交通・運輸部門において、E‐モビリティを最大限に活用するには?世界銀行が発表
運輸部門は、現在エネルギー関連の温室効果ガス排出量の4分の1以上を占めています。
この現状を鑑みると、電気によって稼働する電気自動車などのE‐モビリティは、持続可能な運輸手段を提供し各国が持続可能な開発目標と脱炭素化目標の達成に貢献すると考えられます。
世界銀行は、先月の報告会においてこのE‐モビリティを最大限に活用するための4つの方法を紹介しました。
今回発表された報告書は、持続可能なE‐モビリティを促進するための、地域に適した公共政策を促進するために、世界、国、地方の意思決定者に政策提言を行っています。
世界銀行の議論により、E‐モビリティの課題と活用法が明らかに
報告書のバーチャル発表会では、国際金融公社(IFC)の主席産業専門家であるJohn Graham氏が司会を務め、輸送・交通部門において、持続可能なE‐モビリティの開発をいかにして促進するかに焦点が当てられました。
ここでは、その議論から得られた4つの重要事項をご紹介します。
1. E-モビリティが導入されるのは電気自動車だけではない
E‐モビリティを導入する際には、自動車に限らずすべての交通手段を考慮する必要があります。
状況によっては、E-モビリティは、自動車からE-バイクやE-バスなど、より安価で効率的な交通手段にシフトするでしょう。ブルームバーグ・ニューエナジー・ファイナンスの先進的な交通手段の責任者であるColin McKerracher氏は、現在のデータをもとにこう述べます。
「現在、世界のバス車両の16%(50万台)がすでに電動化されており、電動2・3輪車は1億9,000万台(電動バイクを除く)と、世界の電動車両の中で最大のシェアを占めています。電動モビリティの可能性を最大限に引き出すためには、さまざまな交通機関が持つメリットを捉えなければなりません。」
2. 開発途上国でのE‐モビリティ普及を視野に入れる
裕福な国が、自国の人口のために持続可能なモビリティを導入する一方で、新興国には汚染された古い自動車を輸出し続けるという状況を作り出すことでは、交通機関からの温室効果ガス排出という課題を解決することはできません。
非営利団体Climate Works FoundationのMonica Araya氏は、途上国が 「南部産のイノベーション 」を活用することを強く提唱し、チリがバスの電動化に成功した事例を紹介しました。
3. 電池の生産量増加を活かしてコスト節約
ここ数年、電池の生産量の増加に伴い、世界的に電池の価格が下がっています。Colin McKerracher氏は、リチウムイオン電池の生産量が2倍になるたびにコストは約18%削減されることを指摘しました。彼は、今後5〜6年はコストが下がり続けると予想しながらも、長期的なリサイクル・廃棄コストを含めた総費用を算出することの重要性を強調しています。
4. 部門横断的な政策アプローチが必須
E‐モビリティの気候変動対策へのメリットを最大限に生かすためには、部門を超えた協力と一貫性のある政策が必要です。交通政策では持続可能なモードをサポートし、エネルギー部門ではより環境負荷の低い電源の提供に努め、都市開発では不必要な移動を減らす小規模な都市を推進する必要があります。世界銀行のシニア・エネルギー・スペシャリストであるIvan Jacques氏は、「E‐モビリティの普及は複数の部門にまたがる話であり、調整が非常に重要です。」と述べています。
E‐モビリティが今後も普及していくことは間違いありません。各国が上記のポイントを意識して開発に努めれば、電動化は、環境に優しく、すべての人にとって安全で効率的な運輸・交通への移行を促進することができるでしょう。
参考記事:Climate: How can we make the most of electric vehicles? | World Economic Forum (weforum.org)