TCFD賛同企業の推移や各企業の取り組みについてセクターごとに解説!

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TCFDは、2015年のパリ協定で定められた「地球の平均気温を産業革命前の+2℃に抑える」ことを目指すなか、投資家が適切な投資判断ができるように、企業に対して気候関連財務情報開示を促すことを目的として設立されました。脱炭素社会の実現に向けてTCFDに賛同する企業は年々増加しています。この記事では、そのTCFDの賛同企業の推移についてと、各セクターごとの企業取り組みの事例を紹介します。

目次

TCFDとは

TCFDとはTask Force on Climate-related Financial Disclosures(気候関連財務情報開示タスクフォース)の略です。G20の要請を受け、金融安定理事会(FSB)によって2015年に設立されました。2015年のパリ協定で定められた「地球の平均気温を産業革命前の+2℃に抑える」ことを目指している中で、投資家が適切な投資判断ができるように、企業に気候関連財務情報開示を促すことを目的としています。また、TCFDに賛同することで投資家からの信頼を獲得することができ、ESG投資の確保に繋がるというメリットもあります。

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TCFD賛同企業推移について

環境問題への対策が各国で求められるなか、日本ではTCFDへ関心を寄せる企業が年々多くなっています。ここでは、日本におけるTCFD賛同企業数の推移について具体的なデータとともに見ていきましょう。

上のグラフ・表は、日本のTCFD賛同企業数推移を表したものです。

TCFDの賛同企業数は2017年から徐々に増え始め、2022年9月時点でその合計数は1,059社に上ります。また近年では、気候関連財務情報を開示することが企業にとって重要であるということが広く認識され始め、その数が急激に伸びています。それは、2021年には1年間で339社が新たにTCFDに賛同しましたが、2022年9月時点でその2倍以上の数に当たる720社を記録していることからもわかるでしょう。

また、日本のTCFD参加企業数は世界的にみても非常に多く、アメリカの444社とイギリスの479社を抑え、日本が最多となっています。特に、2019年は急激に賛同企業数が増加していることが読み取れます。これは、2019年5月のTCFDコンソーシアム設立がきっかけだと言われています。企業の効果的な情報開示や、開示された情報を金融機関などの適切な投資判断につなげるための取り組みについて議論するTCFDコンソーシアムは、「産業と金融の対話の場」として日本のTCFD賛同企業数を押し上げることに貢献しました。ここに経済産業省や金融庁、環境省もオブザーバーとして参加しており、国を挙げてTCFDに臨んでいます。そのほか、2019年10月には、経済産業省主催で世界初のTCFDサミットも開催されました。これらのことから、日本企業はTCFDの賛同に積極的であることがわかります。

参加企業セクター別割合(2022年9月地点)

ここでは、TCFD賛同企業のセクター別割合を見ていきましょう。

セクターとは

セクターとは、業種・技術・開発などを元に、TCFD賛同企業を13種類に分けたグループのことです。これらに当てはまらないものはその他に分類されます。

セクター別TCFD参加企業割合

上の表は、TCFD賛同企業をセクター別にみた場合の賛同企業数を示しています。(2022年9月時点)

ここから、TCFDの賛同企業をセクター別にみた場合、資本財・金融・素材の3つのセクターに含まれる企業が多いことがわかります。特に金融セクターに関しては、国内銀行の数が近年急増したことが関係しています。急増した原因としては、プライム市場に上場する際、TCFDまたはそれと同様の枠組みに基づく情報開示が求められるようになり、対応を進める地方銀行が増えたことが挙げられます。また、金融庁は7月に公表したガイダンス文書で、「金融機関が気候変動対応の戦略を策定するとともに、ステークホルダーに正確な情報を開示することが重要」と指摘しており、今後さらなる金融セクターの賛同数は増加していくことが予想されます。

TCFD賛同企業事例紹介

以下では、TCFD賛同企業の掲げている目標と具体的な対応策を各セクターごとに紹介していきます。

資本財セクター

資本財セクターは、資材の製造・販売、商業サービスなどの企業のビジネスに必要な原料や設備を提供する企業を含みます。

東レ株式会社

東レ株式会社は、革新技術と先端材料の提供により気候変動などの世界的課題の解決に貢献することを目標にしています。そして2050年に向け、「地球規模での温室効果ガスの排出と吸収のバランスが達成された世界」すなわち温室効果ガス(GHG)の排出が実質ゼロの世界の実現を目指しています。

このために東レグループは、繊維・樹脂・フィルムなどの幅広い事業分野で、再生型リサイクル素材および製品の統合ブランド「エコユース」を展開しており、使用済みPETボトルや製造工程で発生する端材などの繊維を回収・再利用したり、お客様工程での使用済みフィルムを回収・再利用する取り組みなどを行っています。

