中小企業のSDGsへの取り組み事例10選|業種別の具体例を紹介
世界的に「持続可能な社会の実現」が唱えられる中、注目を浴びているのが「SDGs」です。街中でSDGsの取り組みの看板を見かけたことがある方もいるのではないしょうか。本記事ではSDGsの概要や中小企業のSDGsへの取り組み方、そして実際に取り組んでいる中小企業の事例を紹介していきます。
SDGsとは
「SDGs」とはSustainable Development Goalsの頭文字を取った言葉であり、「持続可能な開発目標」と訳されています。これは17の目標と169のターゲットから成り、「誰ひとり取り残さない」を合言葉とした2030年までのグローバルな目標です。SDGsは2015年9月の国連サミットで全会一致で採択されてから、「MDGs」の後継として世界中で働きかけがおこなわれています。
※MDGsとは
「MDGs」とは2000年に決定された「国連ミレニアム宣言」と1990年代に採択された国連開発目標が融合した宣言です。これは1990年代を基準に考えられており、2015年までに達成を目指した8つの目標から成っています。
中小企業がSDGsに取り組むメリット
SDGsへの取り組みは、企業にとって大きなメリットがたくさんあります。本章では、その中の2つについて説明していきます。
参考:SDGsとは?目標達成に向けた企業の取り組み事例|17個のゴール別に紹介 (netzeronow.jp)
企業イメージの向上
近年サミットや国連総会などで地球温暖化についての話題が頻出しており、各国の企業や団体に脱炭素化を求める国が多くなっています。それにともなって環境に配慮した取り組みに参加することは消費者や投資者への大きなアピールポイントとなってきており、企業イメージの向上を期待することができます。企業イメージの良さは商品やサービスの売上や優秀な人材確保にも繋がるため、SDGsへの注目度は高まり続けています。
ビジネスチャンスの拡大
SDGsに取り組む企業が増えているため、その取り組みを積極的にアピールしていくことはESG投資や環境経営に力を入れているほかの企業と繋がるきっかけにもなり、自社のビジネスチャンスの拡大を目指すことができます。
※ESG投資とは
「ESG投資」とは、Environment(環境)、Social(社会)、Governance(企業統治)に配慮した事業運営をおこなっている企業に、優先的に投資をおこなうという投資手法のことを言います。
中小企業がSDGsに取り組む際の手順と注意点
本章では、中小企業がSDGsに取り組む際の手順と注意点について、中小企業のための SDGs 活用ガイドブックをもとに解説していきます。
① SDGsを理解する
最初にすべきことは、SDGsに記されている「解決すべき課題や目標」をきちんと理解することです。SDGsには17のゴールと、それらをより細かくした169のゴールで構成されています。それをざっと読みSDGs全体の目的を理解し、自社の事業と照らし合わせて見てください。
また、経済産業省はSDGs経営を説明する資料を無料公開しています。興味のある方は、こちらからご覧ください。
② 自社の事業の中でSDGsへの貢献にあたる取り組みを探す/自社で取り組む SDGs に関係する優先課題を決定する
次は、SDGsのゴールや目的を読み込んでいく中で、自社の事業の取り組みが既にSDGsへの貢献になっているのか判断していきます。SDGsへの貢献は、直接的な貢献だけではなく、自社の事業を円滑に進めていくために取り組んだ「環境改善」も含まれます。
③ 目標を具体的に設定する
続いて②で見つけた優先課題に対して、成果の目標を具体的に設定します。実際に行動に移すためには、誰が見てもわかりやすい目標や具体的な数値目標などを設定していく必要があります。
④ 経営へ統合する
「経営へ統合する」ということはすなわち、「実際に自社の事業に当てはめて行動していく」という意味です。これには「社長のリーダーシップ」が必要不可欠となります。社内の研修やホームページへのSDGsの取り組みの掲載など、社内全体の環境に対する意識を向上させる必要があります。
⑤ SDGsに取り組んだ事項の報告とそれについてコミュニケーションを行う
