TNFDとは?概要とメリット、TCFDとの違い【ENCORE】

bannar

最近、TCFDと一緒にTNFDという国際イニシアチブが注目を浴びています。本記事では、TNFDの概要や、TCFDとの違い、賛同のメリットを解説していきます。

目次

TNFDとは?

「TNFD」とは、「Taskforce on Nature-related Financial Disclosures:自然関連財務情報開示タスクフォース」の略称です。企業活動がもたらす自然への影響を見える化し、報告できることが目指されています。

この「TNFD」の考えは「TCFD」がベースとなっていると考えられます。「TCFD」は「Task Force on Climate-related Financial Disclosures:気候関連財務情報開示タスクフォース」の略称であり、T“N”FDが生物多様性を重視しているのに対し、T“C”FDは気候変動関連を重視しているタスクフォースのことを指します。TCFDに引き続き、2021年6月に発足しました。

TNFDの目標については、公式ページでは次のように記されています。

TNFD の目標は、常に変化する自然関連リスクを組織が報告し行動を起こせるようにするためのフレームワークを提供することで、世界の金融の流れを自然にとってマイナスの結果から自然にとってプラスの結果へとシフトさせるようサポートすることです。

引用:TNFD Nature in Scope

また、TNFDについてより詳しく知りたい方は、こちらを参照してください。

TNFD : Nature in Scope
(英語原文)>>https://tnfd.global/wp-content/uploads/2021/07/TNFD-Nature-in-Scope-2.pdf
(日本語訳)>>https://tnfd.global/wp-content/uploads/2021/10/TNFD-Nature-in-Scope-Japanese.pdf
TNFD : Proposed Technical Scope for TNFD
(英語原文)>>https://tnfd.global/wp-content/uploads/2021/07/TNFD-%E2%80%93-Technical-Scope-3.pdf
(日本語訳)>>https://tnfd.global/wp-content/uploads/2021/10/TNFD-Technical-Scope-Japanese.pdf

設立の背景

これまでは脱炭素や気候変動に焦点が当たっていた(=TCFD)のですが、新しく生物多様性の必要性(=TNFD)も見直され始めてきました。「TNFD」は、こういった変化を受け、2020年7月に、国連開発計画(UNDP)、世界自然保護基金(WWF)、国連環境開発金融イニシアチブ(UNEP FI)、グローバルキャノピーの4つの機関によって発足されました。

TNFD原則

提案されているTNFDの原則には、7つの項目があります。

画像引用:TNFD Nature in Scope

市場での有用性:市場の報告者やユーザー、特に企業や金融機関、さらに政策立案者やその他の主体にとって、直接的に有用で価値のあるフレームワークを開発します。 

科学による裏付け:科学的に裏付けられたアプローチに従い、十分に確立された科学的根拠や新たに発見された科学的根拠を組み込むとともに、その他の既存の科学的根拠に 裏付けられたイニシアチブを組み込むことを目指します。

自然関連リスク:自然への依存度や影響、組織上・社会上のリスクに加え、短期的・財務上重要なリスクなど、自然関連リスクに対処します。

目的志向:TNFD の目標を確実に達成するために、最低限必要なレベルの精度を用いて、 目的志向で、リスクを低減し自然にとってプラスの行動を増やすことを積極的に目指し ます。

統合的・適応的:既存の開示や基準に統合され、それらを強化できるような、測定や報告に関する効果的なフレームワークを構築します。国内外の政策コミットメント、基準、 市場動向の変化を把握し、適応性のある姿勢を取ります。

気候変動と自然環境の統合:気候変動関連・自然関連のリスクに対して統合的なアプローチを採用し、自然に基づく解決策に対する融資を拡大します。

グローバルに包括的:グローバルに(新興国・先進国ともに)関連が深く、公正で、有用で、利用可能で、無理なく使用できるフレームワークを確立します。

引用:TNFD Nature in Scope

TNFD活動計画とその進捗

TNFD活動計画(ワークプラン)には、準備・構築・テスト・協議・普及・導入の、6つのフェーズがあります。

・フェーズ0:準備

15~20 の金融機関を対象とした市場準備調査をおこないます。さらに既存ツールのリソースマッピング調査やITEG(非公式技術専門家グループ)が提案する段階的な優先セクターアプローチの開始などが含まれます。

・フェーズ1:フレームワーク草案の作成

TNFDの目的や目標、アウトプット、成果を見直し、フレームワークと提言の草案を作成します。また、専門的な作業として、 データスタックやシナリオ、気候と自然の関連性などを追求します。 

