本は地熱発電導入の余地が多くある

日本は地熱資源が豊富であるにも関わらず、地熱発電の導入が進んでいません。そのため、日本政府が掲げている「2030年まで約150万kW達成」という目標を達成したとしても、日本の地熱資源量の6.4%ほどしか使用していません。そのため、地熱発電における日本の将来性は非常に高いことがわかります。

参考:地熱発電とは?仕組み・メリット・デメリット (energy-shift.com)

補助や規制の見直しなどの国の支援が始まる

2021年に制定された「パリ協定」において気温上昇を抑える目標が設定されました。それを受け、各国では再生可能エネルギー関連の補助や、規制の見直しなどの支援が始まっています。同年10月にアイスランドで開催された世界地熱会議では、2020年時点での地熱発電による発電量は169%にまで拡大(2015年比)したと報告されています。

参考:世界有数の火山国・日本で期待される地熱発電のポテンシャル (ntt-f.co.jp)

まとめ|地熱発電は今後注目すべき再生可能エネルギーのひとつ

まだまだ成長途中である日本の地熱発電事業ですが、地熱資源の豊富さや安定した発電量などのポテンシャルが高く、再生可能エネルギーの中でも一際注目を集めています。

各国に遅れを取らないよう、早急な開発や導入が求められています。

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