マテリアリティ(重要課題)とは?SDGsとの関係と企業事例10選

bannar

マテリアリティとは、組織における「重要課題」を意味し、各企業が社会において重点的におこなう活動の優先順位を示したものです。狭い意味では財務報告で使われる用語ですが、広い意味では、長期ビジョンやSDGsの取り組み等を策定する際に課題(マテリアル)を特定・開示し、自社が社会に与える影響・リスクについて、ステークホルダーに説明するものになります。この記事では、マテリアリティについて、その概要やSDGsとの関係、重要視されるに至った背景、特定のプロセス、さらに国内企業の事例について解説します。

目次

マテリアリティ(重要課題)とは

マテリアリティ(重要課題)とは、企業が、社会のさまざまな課題の中で重点的に取り組んでいることについて優先順位を付けたものです。「企業にとっての重要性」と訳されることもあり、現在、日本でもさまざまな企業がマテリアリティを公表しています。

マテリアリティは、主に企業がSDGsに対してどのように取り組んでいるかをアピールする際に使用します。マテリアリティを設定することによって、「SDGsの、どの項目を重要視しているのか」、「どういったプロセスでその取り組みをおこなうのか」、「その取り組みが社会に与える効果はどういったものか」など、SDGsへの取り組みを掘り下げ、ステークホルダーに向けてより明確で具体的な情報を公開することができるのです。

マテリアリティが重要視される背景

マテリアリティはもともと、投資家に向けて財務報告に使用されていたものでした。しかし、近年企業が社会問題や環境問題に取り組む必要性が高まりつつあることを背景に、非財務指標情報である環境経営やCSV(※1)への取り組みも重要視されてきています。

※1 CSVとは

「CSV」とは、Creating Shared Valueの略であり、「共通価値の創造」を意味しています。企業においての「経済的な価値」だけではなく、社会と企業の「共通の価値」を生み出していくことを示しています。

マテリアリティを設定する際の代表的な基準

マテリアリティを設定する際、主な基準には下記の3つがあります。どれも国際的な標準とされており、信用度の高いものになります。

GRIガイドライン

GRIガイドラインとは、国際的な非営利団体GRIが策定したサステナビリティに関するガイドラインのことです。企業が、自社の事業活動が社会問題に与える影響に対して責任を持ち、社会貢献活動を加速させることを目的としています。GRIの基準は「GRIスタンダード」と呼ばれ、世界中でサステナビリティレポートに用いられています。

最新のGRIガイドラインはこちらからご覧ください(英語版)。

>>GRI – Universal Standards (globalreporting.org)

IIRCのマテリアリティ

IIRCは、International Integrated Reporting Council(国際統合報告評議会)の略称で、2010年にGRIが母体となって設立された非営利団体です。企業業績などの財務情報に、企業が環境保全などの社会貢献活動にどの程度取り組んでいるか、といった非財務情報を加えてまとめたフレームワーク「統合報告(Integrated reporting)」を開発しています。

統合報告書はこちらからご覧ください(日本語訳)。

>>International_IR_Framework_JP.pdf (integratedreporting.org)

SASBのマテリアリティ

SASBは、Sustainability Accounting Standards Board(サステナビリティ会計基準審議会)の略称です。SASBスタンダードという基準を設け、ESG情報開示の効率化を進めています。SASBスタンダードは投資家を対象としているため、GRIスタンダードと比べて内容が細かく定められています。

SASBスタンダードについては、下記のリンクよりご覧ください。日本語版のダウンロードも可能です。

>>Download SASB Standards – SASB

マテリアリティ特定のプロセス

マテリアリティを特定する際には、どのようなプロセスを踏む必要があるのでしょうか。順を追って説明いたします。

  1. 全社を挙げて取り組む土台作り

まず初めに、全社を挙げて社会問題を解決しよう、というモチベーションを高めることが重要です。経営層が事業の目標に社会問題の解決を含めることを決定し、全社に周知しましょう。全社的に取り組む土台作りをおこないましょう。

  1. 課題の洗い出し

次に、自社に関係する課題を洗い出しましょう。企業の主要な事業に合致した課題を見つけ出すことが重要です。ここでは、ステークホルダーの目線に立って考えることが大切です。

  1. 課題の優先度を決定(マテリアリティの特定)

自社にとっての優先度、そしてステークホルダーにとっての優先度という2つの観点から、重要なマテリアリティを特定します。これについては、図1のようなマトリックスを用いて可視化するのが良いでしょう。

画像引用:マテリアリティ(重要性)とは?企業価値向上にマテリアルな課題を見つける方法 | トークンエクスプレス株式会社 (token-express.com)
  1. マテリアリティを公開

特定されたマテリアリティを、自社のホームページなどで公開します。マテリアリティのみならず、その特定の過程や取り組みの進捗状況、評価の有効性についても記述しましょう。

公開した後、ステークホルダーからさまざまなフィードバックが得られます。受け取った意見をもとに、マテリアリティを柔軟に修正していくことも重要です。

マテリアリティの企業事例

企業は、実際にどのようなマテリアリティを公開しているのでしょうか。本項では、国内の企業事例をご紹介します。

ソフトバンク

電気通信事業者のソフトバンクは、「すべてのモノ・情報・心がつながる世の中を」をSDGs達成のためのスローガンに掲げ、情報技術を用いて社会を発展させるべく6つのマテリアリティを公開しています。

  1. DXによる社会・産業の構築
  2. 人・情報をつなぎ新しい感動を創出
  3. オープンイノベーションによる新規ビジネスの創出
  4. テクノロジーのチカラで地球環境に貢献
  5. 質の高い社会ネットワークの構築
  6. レジリエントな経営基盤の発展