・フェーズ2:テスト

このプロセスでは、関連する金融規制当局の協力のもと、TNFD報告のフレームワークと提言の草案が金融機関や企業で確認(テスト)されます。

・フェーズ3:協議

フレームワーク草案を発表し、協議で得たフィードバックをもとに修正をおこないます。修正後のフレームワークは、TNFDのウェブサイトにて公表されます。またこれは、関連するセクターや地域で広く普及することを目的としています。

・フェーズ4:公表

いつ、どのように公表するかを決定し、TNFD発足の推奨事項をサポートするための、プロジェクト全体の内外向けコミュニケーション計画を立てます。

・フェーズ5:普及

すべての分野において、対象となるセクター別、地理別のイベント、 ステークホルダー、メンバー、ターゲットを絞った研究を通じて、社会に広く普及させることを目指します。

もっと詳しく知りたい方は、こちらのページの14~17ページを参照してください。

>>TNFD Nature in Scope

自然関連リスクと機会

自然関連リスクと機会

TNFDは、企業や組織の活動がもたらす自然へのリスクを、「自然関連リスクと機会」という言葉を用いて表しています。これには短期的な財務リスクだけでなく、長期的な自然へのリスクや財務リスクの影響などさまざまな角度からのリスクを表します。含まれるリスクは大きく分けて3つあります。

影響:大気や水質、土壌汚染、生態系、ヒトやヒト以外の生息地の破壊・改変・分断などの影響が考えられています。

依存度:企業や組織の活動の自然への影響は、自然に依存しているほかの企業や組織活動に大きな財務リスクをもたらすでしょう。こういったリスクは、社会に大きな影響を与えます。

自然関連の財務リスクと機会:これは、自然へ影響した結果、また依存した結果起こるすべての財務上のリスクと機会のことを指します。自社の影響と依存を見える化することで、自然へのプラスの影響や経済利などの機会の提示にも繋がります。

参考:TNFD NATURE IN SCOPE (tnfd.global)

TNFDに賛同するメリット

TNFDへ賛同するメリットは、おもに2つが挙げられます。

TNFD賛同のメリット

ESG投資を狙うことができる

地球温暖化が進むにつれ、それを止めるべくESG投資という投資手法が注目を浴びています。ESG投資とは、環境に配慮した経営・事業をしている企業に対し、優先的に投資をおこなうという投資手法です。TNFDへの賛同は、このESG投資への大きなアピールとなります。

企業戦略策定に繋がる

TNFDの賛同企業はTNFDの基準に沿った情報開示をする必要があるため、環境に関する知見を深めることができます。

それにより、リスク管理や戦略策定・実行が可能となります。

TNFDフレームワークの導入【ENCORE】

現時点ではまだTNFDのフレームワークが未完成のため、公式な賛同表明はできないものの、TNFD開示対応ツールについて簡単に紹介していきます。

ENCORE

TNFD開示対応ツールはいくつかありますが、代表的となるのは「ENCORE」というツールです。これはExploring Natural Capital Oppotunities, Risks and Exposuresの略であり、企業活動の自然への影響や依存度を金融機関に提出するツールです。国連環境計画世界自然保全モニタリングセンター(UNEP-WCSC)や自然資本金融同盟(NCFA)などの機関によって開発されました。企業の多くの種類のセクターや業種の自然への依存度や影響を簡単に把握することが可能です。

ENCOREの公式サイトはこちらです。

>>ENCORE (Exploring Natural Capital Opportunities, Risks and Exposure) (encore.naturalcapital.finance)

参考:TNFD開示対応の先端ツールの使い方 (project.nikkeibp.co.jp)

TNFDの開示項目

現段階で採用されているTNFDのフレームワークは、大きく分けて「ガバナンス」「戦略」「リスク管理」「指標と目標」の4つの柱が存在します。この構造はTCFDと同じですが、TNFDはより自然に重点を置いたものとなっています。また、TNFDでは「リスクと機会」という用語が持つさまざまな定義を、それぞれの柱に組み込んでいこうと考えています。

参考:TNFD NATURE IN SCOPE (tnfd.global)

画像引用:TNFD NATURE IN SCOPE (tnfd.global) (9ページ)

まとめ|TNFDで環境経営の先駆者になろう

TCFDに次いで登場したTNFDですが、自然資本と生物多様性は今後重要な指標となりつつあります。2021年に発足した、まだ新しい国際イニシアチブなものの、その重要性は世界中が認識し始めています。気候変動だけでなく、生物多様性にも目を向け、地球に優しい環境経営を実戦していきましょう。

フレームワークの実用に先駆け、情報開示の準備を検討してみてはいかがでしょうか。

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