航空業界がカーボンオフセットの「不正利用」を避けるには?
大手航空会社エティハド航空の最高経営責任者が、温室効果ガスの排出量を相殺するために使用するカーボンオフセットについて、間違った利用方法を選べばCO2削減という真の課題を回避してしまいかねないと指摘しました。
カーボンオフセット自体は温室効果ガス削減に有効ですが、それを用いる前に、航空業界での温室効果ガス排出を新しい燃料の開発などによって避けなければなりません。
カーボンオフセットは応急処置に過ぎないのか?
今月17日エティハド航空のCEOであるトニー・ダグラス氏は、ドバイ・エアショーでのインタビューで、今年のボーイング787型機1機分の7万トンの二酸化炭素排出量を、タンザニアの森林プログラムを購入することで相殺したと発表しました。
しかしダグラス氏は、カーボンオフセットは不正行為であると述べています。より持続可能な代替手段を持たない場合短期的には応急処置となりますが、長期的に見れば本質的な問題を避けているに過ぎないというのです。
このコメントは、排出権取引を管理する世界的な炭素市場の創設に向けて、先月末よりグラスゴーで開催された気候変動枠組条約第26回締約国会議(COP26)で合意された内容(Article 6)を受けたものです。航空業界への影響はまだ不明ですが、カーボンオフセット取引の基準が統一され、その利用範囲が広がる可能性があります。
航空業界がネットゼロを達成するには?SAFの問題点を解決する必要性
カーボンオフセットを批判する人たちの間でも、今後の方向性についてはほとんど意見が一致していません。Wizz Air社のCEOであるJozsef Varadi氏は、カーボンオフセットや持続可能な航空燃料(SAF)は、二酸化炭素の排出量を直接削減する水素や電気駆動の飛行機のような真の意味での変革技術に向けた進歩を妨げるものだと述べています。
ジェット燃料として使用されるケロシンの代わりに使用されるSAFは、代替燃料を作るために使用される木、作物、木の実、廃棄物などの原料とプロセスによって二酸化炭素を排出すると判明しています。
エティハド航空は、現在の航空機の排出量を削減する方法を検証してきました。SAFへの組み込み、飛行経路の最適化、地上処理装置の電動化、航空機による地球温暖化の影響を増幅させる飛行機雲の回避などです。同社は、2年前にボーイング787で開始したこのプログラムに、ドバイのエアバスSE・A350を加え、「グリーンライナー」と名付けました。
SAFの課題は、コストを下げることと、生産量を最小限のレベルから引き上げることです。グリーンライナーの最新のテストフライトでは、従来のジェット燃料と50対50で混合するのに十分な量のSAFを入手できなかったため、38%に抑えざるを得なかったようです。
今後環境負荷の低いSAFを開発するために、政府のさらなる資金援助が求められています。課税や飛行制限など、飛行機の利用を減らすような施策ではなく、SAFや電気航空機の研究、適切なカーボンオフセットなど、温室効果ガスを排出しない航空移動を模索しなければなりません。
参考記事
>>‘It’s cheating’: Etihad CEO’s frank admission on carbon offsets (smh.com.au)