コーポレートPPAとは?注目される理由とメリット、自己託送との違い

bannar

コーポレートPPAとは、「Corporate Power Purchase Agreement:電力購入契約」を意味し、企業(電力需要家)が発電事業者との間で長期(5〜20年間ほど)で結ぶ再生可能エネルギー電力の購入契約を指します。近年ではFIT制度からFIP制度への移行と、自己託送制度の改変により注目されています。この記事では、コーポレートPPAのそれぞれの形態のスキーム及び自己託送との違いについて解説します。

目次

コーポレートPPAとは

本章では、コーポレートPPAとは何か、詳しく説明していきます。

そもそもPPAとは

PPAとは、「Power Purchase Agreement:電力購入契約」を意味します。発電事業者(および小売電気事業者)と電力使用者との間でおこなわれる、主に再生可能エネルギーを発電するための電力契約のことです。

PPAにはいくつか種類があり、その一つがコーポレートPPAです。

コーポレートPPAの形態

「コーポレートPPA」とは、自治体や企業などの法人が発電事業者および小売事業者と、再生可能エネルギー電力(以下再エネ電力)の調達を長期にわたって契約する仕組みです。一般的に10〜20年を目安に購入契約を結びます。コーポレートPPAは大きく分けて「フィジカルPPA」と「バーチャルPPA」の2種類があり、フィジカルPPAはさらに「オンサイトPPA」と「オフサイトPPA」に分類されます。

コーポレートPPAの形態

オンサイト電力購入契約(PPA)

オンサイトPPAの契約形態

「オンサイト電力購入契約(PPA)」とは、購入者側が敷地内の空いたスペースや屋根を提供して発電事業者が発電をおこない、得られた電力を販売するものです。敷地は自分で用意する自給自足的な購入契約で、比較的日本で普及しているスタイルになります。購入者は発電設備への初期投資が不要なため、手軽に導入できるシステムといえます。オンサイト電力購入契約(PPA)では、購入者は、供給を受けた電力と環境価値に対して固定価格を支払います。

オフサイト電力購入契約(PPA)

日本でのオフサイトPPAの契約形態

「オフサイト電力購入契約(PPA)」とは、オンサイトPPAとは真逆のスタイルで、自分の敷地から遠くに設置された発電設備から公共の送配電線を通って使用者のもとに届くものです。購入者は、発電した電力と環境価値に対して固定価格を支払うだけではなく、送配電ネットワークを利用するために、託送料を(小売電気事業者を介して)送配電事業者に支払います。

バーチャル電力購入契約(PPA)

日本でのバーチャルPPAの契約形態

「バーチャル電力購入契約(PPA)」とは、電力の小売りに規制がかかっている地域でも遠隔地で発電された電力を送ることができる、という仕組みです。この仕組みを活用すると、発電コストの低い地域を選ぶことにより長期的な電力購入コストを抑えることが可能となります。発電事業者と需要家の間で取引されるのは環境価値のみで電力の取引は伴わないため、仮想の電力購入契約を意味するバーチャルPPAと名付けられました。

電力購入契約(PPA)のメリット・デメリットなど、詳しくは下記の記事をご参照ください。

コーポレートPPAが注目される理由:FIT制度からFIP制度へ

FIT制度とは、再生可能エネルギーの普及を目的として2012年から始まった制度です。2022年度よりこのFIT制度に加え、市場連動型となるFIP制度の導入が決定しました。徐々にFIP制度への移行が予定されています。

買取価格が一定のFIT制度では、いつ売買しても同じ収入が得られますが、常に収入が変動するリスクのあるFIP制度では、特定の法人と長期で契約を結んだ方が安定した収入を得られやすいという特徴があります。したがって、FIP制度への移行により、コーポレートPPAが注目されるようになりました。本章では、FIT制度とFIP制度の概要を紹介します。

FIT制度(Feed in Tariff:固定価格買取制度)

「FIT制度(Feed in Tariff:固定価格買取制度)」とは、2012年に始まった、再生可能エネルギーの固定価格買取制度のことを指します。企業や家庭から発電された再エネ電気を、国が定めた価格で電力会社が買い取ることを義務付ける制度です。日本の低いエネルギー自給率を改善させるべく、このFIT制度が導入されました。

