自己託送とは?制度の利用条件とメリット・デメリットを解説
自己託送とは、遠隔地(オフサイト)にある自社の発電設備で生み出したエネルギーを送電ネットワークを利用して自社施設で利用することを指します。自己託送によって自社の使用電力コストを削減できるだけでなく、CO2削減に寄与し環境に配慮した企業であることをステークホルダーに伝えることができます。しかし、一方で自己託送コストもかかるなどデメリットも存在します。本記事では、自己託送の制度を利用する条件とメリット・デメリットを詳しく解説していきます。
自己託送とは
「自己託送」とは、遠隔地にある自社発電所で発電した電力を、電線など(送配電ネットワーク)を利用して自社施設へと送電する電力供給制度のことを指します。通常の自家消費の場合、自社の隣接地や屋根に設置しなければいけませんが、自己託送制度を活用することによって、離れた場所からでも電力の供給ができるようになりました。
自己託送とPPAモデルとの違い
自己託送と似ている仕組みに、PPA(電力購入契約)というものがあります。
PPAの種類には、
オンサイトPPA:発電事業者が、需要家の敷地内に太陽光発電設備を発電事業者の費用により設置し、 所有・維持管理をした上で、発電設備から発電された電気 を需要家に供給する仕組みです。
オフサイトPPA:オンサイトPPAと逆で、発電事業者が電力需要場所の敷地外に発電設備を設置し、小売電気事業者を通して企業に電力供給する仕組みです。
バーチャルPPA:電力の小売りに対して規制がかけられている地域でも、遠隔地で発電された電力を送ることができる仕組みです。
の3つがあり、自己託送はオフサイトPPAとよく似ていると言われています。
しかしこの2つには大きな違いが4つ存在します。
1つ目は、「契約」についてです。オフサイトPPAはPPA契約を結び小売電気事業者を介しますが、自己託送はPPA契約を結びません。それに加え、オフサイトPPAは長期的な契約が前提となります。
2つ目は、「再生可能エネルギー(以下再エネ)賦課金」についてです。オフサイトPPAは再エネ賦課金を負担する必要がありますが、自己託送は再エネ賦課金の負担がありません。
3つ目は、「送電先」についてです。オフサイトPPAは送電先が複数の場合もありますが、自己託送は1箇所に限定されています。
4つ目は、「発電所」についてです。オフサイトPPAは特別な発電所の準備が必要でない上、低圧の発電所でも使用することができます。一方、自己託送は新設の発電所のみを対象とし、高圧・特別高圧の発電所のみが対象とされています。
※再生可能エネルギー賦課金(ふかきん)とは?
「再生可能エネルギー賦課金」とは、電力会社が電力を買い取る際に必要となった費用を、電気の使用量に応じて支払う制度です。これは電気料金の一部に含まれています。
参考:https://earthene.com/media/370
自己託送の利用条件
自己託送を利用するには、以下の条件をクリアしている必要があります。
【自己託送の利用条件】
- 売電目的ではないこと
- 発電事業者と供給先が密接な関係を築いていること
「密接な関係」については、経済産業省の資料において次のように定義されています。
生産工程において、原材料、製品等の受渡しがあって、それを第三者との受渡しに代替することが困難であること。
会社法(平成17年法律第86号)第2条第3号に規定する子会社(以下この(2)において単に「子会社」という。)と同条第4号に規定する親会社(以下この(2)において単に「親会社」という。)の関係、親会社の子会社と当該会社の子会社の関係その他これらに準ずる関係があると判断されること。
人的関係として、一方の者から他方の者に対して過半数の役員の派遣がなされていること。
上記(1)から(3)まで照らして生産工程、資本関係、人的関係それぞれ単独では密接な関係としては不十分であっても、複数を合わせて見ることによって密接な関係があると判断されること。
一方の者から他方の者に対して、当該他方の者が行う事業に必要かつ当該一方の者以外の第三者への代替が困難な原材料、製品、役務等の提供が長期にわたり継続的に行われていることにより、当該一方の者と当該他方の者の間において社会通念上一つの企業とみなし得る関係が存在すると判断されること。
引用:自己託送に係る指針 (enecho.meti.go.jp)
自己託送を利用するメリット
自己託送を利用することには、たくさんのメリットが存在します。
電力コストが削減される
自己託送は自社の設備を使って発電しているため、電力会社から購入する電力量を削減することに繋がります。
再エネ賦課金が賦課されない
自己託送はオフサイトPPAと違い再生可能エネルギー(再エネ)賦課金がかかりません。そのため、本来再エネ賦課金に使用する予定だった資金を、別の場所で活用することが可能となります。
CO2排出削減で環境保全に貢献できる
自己託送を利用することによって、自社のサプライチェーン全体でCO2を削減することが可能になります。環境保全への貢献や環境経営は、投資家や消費者への大きなアピールの1つとなるため、多くの企業が取り組みをおこなっています。
電力を無駄なく活用できる
自家消費型太陽光発電システムの場合、施設の稼働状況によって余剰電力が生じてしまう可能性があります。しかし自己託送ではその余剰電力を別の施設に送電することができるため、電力の無駄使いを無くすことが可能です。
自己託送を利用するデメリット
自己託送を利用する上でのデメリットを紹介していきます。
託送料金が別途かかる
発電設備から施設へと送電する際、送配電事業者を介するため、別途、託送料金がかかります。金額は電力会社によって異なります。
需要量・発電量の報告が必要
自己託送は送配電ネットワークを使用するため、自社と送配電業者の間で契約を結ばなければいけません。その契約の中で「計画値同時同量」の制度について書かれていますが、これは電気の需要量と供給量を30分単位で予測し、その計画値を送配電事業者へと提出する義務があることを指しています。
インバランス料金が課せられる可能性
送配電事業者へ提出する計画値と実際の実績値の間に生じる差を「インバランス」と呼び、このインバランスを生産する必要が出てきます。
まとめ|自己託送で環境配慮とコスト削減を
地球温暖化が進んでいくにつれ、環境経営は企業の「権利」ではなく「義務」となってきました。自己託送はその取り組みの1つです。自社の取り組みを改めて確認し、積極的に進めていきましょう。
またこのwebメディアを運営している、株式会社ECOLOGICAでは、グリーンプロジェクトとして国内外の自社拠点に太陽光発電由来の再エネ電源導入を企画検討されている国内企業に対し、さまざまなサービスを提供、支援をおこなっています。ECOLOGICAは、世界最大級の太陽光専門商社PROINSOグループの日本総代理店です。温室効果ガスの排出量削減手段として、再生可能エネルギーの導入(特に海外拠点の再エネ調達)を検討している、という方は、こちらからお問い合わせください。
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