最後のステップは「報告とコミュニケーション」です。上場企業は統合報告書やサステナブルレポートを作成して投資家や株主などのさまざまなステークホルダーに情報を公開します。中小企業においては、ビジネスチャンス取得のための企業PRとして活用しましょう。営業部門においては顧客や新規営業先との会話の中でSDGsを話題にし、連携できる部分がないのか探すことができます。また、人事部門においては、学生の関心を惹くことに繋がります。
しかし、外部にSDGsの取り組みについて話すときに、取り組みを過大にアピールしたり、取り組んでないことを取り組んだように話すことはグリーンウォッシュとなるため、控えましょう。
参考:中小企業のための SDGs 活用ガイドブック (smrj.go.jp)
中小企業のSDGsへの取り組み事例10選
本章では、日本の中小企業が実際に取り組んでいるSDGsについて紹介していきます。
製造業
株式会社ワンプラネット・カフェ
ワンプラネット・カフェは、サステナビリティやSDGsに関する講演や研修の提供、サステナビリティ現場の視察ツアーの開催、またバナナペーパー事業やハンズオン事業などに積極的に取り組んでいます。
株式会社大川印刷
大川印刷は、SDGsの17項目すべてに関わっています。具体的には、環境負荷の少ない電気自動車やディーゼル車を使ったエコ配送、石油系有機溶剤0%のノンVOCインキの使用、また持続可能な発展のためにエコ用紙の使用など、さまざまな側面から環境に配慮した事業運営を実現しています。
有限会社ワールドファーム
ワールドファームは、国内野菜の推進や担い手の育成、6次産業化、また自治体との連携を通じて、持続可能な農業から始まる「地方創生」や「持続可能な社会」の実現を目指して取り組みを続けています。
ホットマン株式会社
タオルをつくる過程での環境配慮はもちろん、古くなったタオルのリサイクルや、日本初の日本製フェアトレードコットンタオルの製造と販売、さらに毎年青梅市の全小学生に対し工場見学や職業体験をおこなっています。
卸売業・小売業
株式会社水島紙店
店舗で使用する袋をポリ袋から紙に替える「紙袋プロジェクト」を実施しました。また、そのほかにもSDGsへの取り組みをアピールしたことでメディア取材や教育団体での講演依頼が増えてきています。
京都831家
地元の農家の方々が育てた野菜を加工し、無添加のドレッシングやソース、ジャムなどを作り出しています。また、京都831家には倉庫のみで事務所がなく、各社員はリーモートで仕事をしています。会社に出勤しなくても個人が活躍できる働き方の改革を進めています。
建設業
株式会社山翠舎
空き家となった古民家を再利用するには高度な技術と莫大なコストを要するため、取り壊され破棄されることが多いです。しかし山翠舎は職人の腕で丁寧に解体し、使える木材を保管して再利用しています。この作業は「モノ」の循環を円滑に進めていることに加え、廃棄され、焼却される木材の量を格段に減らしているため、CO2の排出を大きく抑えています。
平井建設株式会社
社員の健康を第一に考え、予防注射を全額補助するシステムや毎週水曜日のノー残業デーの実施、全社員の平均有給取得率の70%以上を目指しています。そのほかにも、年3回の沿岸の清掃活動、大規模災害時の除雪作業など、さまざまな取り組みに専念しています。
⾷料品
アイビック食品
救護・災害・紛争支援として日本赤十字への寄付をはじめ、がん検診やタバコ禁煙の推進、こどもを対象とした工場見学の実施をおこなっています。さらにジェンダー平等にも目を向けており、女性の就労環境の整備や育児休暇制度なども取り入れています。
石屋製菓株式会社
石屋製菓の看板商品である『白い恋人』はプラスチックではなくバイオマス素材(トウモロコシ)を主原料としたトレーを使用しており、可燃ごみとして処理ができます。また、「NO!ハラスメント」宣言を通して、誰もが働きやすい環境の整備に取り組んでいます。
経済産業省は、SDGsに積極的に取り組む中小企業の事例を取りまとめています。
興味のある方はこちらを参照してください。
>>SDGsに取り組む中小企業等の先進事例の紹介 (kanto.meti.go.jp)
まとめ|積極的にSDGsに貢献を
地球温暖化が世界の取り組むべき重要な課題として挙げられる中、企業に対し脱炭素化された事業運営を求める声が大きくなってきました。企業が取り組める環境経営はPPAやRE100などさまざまな種類がありますが、SDGsはその中でも比較的簡単に取り組むことができます。まずは1つから、取り組みはじめてみませんか。