グリーンボンドとは?企業と投資家のメリット・デメリットを解説
グリーンボンドとは、企業や地方自治体等が、国内外のグリーンプロジェクトに要する資金を調達するために発行する債券のことです。ESG投資とも深く関係があり、環境問題が深刻化すると共に関心が高まっています。この記事では、環境省のグリーンボンド発行促進プラットフォームを中心として、企業と投資家双方のメリット・デメリットとスキーム・プロセスの解説、そしてグリーンボンドを発行している企業・自治体・法人の紹介をします。
グリーンボンドとは?
グリーンボンドとは、企業や地方自治体等が、国内外のグリーンプロジェクト、すなわち気候変動をはじめとする環境問題を解決するための活動に要する資金を調達するために発行する債券のことです。これは、国際資本市場協会(ICMA)が発行するガイドラインである、グリーンボンド原則を満たしています。
この原則は、
- 調達資金の使途
- プロジェクトの評価と選定のプロセス
- 調達の管理
- レポーティング
の4つの要素を持っており、この要素を全て満たしていなければグリーンボンドとは言えません。
また、ESG投資やSDGsへの関心の高まりとともにその発行数を増やしています。
グリーンボンドとESG投資の違い
グリーンボンドもESG投資も、環境問題を解決することにつながるという点は共通しています。上述の通り、グリーンボンドは企業側が発行する債券のことです。一方、ESG投資は環境に配慮した活動をおこなう企業に対して優先的に投資をおこなう手法です。ただし、投資家がESG投資の一環として、グリーンボンドを購入することはできます。
グリーンボンド4つの種類
グリーンボンド原則を定めているICMAは現在、グリーンボンドを4つに分類しています。この章では、それぞれの特徴について解説します。
標準的グリーンボンド(Standard Green Use of Proceeds Bond)
標準的グリーンボンドはグリーンボンド原則に適合する標準的な債券です。グリーンボンドを持つ投資家は、期日になれば発行元である企業や地方自治体から元本と利子を合わせた金額を受け取ることができます。この際に使われるお金は、グリーンプロジェクト以外の事業から得たもので構いません。
グリーンレベニュー債(Green Revenue Bond)
グリーンレベニュー債もグリーンボンド原則に適合する債券ですが、標準的グリーンボンドとの違いは、債券の原資が公的なグリーンプロジェクトからのキャッシュフローであり、また調達される資金の使途は、原資との関係性の有無を問わないグリーンプロジェクトであることです。
グリーンプロジェクト債(Green Project Bond)
グリーンプロジェクト債は、1つか複数のグリーンプロジェクトによる収入によって投資家への返済をおこないます。
グリーン証券化債(Green Securitised Bond)
グリーン証券化債は、1つか複数のグリーンプロジェクトを裏付け資産としています。返済は、この資産からの収入によっておこなわれます。
グリーンボンド発行のスキーム
この章では、環境省が公開するグリーンボンド発行の一般的スキームに基づいて解説をしていきます。
まず、発行体と呼ばれる企業や自治体、金融機関などがグリーンボンドを発行します。これによって得た資金で、グリーンプロジェクトをおこないます。このとき外部レビュー機関によって、発行によって集めたお金がきちんとグリーンプロジェクトに使われているか、そのプロジェクトは環境問題改善につながっているのかなどについて評価されることがあります。また、発行されるグリーンボンドに対して発行条件の提案をおこなったり、発行体から買い取って代わりに販売したりするのが、証券会社を始めとするアレンジャーです。ESG投資をおこなう機関投資家や個人投資家は、アレンジャーからグリーンボンドを購入し、利子や元本の返済という形で発行体からお金を受け取ることになります。
参照:https://greenfinanceportal.env.go.jp/bond/structure/inssuance_scheme.html
グリーンボンド発行のプロセス
この章では、透明性向上のための重要な推奨項目とされるグリーンボンド発行のプロセスを解説していきます。グリーンボンド発行のプロセスには、使い道の決定、投資家への事前説明、資金の管理、レポーティング、外部機関によるレビューという大きく分けて5つの項目があります。これから、それぞれの項目について説明します。
1.調達資金の使途
まずは、グリーンボンドを発行したことで手に入る資金をどのようなグリーンプロジェクトに使うかを決定する必要があります。環境省は具体的に以下のような事業を挙げています。
- 再生可能エネルギーに関する事業
- 省エネルギーに関する事業
- 汚染の防止と管理に関する事業
- 自然資源・土地利用の持続可能な管理に関する事業
- 生物多様性保全に関する事業
- クリーンな運輸に関する事業
- 持続可能な水資源管理に関する事業
- 気候変動に対する適応に関する事業
- 環境配慮製品、環境に配慮した製造技術・プロセスに関する事業
- グリーンビルディングに関する事業