参考資料

>>マテリアリティ(重要課題) | 企業・IR | ソフトバンク (softbank.jp)

住友商事

住友商事が事業精神の一つに掲げる「自利利他公私一如」。自社と社会がともに成長することを示すこのスローガンをもとに、同社は6つのマテリアリティを特定しています。

  1. 地球環境との共生
  2. 地域と産業の発展への貢献
  3. 快適で心躍る暮らしの基盤づくり
  4. 多様なアクセスの構築
  5. 人材育成とダイバーシティの推進
  6. ガバナンスの充実

参考資料

>>マテリアリティ(重要課題) | 住友商事 (sumitomocorp.com)

三井物産

三井物産は、人にモノを届けるという同社の主事業によって解決可能な課題を洗い出し、5つのマテリアリティを特定しています。

  1. 安定供給の基盤をつくる
  2. 豊かな暮らしをつくる
  3. 環境と調和する社会をつくる
  4. 新たな価値を生む人をつくる
  5. インテグリティのある組織をつくる

参考資料

>>サステナビリティ | 三井物産のマテリアリティ – 三井物産株式会社 (mitsui.com)

KDDI

KDDIは、「豊かなコミュニケーション社会の発展に貢献する」という企業理念を掲げ、情報技術を用いて社会を豊かにすることを目標に6つのマテリアリティを設定しています。

  1. 安全で強靭な情報通信社会の構築
  2. 情報セキュリティの確保とプライバシーの保護
  3. ICTを通じた心豊かな暮らしの実現
  4. 多様な人財の育成と働きがいのある労働環境の実現
  5. 人権尊重と公正な事業活動の推進
  6. エネルギー効率の向上と資源循環の達成

参考資料

>>マテリアリティ (重要課題) | サステナビリティ | KDDI株式会社

オムロン

電子部品や制御機器、ヘルスケア機器の製造・販売をおこなう株式会社オムロン。同社は、「事業を通じて社会価値を創出し、社会の発展に貢献し続けること」を企業の存在意義とし、5つのマテリアリティを設定しています。

  1. 事業を通じた社会的課題の解決
  2. ソーシャルニーズ創造力の最大化
  3. 価値創造にチャレンジする多様な人財づくり
  4. 脱炭素・環境負荷低減の実現
  5. バリューチェーンにおける人権の尊重

参考資料

>>サステナビリティマネジメント | オムロンのサステナビリティ | サステナビリティ | オムロン (omron.com)

三菱HCキャピタル

三菱HCキャピタルは、三菱UFJリースと日立キャピタルの統合によって2021年に誕生したリース会社です。銀行・商社とメーカーという異なる事業の融合によって、新たなビジネスを生み出すことを目的としています。同社は、持続的な企業成長を目指して、以下の6つのマテリアリティを公開しています。

  1. 脱炭素社会の推進
  2. サーキュラーエコノミーの実現
  3. 強靭な社会インフラの構築
  4. 健康で豊かな生活の実現
  5. 最新技術を駆使した事業の創出
  6. 世界各地との共生

参考資料

>>マテリアリティ(重要課題) | サステナビリティ | 三菱HCキャピタル株式会社 (mitsubishi-hc-capital.com)

伊藤忠テクノソリューションズ

伊藤忠テクノソリューションズは、3つのマテリアリティと、それぞれのマテリアリティについて具体的な行動目標を設定しています。労働環境の改善や気候変動への取組、情報技術の急速な発達により起こり得る情報格差や社会の不安への取組などを挙げています。

  1. ITを通じた社会課題の解決
  2. 明日を支える人材の創出
  3. 責任ある企業活動の実行

参考資料

>>マテリアリティ(重要課題) | CTC – 伊藤忠テクノソリューションズ (ctc-g.co.jp)

荏原製作所

精密・電子事業やポンプ・送風機事業に携わる荏原製作所。1912年の創業以来培ってきた技術力を社会貢献に役立てるため、5つのマテリアリティを設定しています。

  1. 持続可能な社会づくりへの貢献
  2. 進化する豊かな生活づくりへの貢献
  3. 環境マネジメントの徹底
  4. 人材の活躍推進
  5. ガバナンスの更なる改革

参考資料

>>マテリアリティ(重要課題) | 荏原製作所 (ebara.co.jp)

野村総合研究所(NRI)

コンサルティングやITソリューションに携わる野村総合研究所は、2017年、GRIやSASB(前項参照)をベースに4つのマテリアリティを特定しました。

  1. 地球環境への負荷低減
  2. 多様なプロフェッショナルが挑戦する場の実現
  3. 社会からの信頼を高める法令順守・リスク管理
  4. 社会のライフラインとしての情報システム管理

参考資料

>>マテリアリティ(重要課題) | サステナビリティ | 野村総合研究所(NRI)

東京ガス

東京ガスは、経営ビジョン「Compass2030」を踏まえて、2019年にマテリアリティを更新しました。同社は、エネルギー事業をリードする企業として、社会インフラを保ちながらネットゼロを達成することを目標に掲げています。

  1. 天然ガスを扱うリーディングカンパニーとしてCO2ネットゼロをリード
  2. 社会との良好な関係
  3. 責任ある企業としての行動

参考資料

>>東京ガス : マテリアリティ (tokyo-gas.co.jp)

まとめ|SDGsに準拠したマテリアリティを

マテリアリティの公開は、会社全体のSDGs達成へのモチベーションを高めるため、また優良企業として顧客に選ばれるために重要です。本記事でご紹介したプロセスに従い、SDGsに準拠したマテリアリティを特定しましょう。

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