CCSはネットゼロ達成の鍵となるか?
将来のネットゼロ達成において、CCS(二酸化炭素の回収と貯留)が重要な役割を果たすと期待されています。
米国エネルギー省(DOE)は2022年5月5日、CCS事業に23億4000万ドルもの投資をおこなうと発表しました。石油メジャーもCCSの将来性に賭けており、アメリカ大手石油会社であるエクソンモービルは、2050年までに炭素回収の市場規模は4兆ドルに達すると推定しています。
CCSへの投資は必要か?
米国エネルギー省のジェニファー・グランホルム長官は、アメリカがCCSやクリーンエネルギー開発に投資する理由について、次のように述べています。「私たちの第一の優先事項は、クリーンで炭素排出ゼロのエネルギーを確実に供給することです。CCSはコストがかかりすぎるという批判もありますが、脱炭素化のためにできることであればそれはプラスといえるでしょう」また、グランホルム長官はさまざまなCCS企業や技術に多額の投資をおこなうことで、新たな技術革新による炭素回収の価格低下を期待しています。
そして今、ビル・ゲイツ氏など大物たちもCCSを支援し始めています。ゲイツ氏が設立したエネルギー技術投資ファンドである「ブレークスルー・エネルギー・ベンチャーズ(Breakthrogh Energy Ventures)」は、CCS開発のための5つの投資を発表しました。現在、石油やガス会社は化石燃料の生産を続けながら脱炭素化を目指すという理念によって、CCS技術を事業で使用するかどうかの選択が可能です。今後、世界各国の政府が炭素税を導入することにより、CCSがより一般的に使われるようになるでしょう。
多くの環境保護主義者は、CCS技術への投資を疑問視し、これを再生可能エネルギープロジェクトに充てた方がいいと指摘しています。しかしその一方、いくつかの国際機関はCCSの必要性を認識しています。IPCC(気候変動に関する政府間パネル)による2021年の報告書では、「二酸化炭素除去(CDR)は、ネットゼロを達成し、緩和が難しいとされる残留排出を相殺するために必要である」と述べています。
CCSのさらなる拡大へ
CCSへの関心と投資が高まるにつれて、世界各地でさまざまな革新が起こっています。イスラエルのHigh Hopes Lab社は二酸化炭素を回収する気球を設計し、これを9マイル上空に飛ばして炭素を回収・凍結をおこなっています。この気球は二酸化炭素を蓄積した状態で地上に落下し、産業用としての販売や、地中に汲み上げて安全に廃棄することが可能です。同社は、この技術を利用することでCCSのコストを大幅に削減できると考えています。
CCSの技術は急速に進歩していますが、二酸化炭素を地下に貯留することに伴う環境安全性はまだ確立されていません。現在、エネルギー企業はCCS活動に対する責任を放棄することができ、アメリカの場合、その責任は政府に移行します。
さまざまな企業がCCS技術を急速に向上させることで、より大規模かつ低コストで二酸化炭素を回収する革新的な方法を打ち出しています。アメリカ政府といくつかの大手エネルギー企業がCCS技術に多額の投資をおこなっているため、CCSは近い将来、世界中のエネルギー事業で当たり前の技術となることでしょう。
参考記事
>>https://oilprice.com/Energy/Energy-General/Could-Carbon-Capture-Tech-Be-The-Key-To-A-Net-Zero-Future.html
>>https://www.cnbc.com/2022/05/08/energy-secretary-why-feds-are-spending-2point5-billion-on-carbon-capture.html