参考:https://www.toray.co.jp/sustainability/tcfd/

金融セクター

金融セクターは、銀行や保険、消費者金融、証券会社などの資産運用に関するサービスを提供する企業を含みます。

オリックス株式会社

オリックス株式会社は、GHG排出量を2030年3月期までに、2020年度比で実質的に50%削減し、2050年3月期までに、実質的にゼロとすることを目標にしています。

例えば、オリックスのグループ会社の1つであるオリックス環境では、自社リサイクル工場(船橋工場・春日部工場)の使用電力を100%再生可能エネルギー電力(再生可能エネルギー由来の非化石証書の使用も含む)に切り替え、CO2フリーの電気を使用する工場としています。

参考:https://www.orix.co.jp/grp/company/sustainability/environment/climate_change.html

素材セクター

素材セクターは、化学材料や金属材料などの、製品生産に必要な材料を製造する企業を含みます。

株式会社クレハ

株式会社クレハは、2030年度までに段階的に削減を進め、クレハグループのエネルギー起源CO2排出量を絶対量で2013年度比20%削減の37.6万トンにする予定です。

そのために営業部門や輸送協力会社と共同で、省エネ車両への計画的な更新や車両大型化によるCO2排出削減および総輸送距離の短縮に継続して取り組んでいます。特に小名浜港からいわき事業所への原燃料輸送車両の更新・大型化を進めており、輸送効率の向上とCO2排出削減に大きく寄与しています。

参考:https://www.kureha.co.jp/csr/environment/climate_change.html

情報技術セクター

情報技術セクターは、ITサービスを提供している企業を含みます。

株式会社リクルートホールディングス

2021年度にリクルートホールディングスの事業活動における温室効果ガス排出量のカーボンニュートラルを⽬指しています。具体的には、2030年度に⾃らの事業活動及びバリューチェーン全体を通した温室効果ガス排出量のカーボンニュートラルを実現する予定です。

この目標を達成するために、情報誌サービスにおける環境活動に力を入れています。例えば、日本全国の駅や店先のラックに設置されているフリーマガジンや、書店や売店で販売されている雑誌(有料誌)を読者に届ける際に、その環境負荷を減らし、必要な情報量と品質を保ちながら紙の消費量を削減するため、裏写りしない範囲で可能な限り薄い紙を使用することを推奨しています。また、製本の裁断の際に必ず発生する切れ端は全てリサイクルしています。またリクルートグループは配送段階においても、フリーペーパーは自社で配送手配を行うことで、配本スケジュールの最適化を行い、配送回数を減らす取り組みを行い、温室効果ガスの排出量削減に努めています。

参考:https://recruit-holdings.com/ja/sustainability/environmental/climate-action/

一般消費財セクター

一般消費財セクターには、消費者向けの小売業・製造業・サービス業を展開する企業が属しています。主に自動車やアパレル、レジャー用品、ホテルレストランなどの企業が含まれます。

ミズノ株式会社

ミズノ株式会社は、2050年までにカーボンニュートラルの実現を目指しています。

そのためミズノでは生地を無駄にしない効率的なパターン設計の開発によって、できる限り生産時の廃棄物の発生を抑える取り組みを進めています。またリサイクル繊維を積極的に採用しています。

参考:https://corp.mizuno.com/jp/sustainability/sustainability-report/tcfd

生活必需品セクター

生活必需品セクターは、食品や日用品などの生活に欠かせない商品を製造・販売する企業を含みます。

亀田製菓株式会社

亀田製菓株式会社は、TCFD賛同の目標として、社における2030年度の温室効果ガスの総排出量を40%削減(2017年度比)することを公表しています。

その対応策として、包装技術の向上に取り組むことで、製品の破損を防止するために使用していたプラスチックトレーを廃止しました。また、製品パッケージを従来よりスリムにし、約3割プラスチック使用量を抑制するECOパッケージ化を推進しています。さらに、このECOパッケージ化の推進は、配送時の積載効率の改善にもつながっています。

参考:https://www.nikkei.com/nkd/disclosure/tdnr/dk954d/

不動産セクター

不動産セクターは、土地や物件の売買・貸借を扱う企業を含みます。

株式会社星野リゾート・アセットマネジメント

株式会社星野リゾート・アセットマネジメントでは、TCFD賛同にあたって、気候変動や大規模災害の低減を目的に保有施設の「環境建築化」を目指し、新築・改築・修繕の際には、エネルギー消費や温室効果ガス(GHG)排出、水消費、廃棄物量の削減等の環境負荷低減の実施・検討を行っています。

ホテル・旅館の運営シーンにおいても「3R(リユース、リデュース、リサイクル)」やアメニティのポンプボトル化、客室のミネラルウォーター等ペットボトル設置廃止等を推進し、滞在の快適さを失わない方法でオペレーターと協力しています。

参考:https://www.hoshinoresorts-reit.com/ja/sustainability/climate.html

運輸セクター

運輸セクターは、道路、鉄道、航空、水運などの運送・物流に関わる企業を含みます。

小田急電鉄株式会社

小田急電鉄株式会社の環境長期目標では、2050年に小田急グループのCO2排出量実質「0」を目指し、その中間目標として2030年に46%(2013年比)削減することが掲げられています。