FIP制度(Feed-in-Premium)

「FIP制度(Feed-in-Premium)」とは、2012年に始まったFIT制度に加え、2022年度より新たに加わる制度です。発電事業者が電力取引市場で自由に売買し、そこで得た収入に補助額(プレミアム)を上乗せする仕組みです。発電事業者が売電収入だけでなくプレミアムによる収入も得ることで、投資インセンティブを確保することが可能です。

FIT制度とFIP制度について、詳しくは下記の記事をご参照ください。

コーポレートPPAと自己託送の違い

本章では、コーポレートPPAと自己託送の違いについて詳しく説明していきます。

コーポレートPPA(フィジカル)

コーポレートPPAとは、企業(電力需要家)が発電事業者から再生可能エネルギー由来の電力を固定価格で長期間購入する電力購入契約で、初期投資不要で太陽光設備を導入・利用できる仕組みです。日本では電気事業法によって、需要家は発電事業者から直接電気を購入することはできないため、小売電気事業者を介して再エネ電力を調達する仕組みとなります。

自己託送(自社所有)

自己託送とは、太陽光発電の設置場所を確保できない場合でも、送配電事業者の送配電設備を利用することによって、遠隔地の太陽光発電設備で発電した電気を自社施設または自社グループの施設へ送電し再生可能エネルギーを利用できる仕組みです。自社所有モデルでは、需要家が遠隔地に太陽光発電所を所有し、発電した再エネ電力を送配電ネットワークを利用して需要地点(自社工場など)へ送電(託送)します。

自己託送貸借モデル(第三者所有)

自己託送貸借モデル(第三者所有)とは、発電事業者が開発した太陽光発電所を需要家が貸借し、発電した電力を自己託送する貸借モデルです。需要家は太陽光発電所の設置にかかる初期費用の負担なく、自己託送による再エネの直接利用が可能になります。太陽光発電所の自社所有にハードルがある企業におすすめの仕組みです。

オンサイトPPA/オフサイトPPAのメリット・デメリット

本章では、フィジカルPPAである、オンサイトPPAとオフサイトPPAのメリット・デメリットについて詳しく説明していきます。

オンサイトPPA

オンサイトPPAとは、再エネ利用者(需要家)の敷地内(特に工場屋根)に太陽光発電設備を設置する仕組みです。近年日本では比較的普及している太陽光発電の導入方法で、管理や費用面での手軽さが特徴です。

メリット

ここでは、オンサイトPPAの主要な3つのメリットを紹介します。

  • 経済的な負担の軽減
  • 契約や利用の容易さ
  • ブランド構築

オンサイトPPAでは、他のコーポレートPPAと比べて大きく費用を抑えることができます。これは、太陽光発電を設置するのに本来かかる初期費用を発電事業者が負担するためです。発電設備を自社の敷地内に設置することができるため、送配電の費用もかかりません。

また、発電設備の建設、運転、保守に責任を持つのも発電事業者です。太陽光発電は慎重な管理が必要となりますが、発電事業者にこれらを委託することで企業側のリスクを抑えることができます。

さらに、オンサイトPPAの導入は企業のイメージアップにも繋がります。環境への意識が高まりつつある昨今では、環境への取り組みは企業にとって必須の課題です。オンサイトPPAにより太陽光発電を導入することで、環境保全への取り組みをアピールすることができます。

デメリット

オンサイトPPAはメリットの多い仕組みですが、いくつかデメリットも存在します。

  • 契約は長期間
  • 発電設備の交換・処分ができない
  • 設置場所の確保

まず、契約期間が長いため柔軟な対応を取りにくいことが挙げられます。通常、PPAの契約期間は10年から25年間です。その間は一定の価格で電力を購入しなければならないため、価格を見直したいと思っても途中で変更することができません。ただ、その期間中は全てのメンテナンスが含まれるという利点もあります。

また、自由に発電設備を交換・処分することができません。太陽光発電設備の所有者は発電事業者です。そのため、契約期間中に設置場所の変更やパネル交換などを企業の独断でおこなうことはできません。

