水力発電のメリット・デメリットを網羅的に紹介!仕組みや種類もあわせて解説
知っているようであまりよく知らない「水力発電」。本記事では、水力発電の仕組みや種類から、メリットやデメリットまで網羅的に解説していきます。
水力発電とは
「水力発電」は、「水の流れる勢いで水車を回転させ、発電させる」といったシンプルな仕組みをしています。高低差と水の位置エネルギーを利用し、重力を使って水を上から下に落とす運動エネルギーで水車を回転させ、それに繋がっている発電機で発電します。
水力発電のメリット・デメリットの章はこちらです。
水力発電の構造による分類
一口に「水力発電」といっても、いくつかの種類に分類されます。
水路式
「水路式」とは、河川の下流に取水堰(しゅすいぜき)を設置し水の流れを緩やかにし、十分な落差が見込まれる場所で元の川に戻し発電する方法です。
※取水堰(しゅすいぜき)とは
河川を横断する形で設置される施設のことです。一定の高さの水位を確保しつつ水を引き入れることが可能となります。
ダム式
「ダム式」とは、ダムを造り水(川)の流れを止め、そのすぐ下に発電所を作り、その落差を利用し発電する方法です。ダムの水が減ると水面からの落差が変わってしまうため、必然的に発電量も減ってしまうことがあります。
ダム水路式
「ダム水路式」とは、その名の通り「ダム式」と「水路式」を組み合わせたものです。ダムによって流れを止めた水を、水路によって落差のあるところまで流し、そこで発電する方法です。
参考:水力発電とは?仕組みやメリット・デメリットを解説 (enechange.jp)
参考:水力発電の仕組みや種類、メリットとデメリットをわかりやすく解説 (datsutanso-ch.com)
水力発電の利用方式による分類
水力発電は水の利用方法から4つに分けられます。
流れ込み式
「流れ込み式」とは、河川を流れる水を直接発電所に流し、発電する方法です。ダムを使用しないためコスト面は大幅にカットできますが、河川の水をそのまま利用しており貯めることができません。そのため豊水期にはそのすべての水を利用することができず、渇水期は発電量が極端に減ります。
調節池式
池に水を貯め(貯水池)、水量を調節しつつ発電する方法を指します。雨・晴れ、昼夜関係なく安定して電力を供給できるため、流れ込み式のものよりも効率的に発電できます。
貯水池式
河川をダムでせき止め、発電したい時に発電所に水を流す方法です。ダム式、ダム水路式がこれに当てはまります。
揚水式
「揚水式」とは、発電所の上部と下部に調整池をつくり、上の調整池から下の調整池へ水が落ちる力を利用して発電する方法です。電力の需要が高い昼間は上から下に水を落として発電させ、夜間には余剰電力を使用して下から上に水を汲み上げます。
水力発電のメリット
水力発電にはいくつものメリットが存在します。本章では、その中の8つを紹介していきます。
温室効果ガスを排出しない(クリーンで再生可能)
水力発電はCO2を排出しないため、太陽光発電やバイオマス発電などと並んで「再生可能エネルギー」として注目を集めています。脱炭素社会の実現が強く望まれているこの社会において、再エネの1つである水力発電を設置する団体は着実に数を増やしています。
発電や管理コストが比較的安価
水力発電は原子力発電や火力発電と比較すると、総合的なコストが安くなります。原子力発電や火力発電は設置・発電・維持にかかるコストが高く、また、これらの原料となる化石燃料は海外から輸入しているため、値上がりすると「燃料調整費」として一般家庭の電気代から出されることになります。一方、水力発電で使用される水はもちろん無料な上、水資源の豊富な日本においては効率の良い発電方法となっています。
エネルギー変換効率が良い
「エネルギー変換効率」とは、水力エネルギーや太陽光エネルギーなどを、どのくらい無駄なく電気に変換することができるのかを示したものです。風力発電は25%、原子力発電は33%ほどですが、水力発電は80%と、飛び抜けてエネルギー変換効率が高いです。
参考:水力発電の概要 役割・特徴 (kepco.co.jp)
起伏が多い日本の土地に適している
日本は山が多く起伏が多いことが特徴であり、ほかの国々と比べると急な流れがあり、強い勢いで流れていくとされています。水力発電は高低差を利用して発電するため、起伏の多い地形の日本では最適な発電方法です。
急な電力需要に柔軟に対応できる
先述の(内部リンク)で解説した「揚水式」の水力発電の場合、普段から調整池に水を貯めているため、自然災害や大きな事故などで急に電力が必要になった場合、すぐに発電を開始することが可能です。
費用対効果の高いエネルギー
水力発電は設置する際に高い費用が必要となりますが、維持費や運転費がほかのエネルギーと比べてとても少ないです。さらにダムは50〜100年といった長期使用を前提として設計されているため、費用対効果が高いエネルギーとしても知られています。
水力発電のデメリット
メリットが多い水力発電ですが、デメリットもいくつか指摘されています。
発電量は天候に左右される
発電するためには十分な量の水が必要となるため、雨が降らない期間が続くと川やダムの水が減り、十分な発電ができなくなってしまうことがあります。
水力発電施設の初期費用が高額
メリットの項目に「建設費用は高額だが、維持費や運転費は低額」と記述しましたが、ダム式の水力発電の場合、ダムの建設費用も上乗せされます。日本を代表するダムの1つ「くろよん」こと「黒部ダム」に必要となった公費は513億円でした。なんと7年の歳月を要したと記録されています。
このように、水力発電には(ダムを利用したものは特に)決して低くないハードルが存在します。
黒部ダムについては、こちらを参照してください。
>>世紀の大工事〜くろよん建設ヒストリー〜 (kepco.co.jp)
故障や災害によるリスク
ダムは大量の水をせき止めているため、自然災害や妨害工作、極端な水の流入は、電力供給だけではなく動植物やインフラに多大な影響を及ぼす可能性が高いです。
水力発電施設周辺の環境に影響を与える
水力発電は再生可能エネルギーの1つでありCO2を排出しないため、環境に良いと思いがちです。しかし水力発電所(揚水式)を設置するためには河川の水の自然の流れを変えてしまうため、動物の移動経路や水質、生活に変化をもたらしかねません。
メタンガスの排出
水力発電は再生可能エネルギーの1つとして「環境に優しい発電方法」というイメージを抱かれがちですが、必ずしもそうとは限りません。実は浸水地域の植物が嫌気性環境によって腐敗し、分解し始めることでかなりの量のCO2とメタンガスが放出されているのです。
※嫌気性環境とは
生物が関わる環境で、酸素が介入してない状況のことを指します。例としては、土壌内部や汚泥だけでなく、腸内も挙げられています。
参考:Hundreds of new dams could mean trouble for our climate (science.org)
まとめ|水力発電はクリーンで安定したエネルギー資源
再生可能エネルギーが脚光を浴びている現在、水力発電が今一度見直されはじめています。建設費用や天候に左右される点などがデメリットとして挙げられていますが、エネルギー変換効率の高さに加え、(揚水式の水力発電所は)水を貯めておくことができるため、人気の高い発電方式の1つです。脱炭素社会の実現に向けて、自社で取り組めることを少しずつでも考えていきましょう。