気候変動枠組条約締約国会議(COP)とは?概要やこれまでの成果、最新のCOP26の内容まで分かりやすくご紹介
環境問題について調べる際に必ず耳にする気候変動枠組条約締約国会議(COP)、加盟国が数値目標などさまざまな物事を定めるための最高意思決定機関です。本記事では、COPの目的やこれまでの成果、最新のCOPの争点等について分かりやすく説明します。
気候変動枠組条約締約国会議(COP)とは
COPとは、気候変動枠組条約を採択した国が参加し開催される国際会議です。COPでは、これまで環境問題の解決に関する重要な合意がなされてきました。本項では、その概要や沿革をご説明します。
気候変動枠組条約締約国会議(COP)の概要
気候変動枠組条約締約国会議(COP)は、締約国会議(Conference of the Parties)の一つで、気候変動枠組条約(Framework Convention on Climate Change, FCCC)について交渉・議論を行う場です。加盟国が物事を決定するための最高決定機関であり、最終決定はCOPでしかなされません。
締約国会議には、生物多様性や砂漠化に関するものなどもあり、今回紹介する気候変動に関する会議は正式にはCOP-FCCCと呼ばれます。今回は便宜上、COP=COP-FCCCとします。
現在の加盟国は、2020年時点で197か国・地域です。会議には世界中から3000人から10000人ほどが参加し、主には温室効果ガス排出量削減の取組状況や必要な措置を議題に話し合います。
気候変動枠組条約については、以下に詳しい記載があります。
気候変動枠組条約締約国会議(COP)の沿革
気候変動枠組条約
1988年に国連環境計画(UNEP)と世界気象機関(WMO)により設立された政府間機構である気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の報告により、気候変動に関する国際的な枠組みの必要性が認識され、1992年にブラジル・リオデジャネイロにて地球サミット(環境と開発に関する国連会議)が開かれました。同会議において、大気中の温室効果ガスを環境に悪影響を及ぼさない程度の水準で安定化させることを目的とした、気候変動枠組条約が締結されます。この条約に関する議論の場として、COPが開かれることとなったのです。
これまでのCOPの主な内容
気候変動枠組条約は1992年に採択され、1994年に発効しました。しかし、1995年に行われた第1回目のCOPでは、同条約では現状の問題を解決するのに不十分であると結論付けられ議定書交渉を行うことが決定します。翌年のCOP2では,その議定書が法的拘束力を持つものとすることが了承されました。これがジュネーブ宣言です。
そして、京都府で開催された1997年のCOP3では、京都議定書が採択されました。これを受けてCOP4では、ブエノスアイレス行動計画と呼ばれる、京都議定書で合意に至った制度を実施するために必要な取り決めを交渉する計画が合意されています。
さらに、2009年のCOP15では、産業革命以前からの気温上昇を2度以内に抑えるという重要な合意がなされました。また2015年にフランス・パリで開催されたCOP21においては、京都議定書に代わる2020年以降の新たな国際枠組みであるパリ協定が採択されています。1992年に開催された地球サミットで、温室効果ガス排出量削減を目的とした気候変動枠組条約が締結されました。これを受けて開催されることとなったのが、気候変動枠組条約締約国会議(COP)です。
気候変動枠組条約締約国会議(COP)の果たした成果
COPは、これまで環境問題の解決や持続可能な社会作りにどのように貢献してきたのでしょうか。本項では、特に重要な取り決めである京都議定書とパリ協定について概要をご説明します。
京都議定書
京都議定書は、1997年京都府で開催されたCOP3において採択されました。この議定書の成果は、京都メカニズムと呼ばれる制度です。この制度では、共同実施・クリーン開発メカニズム・排出量取引の3つのシステムが採用されています。先進国間・先進国ー発展途上国間で温室効果ガス排出量を取引することで、より無理のない効率的な削減を実現しました。
京都議定書及び京都メカニズムについて、詳しくは下記の記事をご参照ください。
パリ協定
2020年までの枠組みであった京都議定書に代わり、2015年フランス・パリで開催されたCOP21においてパリ協定が発行されました。
パリ協定では、すべての加盟国に削減目標を課す・すべての加盟国が削減目標達成に向けて戦略を策定、提出する・加盟国に5年ごとの進捗報告と情報提供を定める(グローバルストイックテイク)の3点が新たに追加されています。
日本やアメリカ、EUなどの先進国のみを対象としていた京都議定書と異なりすべての加盟国に目標を設定したパリ協定では、より国際協力が強まり効果的な排出量削減が期待できるでしょう。
最新のCOP26、何が話し合われたのか?
