SBTの認定・コミット企業の推移や取り組みをセクター別に解説!

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目次

SBTとは

「SBT」とは、2015年に採択されたパリ協定で生まれた考えであり、企業の環境問題への取り組みの目標設定のことを指しています。Sience Based Targetsの頭文字を取った言葉で、日本語では「科学的根拠に基づいた目標設定」と訳すことができます。

この「目標設定」というのは、パリ協定で唱えられた「産業革命以降の気温上昇を2℃(もしくは1.5℃)より十分に低く抑える」という、いわゆる「2℃目標(well Below 2℃)」です。各企業が温室効果ガスの排出を毎年4.2%以上削減することを掲げ、5〜10年先の目標設定を義務付けています。

SBTはCDP、UNGC(国連グローバル・コンタクト)、WRI(世界資源研究所)、WWF(世界自然保護基金)の4つの法人によって運営されており、世界中の3589社(2022年9月1日時点)の企業や団体が加盟しています。

SBTの認定基準や加盟までのステップは以下の記事を参照してください。

※パリ協定とは

「パリ協定」とは、2015年に開催された「第21回気候変動枠組条約締結国会議(COP21)」にて採択された、国際的な取り決めです。地球温暖化の原因となっている温室効果ガスの排出量を大幅に減らすことが目的とされており、2021年2月時点では197カ国が賛同しています。COP21がフランスのパリでおこなわれたことから、パリ協定と名付けられました。

参考:第1部 SBTの概要 (env.go.jp)

SBT認定企業・コミット企業の違い

SBTには、「認定企業」と「コミット企業」の2種類が存在します。

2015年に17社から始まったSBTですが、2022年9月1日時点では3589社(認定企業:1678 社、コミット企業:1911社)が参加する、世界規模の取り組みとなりました。

「認定企業」とはもうすでにSBTに認められた企業のことを指し、「コミット企業」は2年以内にSBT認定を取得すると宣言した企業のことを指します。

下の表は、2015年3月から2022年3月までの日本のSBT認定/コミット企業の推移を表しています。

画像引用:SBT(Science Based Targets)とは︖ (env.go.jp)

ほかの国際的な取り組みとの違い

カーボンニュートラルや気候変動対策を掲げる国際的な取り組みは、CDPやRE100などほかにも複数あります。

  • SBT:「2℃目標」を達成するため、5〜10年先を目標として企業が設定する、温室効果ガス削減のための取り組みを指します。
  • RE100:企業がその事業活動において使用する電力を、すべて再生可能エネルギーでまかなうことを目的とした国際イニシアチブです。
  • CDP:気候変動に関わる企業の取り組み内容を、投資家向けに提供することが求められている国際的なNGOのことを指しています。
  • TCFD:投資家に向け、企業へ気候変動関連の財務情報を開示するように促す国際的な団体です。近年「気候変動」のみならず「自然関連」の情報の開示を求める「TNFD」も発足しました。

世界のSBT認定/コミット企業の割合

SBTに参加している国は79カ国あり(2022年9月1日時点)、日本はイギリスに次ぐ第2位です。ほかの国々と比較するとイギリス、日本、アメリカの参加率が高く、ドイツ、スウェーデン、フランスなどの西欧諸国がそれに続きます。

世界においては食品製造業や不動産業、専門サービス業の参加率が高いのですが、日本では電気機器や建設業の割合が高いです。

画像引用:4. SBT参加企業 (env.go.jp)

参加企業セクター別割合(2022年12月現在)

本章では、SBT認定/コミット企業のセクター別割合を解説していきます。

※セクターとは

「セクター」とは、おもに株式相場や株式市場などで大多数の企業を分析する際に、建築業や食料品、電気機器など、便宜上わかりやすく区分するグループを指します。

国内SBT認定企業のセクター別割合

国内におけるSBT認定企業は、その半数以上(58.4%)を中小企業が占め、電気機器(10.0%)、建設業(5.8%)が後に続きます。

中小企業の割合を抜いたセクター別のSBT認定企業の割合は以下の表になります。

国内SBTコミット企業のセクター別割合

国内におけるSBTコミット企業は、電気機器(17.5%)が1番多く、建設業(8.8%)、金属製品(7.0%)が後に続きます。

セクター別のSBTコミット企業の割合は以下の表になります。

SBT認定企業の事例紹介

以下では、SBT認定企業が推進している取り組みやSBTに認定された取り組み目標などを各セクターごとに紹介していきます。(2022年12月時点)