そして、設置場所の確保の問題もあります。オンサイトPPAでは、設備が自社の敷地に収まる必要があるため、設置規模には限りがあります。大量に電力を使用する施設では、必要な電力量を設備からの供給量では賄いきれない場合があります。

オフサイトPPA

オフサイトPPAとは、自社の敷地内に発電設備を設置するオンサイトPPAとは反対に、電力を利用する場から離れた敷地に発電設備を設置する仕組みです。発電した再エネ電力は、送配電ネットワークを介して需要家のもとに届き、需要家は送電にかかる手数料(「託送料金」)を電力会社に支払います。「自己託送」システムを活用した電力購入契約です。

メリット

ここでは、オフサイトPPAの主要な3つのメリットを紹介します。

  • 長期的に見れば経済的
  • 敷地外の発電が可能
  • ブランド構築

託送料金のかかるオフサイトPPAは、オンサイトPPAと比べて費用がかかりますが、電気代削減効果を期待できる可能性もあります。オンサイトPPAとは異なり、設置規模を拡大しやすいため、発電規模によっては、1kWh当たりの電気代を抑えることができるのです。

また、オフサイトPPAでは自社で敷地を用意する必要がありません。そのため、大規模な設備を設置しやすく、大量の電気を供給することができます。電力の供給量を増やしたい、自家消費量を増やしたい企業にとっては、オフサイトPPAは導入メリットの多い仕組みです。

そして、オンサイトPPAと同様、再生可能エネルギーの導入、環境保全への貢献をアピールすることで企業のイメージアップ、環境に配慮した企業としてのブランド構築に繋がります。

デメリット

オフサイトPPAには主にコスト面でデメリットも存在します。2つのデメリットについて詳しく解説していきます。

  • インバランス料金
  • 送電コスト

オフサイトPPAで発電した電気を自社の工場などへ送電する場合、事前に30分毎の送電量の計画を送配電事業者(電力会社)へ提出しておく必要があります。もし提出した送電量の計画と実際の送電量に差が生じた場合は、「インバランス料金」と呼ばれる費用を送配電事業者に支払わなければなりません。

また、オフサイトPPAでは、オンサイトPPAと異なり、送電コストである託送料金が追加でかかります。この託送料金は電力会社によって異なり、例えば東京電力なら基本料金として使用電気量1kWにつき555円50銭、さらに1kWhにつき2円59銭の電力使用量を設定しています。

オンサイトPPA・オフサイトPPAについては下記の記事でも詳しく説明しています。

コーポレートPPAに関する日本と海外の違い

日本では、海外と比べてコーポレートPPAが普及しているとはいえません。これは、日本と海外の制度の違いが関係しています。

日本では、電気事業法によって、国に登録した小売電気事業者しか需要家に電力を販売することができません。つまり、発電事業者が企業(需要家)と直接コーポレートPPAを結ぶことができない決まりになっているのです。一方、海外では発電事業者が需要家に直接電気を供給することができます。この制度の違いが日本と海外の大きな違いであり、日本でコーポレートPPAの普及が遅れている理由でもあります。

ただし、日本でも小売電気事業者が仲介役になれば海外と同様にコーポレートPPAを結ぶことができます。そのため、日本で可能なコーポレートPPAの契約形態は、オンサイトPPAと小売電気事業者を仲介したオフサイトPPA・バーチャルPPAということになります。

まとめ|コーポレートPPAのスキームを把握して再エネ導入

コーポレートPPAは日本でも徐々に導入が進んでおり、企業は再生可能エネルギーによる電力を長期にわたって安定的に調達することができるというメリットがあります。温室効果ガスの削減は今や必須の課題ですが、削減手段の一つとしてコーポレートPPAを考えてみてはいかがでしょうか。

またこのwebメディアを運営している、株式会社ECOLOGICAでは、グリーンプロジェクトとして国内外の自社拠点に太陽光発電由来の再エネ電源導入を企画検討されている国内企業に対し、さまざまなサービスを提供、支援をおこなっています。ECOLOGICAは、世界最大級の太陽光専門商社PROINSOグループの日本総代理店です。温室効果ガスの排出量削減手段として、再生可能エネルギーの導入(特に海外拠点の再エネ調達)を検討している、という方は、こちらからお問い合わせください。

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