最新のCOPは、今年10月31日よりイギリスのグラスゴーで開かれました。昨年実施予定でしたが、新型コロナウイルス感染拡大を受け延期となり、今年度の開催となった次第です。
2019年マドリードで開催されたCOP25では、パリ協定の補完や中長期目標について議論がなされましたが、明確な結果が出たわけではなく多くの課題がCOP26に持ち越されました。ここでは、COP25の内容を振り返るとともに、COP26の争点や結果についてまとめます。
COP25の内容
COP25で主に議論の対象となったのは、パリ協定6条、2030年目標、ワルシャワ国際メカニズムです。なお、2日間議論が延長されたものの明確な合意はなされませんでした。
以下、それぞれの項目について簡単にご紹介します。
パリ協定6条
パリ協定6条では、市場メカニズムなどの、複数の国が協力し各国の合計排出量を削減する制度が定められています。しかし、発展途上国の削減目標の多くは「何も行わない場合と比べて〇%」などのように相対的なものであるため、先進国に削減量を譲渡したとしてもその分実際に削減しているのかを確かめられません。そのため、排出削減量が二重計上され計算上の削減量と実際の削減量が合致しない恐れがあります。
EUなどの上記の問題を減らすために6条の利用を抑えようとする意見と、オーストラリアや中国などの6条を積極的に用い排出量削減を容易にしようという意見が対立し、COP24で持ち越された課題でしたがCOP25においても明確な合意には至りませんでした。
2030年目標
パリ協定では、気温上昇を2℃に抑え、さらに1.5℃を目指す目標が定められています。しかし昨年、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)より、各国から提出された2030年目標を合計しても目標達成には不十分であることが報告されました。そのため、2030年目標をより厳しいものにしようという声が高まっています。ただしCOP25では、目標引き上げの義務化には至らず目標見直しを推奨する程度に留まりました。
ワルシャワ国際メカニズム(WIM)
気候変動に伴い、現在発展途上国を中心に海面上昇や台風、干ばつなどの環境被害が見られています。今後増大が予想される「ロス&ダメージ(損失と被害)」の問題に国際的に対処するため、2010年のCOP19においてワルシャワ国際メカニズム(WIM)の設置が決定されました。しかし、このワルシャワ国際メカニズムをパリ協定の下に位置付けたい米国と、気候変動枠組条約の下にこのまま位置づけたい途上国の間で対立が起きたのです。これは、パリ協定の離脱を宣言している米国がパリ協定と同時にWIMを離脱したいと考えているのに対して、途上国は上記の問題を米国抜きで議論することは難しく離脱後もWIMに残るべきだと考えているためです。
ただし、2021年2月にバイデン政権下の米国がパリ協定へ正式に復帰したため、この問題がCOP26に引き継がれることはありませんでした。
COP26の成果は?COP25での課題は解決した?
COP26では、各国の2030年目標の引き上げやパリ協定6条の合意に注目が集まりました。
各国の目標引き上げ
前項で述べたように、パリ条約の目標達成のためには目標引き上げが不可欠です。実際に、4月に開催された気候変動サミットでは、EUや米国、日本、英国など各国が目標引き上げを発表しました。ここでは、「共通タイムフレーム」と呼ばれる各国が定める貢献(Nationally Determined Contribution:NDC)の目標期間を5年とするか10年とするかといった課題に注目が集まっています。また、最大排出国でありながら地球サミットでは目標引き上げを定めなかった中国の動向も争点となりました。
パリ協定6条
前述の通り、パリ協定6条は前回のCOP25に引き続いての課題ですが、持ち越されたのは議論が失敗したためではなく慎重に議論された結果です。6条は利権に関わるデリケートな問題であり、また早急に取り決めずともパリ協定の施行に問題はないため、二重計上を確実に防止し削減目標を効果的なものにするために慎重に決めるべきなのです。
国際的な動向に注目しよう
パリ協定が策定されてからは主要国のみならず世界各国が環境問題への意識を高めていく方向にシフトしており、私たち一人ひとりの意識改革が求められています。しかし、環境問題は非常に流動的で、常に情報が更新されています。私たちが仕事や日常生活のなかで環境問題対策に取り組むには、最新の動向や情報を知らなければなりません。その点でCOPは、環境問題への取組に関する最高意思決定機関であると同時に、私たちが現在の環境問題の状況や各国の取組状況を知ることのできる貴重な機会です。COPをきっかけに、あらゆる国際的な問題や取組に注目しましょう。