このような事業をおこなう上で重要なのが、事業を進めることが生態系の破壊や水質汚染といった別の環境問題になるべくつながらないようにすることです。
多くの発行体は、グリーンボンド原則に基づきウェブサイト上で目論見書などを公開し、調達した資金の使い道を投資家に説明しています。
ただし、これから開始される事業のみならず、すでに進められている事業のためのグリーンボンドも発行することができます。具体的には、金融機関から受けた融資の返済や以前発行した債券の払い戻しをおこなうために発行したり、金融機関がグリーンプロジェクトへの融資をおこなうために発行したりする場合が想定されます。
2.プロジェクトの評価及び選定のプロセスに関する投資家への事前説明
調達した資金の使い道が決定したら、グリーンボンドを購入してもらうために投資家への丁寧な説明が求められます。その際に、目標(Objective)・規準(Criteria)・プロセス(Process)の3つにきちんと言及することが重要です。
まず目標の項目では、そのグリーンプロジェクトによって見込まれる結果や自社事業との関連性について明確に示します。
次に説明すべきなのは、設定した目標に対するアプローチとしてグリーンプロジェクトの内容が適切か評価するための具体的な規準です。そのグリーンプロジェクトを進める中で生じうる環境や社会への悪い影響を発見し予防するための排除規準なども、これに含まれます。
ここで設定した規準によって実際にプロジェクトの評価・選定がおこなわれます。どの部署が検証・評価するのかという選定プロセスも投資家に公開する必要があります。
3.調達資金の管理
投資家への説明を終え、無事資金調達が完了したとします。しかし、この資金がきちんとグリーンプロジェクトに使われていなければ意味がありません。会計上で勘定科目をさらに細かく分類する補助科目を自主的に設けたり、社内システムを活用したり、グリーンボンドによって調達した資金だけを入金した口座を開設したりして、該当プロジェクト以外に使われることがないよう徹底的に管理しなければなりません。投資家への払い戻しが完了するまでは、このような方法でグリーンプロジェクトに伴う支出が調達資金を下回ることがないようにします。そのため、少なくとも年に1度はプロジェクトに実際に使った資金とこれから使う資金の合計額が調達資金の合計額以上となっているかを調査すべきとされています。
また、投資家にとって発行体が正しく資金を使っているのかは重要なため、調達資金の管理方法も事前説明が不可欠です。このとき、資金の使い道が未定であったり、プロジェクトがまだ開始されなかったりするにもかかわらず資金調達が完了してしまった場合には、その資金をプロジェクト開始までどのように運用するかなども公開すべきです。
4.レポーティング
グリーンボンド発行後も発行体は、投資家に向けてプロジェクトについての最新情報を提供します。これをレポーティングと呼びます。調達資金を使い切るまでは少なくとも年に一度は定期的な進捗報告をする必要があり、使い切る前はもちろんのこと使い切った後も大きな動きがあった場合には情報開示することが求められています。定期的な進捗報告では、事業の概要と現在の状況や環境改善の実績、これまでに使った資金額などを公開します。環境改善の実績については、事業区分に沿った客観的な指標を利用して説明すべきです。また、大きな動きの具体例としては、資金の使い道であった資産や事業を手放したり、事業の過程でトラブルが発生したりといったことが考えられます。
5.外部機関によるレビュー
環境改善の実績について、適切な指標を導入し自社で評価をおこなうこともできますが、外部機関による評価を活用することでより客観的な情報を投資家に提供できます。外部機関によるレビューを受けるタイミングは発行前と発行後です。発行前の評価は、発行予定のグリーンボンドがグリーンボンド原則に沿ったものであるかについてであるのに対し、発行後の評価は、調達した資金が正しく使われているかや事業がどれくらい環境問題の改善につながっているかについてとなります。このようにして外部の評価を受けた場合も、投資家に対してその結果を公開しましょう。その際、依頼する機関によって評価対象や評価方法が異なるので、外部機関が設定する評価規準についてもあわせて説明する方がより投資家からの理解を得られるでしょう。
グリーンボンドのメリット
ここまで、グリーンボンドとは何か、発行方法や発行する上で注意したいことなどについて説明してきましたが、この章ではグリーンボンドを発行したり購入したりすることにどんなメリットがあるのかそれぞれ説明していきます。
企業のメリット
まずは、企業がグリーンボンドを発行することにどのようなメリットがあるのでしょうか。
サステナビリティ経営の高度化
グリーンボンドを発行する上で、客観的な評価を得られる環境改善の実績を出すのはもちろんのこと、資金管理を徹底し投資家へ透明性の高い情報を提供することが重要です。これらを実践することで、環境問題の解決のみならずESG経営も実現できます。
同時に、TCFDなど外部機関からの評価を受けることができ、企業価値の向上につながるでしょう。
グリーンプロジェクト推進による社会的支持の獲得
グリーンボンドを発行することで、環境問題解決への前向きな姿勢を社会に示すことができます。これにより、社会に貢献している企業として支持を得ることができます。
