京都議定書とは?意義と目標、達成状況、パリ協定との違いを徹底解説

bannar

1997年12月、京都で開催された気候変動についての国際会議・第3回気候変動枠組条約締約国会議(COP3)にて、本記事で解説していく「京都議定書」が採択されました。これにより、二酸化炭素(CO2)、メタン、一酸化二窒素(亜酸化窒素)、ハイドロフルオロカーボン(HFC)、パーフルオロカーボン(PFC)および六ふっ化硫黄(SF6)の6種類の温室効果ガスについて、先進国が数値目標を掲げ削減に取り組みを始めました。この記事では現在採択されているパリ協定と比較して、京都議定書の意義とその経緯、達成状況について解説していきます。

目次

京都議定書とは

「京都議定書」とは、1997年に京都で行われた第3回気候変動枠組条約締約国会議(COP3)で採択された、国際的な取り決めです。先進国の温室効果ガス排出量を5%削減(1990年比)することを目標としていました。
本項では、議定書が発行されるための条件、採択に至る背景、現在有効な「パリ協定」との違い、そして京都議定書の最大の成果である「京都メカニズム」についてご説明します。

発効条件

京都議定書の発効には、以下の2つの条件がありました。

  • 55カ国以上の国が参加すること
  • 参加した先進国のCO2排出量が、地球全体の55%以上となること

京都議定書の採択に至る背景

京都議定書が採択されたきっかけは、1992年に行われた「地球サミット」です。京都議定書は、地球サミットで採択された「国連気候変動枠組条約」をもとにおこなわれたCOP3にて導入が決定されました。それぞれの解説は以下の通りです。

地球サミットについて

地球サミット(環境と開発に関する国際連合会議)

「地球サミット」の正式名称は国連環境開発会議(UNCED:United Nations Conference on Environment and Development)であり、1992年にブラジルのリオデジャネイロで開催されました。当時国連に加盟していた約180カ国ほぼすべての国が参加し、かつてないほどの規模の大きさで環境と開発に関して議論がおこなわれました。この地球サミットは、環境問題に関する国際的な協議のきっかけになったと言われています。この会議の中で作られたものが「国連気候変動枠組条約」という条約です。

国連気候変動枠組条約 

「国連気候変動枠組条約」はその名の通り地球温暖化(気候変動)に対する各国の取り組みの「枠組み」を示したものであり、いつまでに何をすればよいのか、という具体的な内容は設定されていません。そこで地球温暖化に対する具体的な取り組みは、1995年から1年ごとに毎年開かれる「国連気候変動枠組条約締結国会議(以下COP:Conference of the Parties)」で決めるとされました。実際に第3回COP(1997年)では京都議定書、第21回COP(2015年)ではパリ協定が採択されています。

京都議定書とパリ協定との違い


「京都議定書」「パリ協定」はどちらも国連気候変動枠組条約がきっかけで生まれた決まりごとなため、セットで話されることが多いです。この2つは似たイメージを持つものの、3つの大きな違いが存在します。

京都議定書とパリ協定の比較

対象期間の違い

京都議定書はパリ協定の18年前に策定されており、2020年までの地球温暖化対策の目標を表しています。一方、パリ協定は京都議定書の後継として、2020年以降の地球温暖化対策にアプローチしています。

対象国の違い

京都議定書が対象としていた国は先進国のみ(日本、EU、アメリカなど)でしたが、パリ協定では協定に加盟している国をすべて対象としました。

目標達成義務の違い

京都議定書では立てられた目標を達成することが義務付けられていたのに対し、パリ協定は目標達成は義務とされていません。そのため、パリ協定は不完全な条約だという声も上がっています。

京都メカニズムとは

「京都メカニズム」とは、京都議定書の目標を達成しやすくするために導入された削減の制度のことを指します。これは、自国の温室効果ガス削減対策が不十分な場合、他国の削減量を取り引きし、自国の削減量として換算しても良いという制度です。

京都議定書の経緯

「京都議定書」は、世界中の国々が一丸となって地球温暖化対策に取り組む大きなきっかけの1つとなりました。しかし、成立後、複数の問題が起こります。

先進国の不満

前の章でも書いたとおり、京都議定書が削減を義務付けていたのは先進国(日本、アメリカ、EUなど)であり、開発途上国(中国やインドを含む)には一切義務がありませんでした。開発途上国を対象としなかったことには理由があり、それは「地球温暖化はすべての国が共有すべき問題だが、率先すべきは先進国である」という「共通だが差異ある責任」の原則を反映させたからです。

これを不公平だとした先進国(アメリカなど)は京都議定書に参加しませんでした。当時温室効果ガス排出がトップクラスだったアメリカの離脱は大きな痛手となりましたが、2004年にロシアが参加し、削減の士気は維持できました。ロシアの加入により発効条件を満たしたため、2005年に京都議定書は発効されました。

のちに続くパリ協定では、先進国のみの削減努力では足りないとされ、先進国・開発途上国関わらず、加盟国すべてを対象としています。

京都議定書の達成状況

京都議定書第3条において、第一約束期間(2008~2012年)では先進国全体の温室効果ガス排出量を5%以上削減する(1990年比)ことを目標としています。具体的には、日本はマイナス6%、欧州連合(15カ国)はマイナス8%などと示されていました。欧州連合については京都議定書第4条において、イギリスはマイナス12.5%、ドイツはマイナス21%などと定められています。

京都メカニズムクレジットや森林管理での吸収量を除くと、第一約束期間では、加盟している先進国23カ国中11カ国が削減目標を達成しました。

画像引用:附属書I国の京都議定書(第一約束期間)の達成状況 (cger.nies.go.jp)

一方、京都メカニズムクレジットや森林管理での吸収量も加味すると、加盟しているすべての国々が達成しています。

画像引用:附属書I国の京都議定書(第一約束期間)の達成状況 (cger.nies.go.jp)

まとめ|地球温暖化防止に向けた歩み

深刻化する地球温暖化にともない、社会全体で対策が急速に進められています。現在はパリ協定にシフトチェンジしたため京都議定書は動いていませんが、世界が一丸となって地球温暖化について考える大きなきっかけとなりました。いくつかの問題は抱えていたものの、それぞれの国が対策を講じ、目標達成に向けて前進していくことに意味があったのではないでしょうか。

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