ソーラーシェアリングとは?設置条件とメリット・手順を紹介
ソーラーシェアリングとは、営農型太陽光発電とも呼ばれ、農地に支柱を立てその上に太陽光パネルを設置して太陽光発電を行うことを指します。手続きは少々複雑ですが、農地転用許可件数は2013年から2020年まで右肩上がりとなり、普及率が高まってきています。大きなメリットは、一度設置すれば農業利益だけでなく、売電収入や電力節約も期待できる点にあります。本記事では、ソーラーシェアリングの設置条件とメリット・デメリットを紹介し、始める手順を詳しく解説していきます。
ソーラーシェアリングとは
ソーラーシェアリングとは、農地で農業と太陽光発電事業を両立させる仕組みです。農地に支柱を立て、その上部に太陽光パネルを設置します。営農を続けながら、農地の上部空間を有効活用することにより電気を得ることができるのです。さらに、増加する荒廃農地の再生利用という観点でも期待されています。
ソーラーシェアリングの設置条件
ソーラーシェアリングは、一見すると太陽光発電事業の幅を大きく広げる仕組みのようにみえます。しかし、どんな設備や形態であっても良いわけではなく、設置には多くの条件が設けられています。農林水産省が発表している指針をいくつか紹介したいと思います。
農林水産省からの指針概要
- 発電設備の下の農地で適切な営農が確実に継続されること
- 営農が行われていること
- 品質に著しい劣化が生じていないこと
- 収量が著しく減少していないこと
- 農作物の生育に適した日照量を保つための設計であること
- 効率的な農業機械等の利用が可能な高さ(最低地上高2m以上)であること
- 周辺農地の効率的な利用に支障がない位置に設置されていること
- 簡単な構造で容易に撤去できる支柱であること
- 設備を撤去するのに必要な資金や信用があること
特に、「営農の適切な継続」は重要です。ソーラーシェアリングは営農の継続を前提とするため、営農に支障を与えないことが求められます。ソーラーシェアリングの実施にあたっては、ここに挙げた条件を遵守しなければなりません。
ソーラーシェアリングの普及率
ソーラーシェアリングは、年々関心が高まっている取組みです。令和2年3月末の累計許可件数(平成25年4月〜)は2,653件に上ります。そのうち、令和元年の累計許可件数は、661件でした。農地転用許可にかかわる制度が明確化された平成25年度は96件であったことを考えると、ソーラーシェアリングの普及率は右肩上がりに上昇していることがわかります。しかし、日本全体の農家数から見るとまだまだ普及率は高くありません。農林水産省が5年ごとに行っている調査によると、令和2年の農業経営体数は全国で1,076,000件あります。今後のさらなる普及が望まれます。
ソーラーシェアリングのメリット
ソーラーシェアリングは、設備を設置することで、非常に大きなメリットを得ることができる仕組みです。本章では、主要な3つのメリットを紹介していきます。
売電による安定的な収入
まずメリットに挙げられるのは、売電による収入を安定的に得ることができる点です。再生可能エネルギーの固定価格買取制度を活用することによって、国が定める価格で20年間、太陽光発電で発電した電力を電力会社が買い取ります。農家にとっては、副収入を得られる手段となり、所得向上が期待できます。農業収入と売電収入の両方から農家の暮らしを支えることが可能になります。
荒廃農地の活用
高齢化や後継者不足の影響から増加傾向にある、荒廃農地の有効活用に繋がる手段としても期待されています。ソーラーシェアリングは、条件が合えば荒廃農地でも導入することが可能です。転用できず扱いに困っている農地や、農閑期でも売電収入を得ることができるようになります。
発電した電力の売電以外の活用
太陽光パネルがあることで、パネル下の影は太陽とともに移動します。それに伴い、パネル下の作物への日照も変動します。太陽光パネルを設置していない場合と比べて日陰が多くなるため、日中は涼しく、夜は暖かくなる傾向にあります。そのため、炎天下での農作業が楽になるなどの効果が期待できます。
ソーラーシェアリングのデメリット
ソーラーシェアリングはメリットが多く、近年普及が進んでいる仕組みです。しかし、いくつかデメリットも存在します。本章では、3つのデメリットを紹介していきます。
設備費用が高い
ソーラーシェアリングは、通常の太陽光発電に比べて、設備費用が高くなる傾向にあります。太陽光パネルを地上から3m程上空に設置するため、架台費や工事費がプラスでかかり、割高になるのです。
設置条件が多くハードルが高い
ソーラーシェアリングを設置する場合、農地を農業以外の目的で使用することになるため、市町村の「一時転用許可」を取得する手続きが必要となります。その際、前述したいくつかの設置条件を満たすことが必須となります。農作物の成長に必要な日照量の確保や、営農の適切な継続などです。また、ソーラーシェアリングは、20年間農業を継続することが前提条件としてあります。そのため、耕作者が急病や事故等で耕作が出来なくなった場合、代替者を探さなければなりません。仮に見つからなかった場合、太陽光パネルの撤去命令が下る可能性もあります。
一時転用許可の手続が複雑
ソーラーシェアリングを設置する場合、基本的な太陽光発電の手続きの他に農地の一時転用許可の申請が必要となります。申請の際には、事前に太陽光発電事業を開始するための手続き(経済産業省へ「事業計画認定の申請」および電力会社との「電力受給契約の申込み」)を行っておく必要があります。
ソーラーシェアリングを始める手順
ソーラーシェアリングを始めるには、いくつかのステップを踏む必要があります。本章では、ソーラーシェアリングを始める具体的な手順を紹介していきます。
1.地域住民の理解を得る
まず初めに、地域住民からの理解は欠かせません。太陽光発電の設備を設置することによって、景観の悪化などを招く可能性があるからです。長期安定的に発電事業を行うために、地域住民の理解を得ながら進めていくことが重要です。
2.営農計画(太陽光発電導入の計画)と設計図等を策定する
計画を円滑に進めるために、太陽光発電を導入する目的を明確にする必要があります。その上で現地調査をおこない、具体的な営農計画と設計図などを策定していきます。日照条件や営農の適切な継続など、ソーラーシェアリングの設置条件を満たしているかも事前に確認しましょう。
3.営農型発電設備の設計図&見積書を作成する
次に、実際に営農型発電設備の設計図を作成していきます。設計図が完成したらそれを基に必要な機材の選定をし、導入にかかる見積もりを算出します。正確な見積書を作成するためにも、設計図は慎重に作成しましょう。
4.各種申請手続を行う
ソーラーシェアリングを適切に行うために、農地法に基づいて農地の一時転用許可を申請する必要があります。日照条件や営農の適切な継続が可能かどうかをチェックします。一時転用許可は担い手が営農する場合や荒廃農地を活用する場合などは10年以内で、それ以外は3年以内です。期間が終了した場合は、継続審査を受ける必要があります。農地区分によって、書類や提出先が異なる可能性があります。事前に確認しておくことが重要です。
5.太陽光発電に関する手続と設置を行う
最後に、太陽光発電に関する手続きと設置をおこないます。設計図に従って、架台の設置工事や太陽光パネルの組み立てなどをおこない、太陽光発電設備を設置します。以上でソーラーシェアリング設置までのステップは終了です。
まとめ|ソーラーシェアリングで安定した収益を
ソーラーシェアリングは、経済面でのメリットが大きいことから、今後益々普及していくと考えられます。手続きは少々複雑ですが、ぜひ導入を検討してみてはいかがでしょうか。
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