新たな投資家との関係構築による資金調達基盤の強化
現在、目先の利益などに左右されず、長期的な目線で投資対象を決定するESG投資家が増加しています。グリーンボンドの発行によって今までとは違うESG投資家という層を呼び込むことで、資金調達基盤を強化することができます。
比較的好条件での資金調達の可能性
環境問題に取り組む事業者の中には比較的新しい企業もあり、昔からの大企業より金融機関とのつながりが薄いために融資を受けるのが難しいことがあります。このような場合は、自社のウェブサイトなどを通じて投資家に直接グリーンプロジェクトについて発信し、グリーンボンドを発行する方が、比較的好条件で資金を調達できる可能性もあり、有効です。
投資家のメリット
続いて、グリーンボンドを企業や地方自治体などから購入する投資家にはどのようなメリットがあるのか見ていきましょう。
ESG 投資の一つとしての投資
グリーンボンドを発行する企業が社会的に評価されるのと同様に、ESG投資の1つとしてグリーンボンドを購入することは社会的な評価につながります。
投資を通じた投資利益と環境面等からのメリットの両立
グリーンボンドは債券であるため、利子という形で安定的な利益を得ることができます。と同時に、間接的に環境問題解決ひいてはSDGsの実現に貢献することができます。
グリーンプロジェクトへの直接投資
パリ協定をきっかけに、世界全体で気候変動対策の機運が高まっています。
この影響で、温室効果ガス排出量削減につながるグリーンプロジェクトは投資対象として非常に注目されています。グリーンボンドを購入することで、このような事業に直接投資できます。
オルタナティブ投資によるリスクヘッジ
オルタナティブ投資とは、上場株式や債券といった伝統的資産ではない投資対象や投資方法を意味します。グリーンボンドは債券の一種ですが、グリーンボンドによって集められた資金の使い道がグリーンプロジェクトに限定されているため、伝統的資産とは言えません。オルタナティブ投資は一般に、伝統的資産の値動きに影響されにくく、株式市場が大幅に下落していても、連動して値段が下がることは少ないとされています。よって、投資家がグリーンボンドを購入することは、投資リスクの分散につながります。
グリーンボンドのデメリット
多くのメリットを有するグリーンボンドにも、いくつかデメリットがあります。
この章では、発行体である企業にとってのデメリット、購入する投資家にとってのデメリットに分けて解説します。
企業のデメリット
グリーンボンドを発行することには、ESG経営につながったり、金融機関からの投資代わりになったりとさまざまなメリットがあります。一方で、いくつかのデメリットが存在するのも事実です。
調達資金の使途がグリーンプロジェクトに限定される
グリーンボンドは、使い道がグリーンプロジェクトに限定された債券です。逆に言えば、せっかく調達した資金もほかの自社事業に利用することは許されません。投資家へ常に使い道を公開することも同時に求められているため、不正利用は許されません。
グリーンボンド発行に手数料がかかる
グリーンボンドは、グリーンボンド原則を満たしているか発行前に外部からの評価が必要になります。発行後も、調達資金の利用状況や環境改善の実績などに対して外部機関の調査が入ります。この際に、手数料が発生する可能性があります。
投資家のデメリット
次に、債券として利益を得られると同時にESG投資をおこなえるといったメリットがある投資家にとってのデメリットとはなにか解説します。
グリーンウォッシュ債券である可能性
もちろんグリーンボンドは発行前にグリーンボンド原則を満たしているか外部機関の調査が入ることはあります。さらに発行後も資金がグリーンプロジェクトに利用されているのか、環境改善効果はでているのかについて情報公開が求められます。
しかし、グリーンボンド原則はあくまでも自主的なものに過ぎず、遵守していないグリーンボンドがいてもおかしくありません。
例えば、本当は環境改善効果のない事業の資金調達をグリーンボンドでおこなったり、資金をグリーンプロジェクト以外のことに不正利用したりといったことが考えられます。このような債券をグリーンウォッシュ債券と呼びます。このような債券を誤って購入しないためにも、発行体の情報開示を注意深く読まなければなりません。
グリーンボンドを発行している企業・自治体・法人10選
この章では、実際にグリーンボンドを発行している企業・法人のグリーンボンドについて、公開しているそれぞれのウェブサイトを紹介します。どのような発行体がいて、どのような事業をおこなっているのか見てみましょう。
まとめ|グリーンボンドを発行してグリーンプロジェクトの資金調達を
グリーンボンドとは、企業や地方自治体等が、国内外のグリーンプロジェクト、すなわち気候変動をはじめとする環境問題を解決するために、活動に必要な資金を調達すべく発行される債券になります。いくつか注意しなければならない点はありますが、発行体にとっても投資家にとってもメリットのある債券です。グリーンプロジェクトの資金調達の際にはぜひグリーンボンドを活用してみましょう。
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