その対応策として、不動産分野での環境へ配慮した取り組みをおこなっています。例えば、2011年4月にオープンした商業施設「経堂コルティ」は屋上に太陽光発電システムを設置し、発電した電気は空調や照明設備などの電力として使用しています。また、2018年に町田駅ビルの全館リニューアルを実施し、ショップ内、共用通路とも照明装置をLEDに更新したことで、リニューアル前と比較して約7%の電力削減を実施しました。今後も開発が計画される建物については、エネルギーの効率化や熱負荷の低減、資源の有効利用・再利用等、多角的かつ先進的な技術の導入により建物の環境性能の向上を図ります。

参考:https://www.odakyu.jp/news/o5oaa1000002024b-att/o5oaa1000002024i.pdf

ヘルスケアセクター

ヘルスケアセクターは、医薬品や医療機器などの医療に関する研究や、製造を行う事業を展開する企業を含みます。

中外製薬株式会社

中外製薬株式会社ではエネルギー消費量を2019年比2025年5%削減、2030年15%削減することが目指されています。

そこで、営業車の平均燃費16km/Lを設定し、2003年からハイブリッドカーおよび高燃料効率車などのエコカーの導入を進めています。

参考:https://www.chugai-pharm.co.jp/sustainability/environment/tcfd.html

通信サービスセクター

通信サービスセクターは、ネットワークを利用した通信サービスや、放送・広告などを通してコンテンツを提供する事業を展開する企業を含みます。

株式会社テレビ東京ホールディングス

株式会社テレビ東京ホールディングスでは、持続可能な社会の実現に向けて、SBT(Science Based Targets=「パリ協定」に基づく企業による温暖化ガスの排出削減目標)として求められるGHG排出削減レベルを考慮し、2024年度にScope1およびScope2排出量のネットゼロを目指しています。

そのため、2021年11月からは東京・天王洲スタジオの使用電力を、また、2022年5月からは東京・六本木本社の使用電力をすべて再生可能エネルギー由来の電力に切り替えるとともに、東京・神谷町スタジオでも照明のLEDへの切り替えを進めGHG排出量の削減を進めています。

参考:https://www.txhd.co.jp/ir/esg/tcfd/

エネルギーセクター

エネルギーセクターは、石油などのエネルギーに関するビジネスを展開する企業を含みます。

ENEOSホールディングス株式会社

ENEOSホールディングス株式会社は、「事業活動における省エネルギー対策の推進」および再生可能エネルギーを含む「環境配慮型商品*の販売・開発推進」により、2030年度 CO2排出量について、2009年度比1,017万トン削減を目指すとともに、環境対応型事業を推進し低炭素・循環型社会の形成に貢献する予定です。

グループにおける銅製錬事業では、すでに、必要な原材料の約12%にリサイクル資源を活用していますが、この比率を50%まで高める取り組みを進めています。2020年度は銅製錬、リサイクル事業で約300億円の営業利益を上げており、今後、さらなる利益規模の拡大を目指していきます。

参考:https://www.hd.eneos.co.jp/esgdb/environment/tcfd.html

公共事業セクター

公共事業セクターは、電力やガス、水道などのインフラを供給する企業を含みます。

東京電力ホールディングス株式会社

東京電力ホールディングス株式会社は、生産プロセス販売電力由来のCO2排出量を2030年に、2013年と比較して50%削減するという目標を掲げています。(2013年度比)

その対応策として、生産プロセス高温域の電化や水の電気分解によるクリーン水素の開発導入によるカーボンニュートラルの実現をおこなっています。

参考:https://www.tepco.co.jp/about/esg/pdf/tcfd2021-j.pdf

政府セクター

政府セクターは、事業を展開する省庁や行政機関や国立法人などを含みます。

環境省

これまで環境省は、企業と投資家との対話促進に向けた「環境情報開示整備基盤事業」など、TCFD提言等の世界の潮流も踏まえながら、企業の環境関連情報の開示等に取り組んできました。引き続き、TCFDに対し正式に賛同の意向を改めて示し、我が国のESG投資の更なる拡大促進に取り組んでいきます。

参考:https://www.env.go.jp/policy/tcfd.html

TCFD加入を検討して、ESG経営に取り組もう!!

持続可能な社会の実現とESG投資の拡大に伴い、近年企業が積極的に環境問題に対するアクションを取ることが重要であるとされています。そこでTCFDに賛同し、気候変動へのリスクを見える化・対策を提示することは、今後企業経営を進めていく上で極めて大事なことです。そして現在、TCFDに賛同する企業が急増していることからもわかるように、企業が環境に配慮した経営を行いESG経営に取り組んでいくことが、これからより一層求められていくでしょう。そのため、まだTCFDに賛同していない企業は加入を検討し、ESG経営に取り組んでいきましょう。

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