電気機器セクター(31社中)

このセクターは電気をおもなエネルギー源として利用し、そこから生まれた機器や部品などを販売・製造する企業がまとめられています。

パナソニック株式会社

パナソニック株式会社は2015年に「パナソニック環境ビジョン2050」を策定し、地球温暖化やエネルギー問題に対して、大きく分けて2つの行動を起こしています。1つ目はクリーンなエネルギーから電気や水素を作り、それらの貯蔵や運搬をおこない、人々が安心して暮らせるように注力しています。2つ目は持続可能な社会を目指し、CO2排出量ゼロの工場づくりやLED照明の導入などに取り組んでいます。

詳しくはこちらを参照してください。

>>パナソニック環境ビジョン2050 (holdings.panasonic)

建設業セクター(18社中)

このセクターは建築や土木などを扱う企業がまとめられています。

積水ハウス株式会社

積水ハウス株式会社は持続可能な社会の構築のため、2008年に2050年を目標とした脱炭素宣言をおこないました。SBT取得は、建設業界では初となります。以下の取り組み目標がSBTに認定されたものです。

・2030年までに供給する戸建住宅、賃貸住宅からのCO2排出量を45%削減

・2030年までに自社で消費するエネルギーによるCO2排出量を35%削減

・事業活動で使用している5万本超の蛍光灯を3年をめどにLED化

引用:温室効果ガス削減で「SBTイニシアチブ」の認定を取得 住宅業界で国内初 (sekisuihouse.co.jp)

詳しくはこちらを参照してください。

>>温室効果ガス削減で「SBTイニシアチブ」の認定を取得 住宅業界で国内初 (sekisuihouse.co.jp)

食料品セクター(11社中)

このセクターは穀物やフルーツ、缶詰、食肉、加工食品などを扱っている企業がまとめられています。

味の素株式会社

味の素株式会社は温室効果ガス削減、プラスチック削減、フードロス削減、サステナブル調達の4つの柱を中心に、環境負荷低減の取り組みをおこなっています。SBTに認定された取り組み目標は以下の通りです。

・2030年度までに温室効果ガス排出量を2018年度基準で50%削減

・2030年度までに温室効果ガス排出量を2018年度基準で24%削減

引用:味の素グループの温室効果ガス削減目標がSBTイニシアチブの認定を取得 (ajinomoto.co.jp)

詳しくはこちらを参照してください。

>>味の素グループの温室効果ガス削減目標がSBTイニシアチブの認定を取得 (ajinomoto.co.jp)

そのほかにも、環境課題や食資源などの大切さを訴える広告を作成しています。

>>環境広告|環境への取り組み (ajinomoto.co.jp)

化学セクター(10社中)

このセクターはトイレタリーを含む、総合科学メーカーや日用品を取り扱う企業が幅広くまとめられています。

花王株式会社

花王株式会社は2019年にESG戦略である「Kirei Lifestyle Plan(キレイライフスタイルプラン)」を策定し、2030年までの目標として掲げています。具体的に、SBTに認定された目標は以下の通りです。

・CO2排出量(絶対量)削減率 2030年までに22%(基準年2017年)

引用:花王の温室効果ガス削減目標がSBTイニシアチブの認定を取得 (kao.com)

詳しくはこちらを参照してください。

>>花王の温室効果ガス削減目標がSBTイニシアチブの認定を取得 (kao.com)

医薬品セクター(10社中)

