シンガポール、気候変動目標の早期達成に向け、低炭素水素に着目ー2050年までにネットゼロを目指すー
シンガポールは、2050年までにカーボンニュートラルを達成することを目標に掲げました。脱炭素社会実現の一環として低炭素水素の追求を検討しており、技術の進歩によっては、2050年までにシンガポールが必要とする燃料の半分を水素でまかなえる可能性があります。
実現可能な限り早期にネットゼロ達成へ
2022年10月25日、シンガポールのウォン副首相は、2050年までにネットゼロを達成するため、気候目標を引き上げると発表しました。これまでは、「今世紀後半に実現可能な限り早期にネットゼロを達成する」としていたため、今回初めてその時期を明確にしました。また、二酸化炭素の最大排出量を従来の目標から500万トン削減し、2030年には6000万トンにすることを目標に掲げています。しかし、この目標は二酸化炭素の回収・貯留(CCS、CCUS)などの低炭素技術の技術的進歩や経済的実現可能性に左右される可能性があります。
世界的な非営利研究団体である世界資源研究所(WRI:World Resources Institute)が先週発表した報告書によると、各国の最新の誓約では、2030年までに削減できる温室効果ガスは2019年と比べてわずか7%と発表しています。これは、世界気温の上昇を回避するためには「極めて不十分」です。世界の気温上昇を1.5度までに抑えるというパリ協定の目標を達成するためには、各国は目標を約6倍強化する必要があります。
アンモニアが低炭素水素普及のカギとなるか
また、東南アジア諸国は、長期的には主要な電力供給減として低炭素水素を検討する計画を立てています。貿易産業省(MTI)は別のプレスリリースで、水素は2050年までにシンガポールが必要とする燃料の最大半分を供給することができると発表しました。MTIによると、シンガポールは先進的な水素技術の利用を試みるとともに、それらをさらに発展させるための研究開発をおこなう予定です。
ウォン副首相は、商業的に実現可能で、複数の用途を持つ技術に焦点を当てると述べ、その例として、送媒体として役立つ可能性のある低炭素のアンモニアが挙げられました。大量輸送が難しい水素を、輸送技術の確立しているアンモニアのかたちに変換して輸送し、利用する場所で水素に戻すという手法が研究されています。また、アンモニアは燃焼してもCO2を排出しない「カーボンフリー」の物質であるため、将来的にはアンモニアだけをエネルギー源とした発電を視野に入れた技術開発が進められています。
シンガポールの水素への取り組みを進めるために、政府は低炭素アンモニアを発電に利用する小規模な商業プロジェクトに関心表明書を発行する予定です。これにより、2027年以降、シンガポールの人々は低炭素の水素で発電された電気を利用できるようになるかもしれません。
参考記事:
>>https://www.channelnewsasia.com/sustainability/singapore-low-carbon-hydrogen-achieve-climate-target-earlier-net-zero-2050-3023226
>>https://www.msn.com/en-au/money/other/singapore-targets-net-zero-by-2050-eyes-hydrogen-power/ar-AA13lmuE