J-クレジット制度をCDP・SBT・RE100に活用する方法【再エネ証書/国際イニシアチブ】
地球温暖化防止のため、CO2などの温室効果ガスの排出量削減に向けた企業の取り組みはさまざまです。この記事では、J-クレジット制度を中心として、グリーン電⼒証書や非化石証書などの再エネ証書を、CDP・SBT・RE100などの国際イニシアチブへの報告に活用する方法について解説します。
再エネ証書と国際イニシアチブ
ここでは、再エネ証書の意味とその種類、そして3つの国際イニシアチブについて解説します。
再エネ証書
再エネ証書とは、太陽光発電など温室効果ガスを排出しないクリーンなエネルギーについて、その「環境価値」を目に見える証書の形にしたものになります。「環境価値」は、再生可能エネルギーの持つ環境保全に貢献し得るという価値を表す用語です。
再エネ証書には、Jクレジット、グリーン電力証書、非化石証書の3つがあります。各再エネ証書について詳しく説明した後、それぞれの違いを図で示します。
J-クレジット
まずは、証書を国際イニシアチブに利用するために用いる制度、Jクレジットについてご説明します。
この制度は、植林や再生可能エネルギー導入などの環境保全活動による温室効果ガスの削減量を国が認証するものです。農林水産省や環境省等によって運営され、創出されたクレジットは、企業がやむを得ず排出した温室効果ガスを埋め合わせる(カーボンオフセット)ために購入します。これによって、企業は購入額分の温室効果ガスを削減したとみなされるのです。
グリーン電力証書
グリーン電力証書は、再生可能エネルギー(グリーン電力)の持つ「環境価値」を証書として売買できる形にしたものです。企業や自治体がこの証書を保有することで、その団体が使用する電力が再生可能エネルギーから生み出されたものであることを証明します。
非化石証書
非化石証書は、化石燃料を用いない再生可能エネルギー由来の電力について、その「環境価値」を証書として売買できる形にしたものです。従来は購入者が小売電気事業者に限られていましたが、2021年11月より需要家も購入できるようになりました。
国際イニシアチブ
国際イニシアチブとは、地球温暖化問題に歯止めをかけるために、複数の個人・団体が加盟して温室効果ガス削減を目指す取組のことです。今回は、特に有名なCDP、SBT、RE100の3つについてご説明します。
CDP
CDPは、英国の慈善団体が管理する非政府組織(NGO)であり、投資家、企業、国家、地域、都市が自らの環境影響を管理するためのグローバルな情報開示システムを運営しているイニシアチブです。企業に温室効果ガス排出量など環境保全に関する質問書を提出させ、その結果を投資家に公開します。企業にとっては、CDPで良い評価を得ることで投資を受けられるというメリットがあります。
質問書の内容やAリスト(良い評価を受けた企業のリスト)に載る条件等について、詳しくは下記の記事をご参照ください。
SBT
SBTは、「Science Based Targets」の頭文字を取ったもので、日本語では「科学的根拠に基づいた目標」と訳すことができます。SBTに加盟した企業は、温室効果ガス排出量の削減目標を、科学的根拠に基づいて具体的な数値で公表します。
企業の事業に関わる、生産から使用、廃棄まですべての過程(サプライチェーン)で排出される温室効果ガス排出量が対象です。
加盟の手順やメリット等について、詳しくは下記の記事をご参照ください。
RE100
RE100は、「Renewable Energy 100%」の略で、企業や自治体などの団体が、事業で用いる電気の100%を再生可能エネルギーで賄うことを目標に掲げるイニシアチブです。加盟した企業には、年に一度再生可能エネルギー導入に関する活動報告書を、「The Climate Group」という気候変動対策を目標に組織された非営利団体に提出する義務があります。
メリットや参加条件、国内の参加企業等について、詳しくは下記の記事をご参照ください。
RE100は加盟するための条件が厳しく、中小企業にとっては参加が難しいイニシアチブです。中小企業向けには、「再エネ100宣言 RE Action」という参加の条件を緩めたイニシアチブがおすすめです。詳しくは下記の記事をご参照ください。
再エネ証書と国際イニシアチブとの対応関係
前項では、3種類の再エネ証書と国際イニシアチブについてご説明しました。本項では、再エネ証書と国際イニシアチブの間にどのような対応関係があるのかについて述べていきたいと思います。まずは、下の表をご覧ください。
CDP | SBT | RE100 | |
---|---|---|---|
再エネ電力由来J-クレジット | 〇 | 〇 | 〇 |
再エネ熱由来J-クレジット | 〇 | 〇 | ー(熱は RE100 の対象外) |
グリーン電力証書 | 〇 | 〇 | 〇 |
グリーン熱証書 | 〇 | 〇 | ー(熱は RE100 の対象外) |
非化石証書 | 〇 | 〇 | △(政府によるトラッキング付き非化石証書のみ) |
CDP、SBTではどの種類の証書も用いることができるのに対し、電力に特化したイニシアチブであるRE100では、熱由来の証書は用いることができません。また、非化石証書に関しては、政府による発電所の所在地などのトラッキングのついた非化石証書のみがRE100の対象となります。
J-クレジット制度をCDP・SBT・RE100に活用する方法
クレジット制度を実際にCDP・SBT・RE100に活用するには、具体的にどうすれば良いのでしょうか。ここでは、購入したクレジットの無効化が必要となります。本項では、クレジットの無効化について3段階に分けて解説します。
本項では略説します。さらに詳しく知りたい方は下記の記事をご参照ください。
>>CDP・SBT・RE100での活用 | J-クレジット制度 (japancredit.go.jp)
1.クレジットを購入する
太陽光発電など再エネ電力由来のJクレジットはCDP、SBT、RE100に、バイオマスボイラーなど再エネ熱由来のJクレジットはCDPとSBTに使用することができます。
まずは、クレジットを入札取引によって購入しましょう。入札方法については下記の記事をご参照ください。
>>入札販売 | J-クレジット制度 (japancredit.go.jp)
2.購入したクレジットの無効化(償却)
クレジットを各種国際イニシアチブに使用するには、無効化(償却)処理を行う必要があります。下図のような申請書に必要事項を記入し、申請してください。
3.再エネ電力量・再エネ熱量を記載した書類を提出
現行の無効化通知書には、再エネ電力量や再エネ熱量を記載する箇所がありません。通知書に記載欄が追加されるまでは、Jクレジット制度事務局から発行される書類を用いてください。
発行を希望される場合は、以下のリンクから申請が可能です。
>>クレジット管理用口座 | J-クレジット制度 (japancredit.go.jp)
まとめ|J-クレジット制度を賢く活用
現在、企業向けにさまざまな国際イニシアチブがあります。これらに参加することで、企業のイメージアップ、延いては顧客の獲得、信頼構築に繋がります。J-クレジット制度を活用してイニシアチブに参加し、企業としてさらに成長していきましょう。