このセクターは医薬品を販売・製造する企業がまとめられています。

大塚製薬株式会社

大塚製薬株式会社は2050年環境ビジョン「ネットゼロ」を策定し、ウォーターニュートラル(工場の水管理プログラムを世界へ)、カーボンニュートラル(CO2排出量を2017年度比で50%減)、サーキュラーエコノミー(リサイクル原料や植物由来原料の使用割合100%)の3つの柱とともに取り組みをおこなっています。SBTに認定された目標は以下の通りです。

・2030年までに温室効果ガスの排出量(スコープ1+2)を2017年比で30%削減

・2030年までに温室効果ガスの排出量(スコープ3)を2017年比で20%削減

引用:大塚製薬の温室効果ガス削減目標が「Science Based Targets(SBT)イニシアチブ」の認定を取得 (otsuka.co.jp)

詳しくはこちらを参照してください。

>>大塚製薬の温室効果ガス削減目標が「Science Based Targets(SBT)イニシアチブ」の認定を取得 (otsuka.co.jp)

情報・通信業セクター(8社中)

このセクターは携帯やネット関連、システム、ゲーム、映画、音楽などのエンターテイメントまで含まれる、幅広い企業がまとめられています。

株式会社NTTドコモ

株式会社NTTドコモは国内の通信業界で初めてSBTを取得しています。具体的には「ドコモグループ環境宣言」と「Green Action Plan 2030(2030年に向けた環境目標)」の2つを策定し、再生可能エネルギーの積極的な活用とICT技術を使用した脱炭素社会の実現を目指しています。SBTに認定された目標は以下の通りです。

・2030年度までに2018年度の温室効果ガスの排出量を50%削減(1.5℃目標)(Scope1およびScope2)

・2030年度までに2019年度の温室効果ガスの排出量を14%削減(Scope3)

引用:報道発表資料 : (お知らせ)国内の移動通信キャリア初 国際的な気候変動イニシアチブ「SBT」1.5℃目標の認定を取得 (docomo.ne.jp)

詳しくはこちらを参照してください。

>>報道発表資料 : (お知らせ)国内の移動通信キャリア初 国際的な気候変動イニシアチブ「SBT」1.5℃目標の認定を取得 (docomo.ne.jp)

小売セクター(6社中)

このセクターは卸売業などから入荷した商品を消費者に直接販売する企業がまとめられています。

株式会社ファミリーマート

株式会社ファミリーマートは「ファミマecoビジョン」という2030年および2050年に向けた中長期目標を策定し、サプライチェーン全体での温室効果ガス削減を目指しています。コンビニ業界では初めてのSBT認定です。SBTから認定を受けた目標は以下の通りです。

・2030年までに2018年度比で30%削減(Scope1+2)

・2030年までに2018年度比で15%削減(Scope3)

引用:ファミリーマートの温室効果ガス削減目標が 「Science Based Targets(SBT)イニシアチブ」の認定を取得 ~コンビニエンスストア業界で初めての認定 (family.co.jp)

詳しくはこちらを参照してください。

>>ファミリーマートの温室効果ガス削減目標が 「Science Based Targets(SBT)イニシアチブ」の認定を取得 ~コンビニエンスストア業界で初めての認定 (family.co.jp)

不動産業セクター(6社中)

このセクターは家の売買や貸し出しなどをおこなっている企業がまとめられています。

東京建物株式会社

東京建物株式会社は脱炭素社会の実現に使命感を持ち、グリーンビルディング(水資源の削減や施設の緑化など)やCO2排出量削減を通した気候変動への対応、廃棄物や有害物質などの発生削減・管理などの取り組みをおこなっています。具体的にSBTから認定を受けた目標は以下の通りです。

・CO2排出量を2030年までに40%削減(2019年度比)、2050年までにネットゼロ

引用:東京建物グループの温室効果ガス排出量削減目標「SBT(Science Based Targets)」認定を取得 (prtimes.jp)

詳しくはこちらを参照してください。

>>環境|サステナビリティ (tatemono.com)

まとめ|SBT認定を目指し、各セクターを引っ張る企業に

各セクターによって取り組み内容やSBTに認定された目標はさまざまです。自社が含まれているセクターの企業の取り組みを参考に、SBT認定を目指していきましょう。

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