GHGプロトコルとは?Scope1,Scope2,Scope3、サプライチェーン排出量や他のイニシアチブとの関係を解説

bannar

地球温暖化対策を考える時に1度は耳にするGHGプロトコル。しかしGHGプロトコルの仕組みまでご存じの方は少ないのではないでしょうか。本記事ではGHGプロトコルの概要から算定方法の仕組み、関係するほかの国際的なイニシアチブまで詳しく解説していきます。

目次

GHGプロトコルとは

「GHGプロトコル」とは、国際的な温室効果ガス(Greenhouse Gas:GHG)の排出量の算定と報告の基準のことを指します。

GHGプロトコルを設定したのは「GHGプロトコルイニシアチブ(The Greenhouse Gas Protocol Initiative)」という国際イニシアチブです。これは米国ワシントンDC に本部のあるWorld Resources Institute(WRI)とスイスのジュネーブに本部のあるWorld Business Council for Sustainable Development(WBCSD)が中心となり、世界中の企業、NGO、政府機関などが参加し発足しました。GHGプロトコルイニシアチブは、国際的なGHG排出量の算定と報告の基準を開発し、それを広めていくことを目的として活動しています。

GHGプロトコルが公開しているツールの中で有名なものとして、

  • Corporate Accounting and Reporting Standards (Corporate Standard):主に企業自身からのGHG排出量を対象とする算定・報告基準
  • Corporate Value Chain (Scope 3) Accounting and Reporting Standard(以下、Scope3基準):上流から下流までの、バリューチェーン全体のGHG排出量を対象とする算定・報告基準

が挙げられます。

ほかにもオフセット・クレジット創出などのプロジェクト向け「プロジェクト・プロトコル」(Project Accounting Protocol and Guidelines)や 世界中の算定ツールや係数、原単位などの情報を集約した「Calculation Tools」も公開しています。GHGプロトコルが公開したツールは他の国際的なイニシアチブなどにも採用され世界共通のものさしとなっています。

GHGプロトコルの仕組み

GHGプロトコルが公開している温室効果ガスの算定・排出基準とはいったいどのようなものでしょうか。ここからはその仕組みについてご紹介します。

サプライチェーン排出量

GHGプロトコルでは、1つの企業で排出されたGHG排出量(直接排出)だけではなくサプライチェーンでの排出量(間接排出)も重視しています。

※サプライチェーンとは

「サプライチェーン」とは、原材料や部品の調達・製造といった上流の過程から、販売や廃棄などの下流の過程を含めた供給の連鎖のこと

Scopeとは 

Scopeについての説明

GHGプロトコルはScopeという考え方を使用しています。

サプライチェーン排出量=Scope1+Scope2+Scope3が成りたちます。

  • Scope 1:自社が所有する設備や支配する事業活動からの直接なCO2排出を指します。例えば、自社工場設備で重油を燃焼させたり、作業車両を走らせることによるCO2排出が該当します。
  • Scope2:自社が所有する設備や中心となっている事業活動での、エネルギー使用にともなう間接的なCO2排出を指します。例えば、工場・事務所での電力エネルギーの使用や、熱や冷却、蒸気など外部から供給を受けるエネルギーがScope2に該当します。
  • Scope3:自社が直接所有したり中心となる対象の範囲外で、サプライヤー等の事業者や製品ユーザー、廃棄物事業者など自社の事業活動に関連する間接的なCO2排出を指します。例えば、原材料の抽出や調達、輸送・物流、流通・販売、製品の使用、廃棄・リサイクルなどの他、出張や通勤、資本設備やフランチャイズチェーンなどが該当します。事業活動の上流や下流等で発生する多くのCO2排出に対して、自社の間接的なCO2排出量として算定することが求められています。

GHGプロトコルScope3算定報告基準(Corporate Value Chain (Scope3) Accounting and Reporting Standard)のガイドラインとして、環境省が「サプライチェーンを通じた温室効果ガス排出量算定に関する基本ガイドライン」を作成しています。もっと詳しく知りたい方は下記をご参照ください。

環境省・経済産業省 

【サプライチェーンを通じた温室効果ガス排出量算定に関する基本ガイドライン】

>>http://www.env.go.jp/earth/ondanka/supply_chain/gvc/files/tools/GuideLine_ver2.3.pdf

GHGプロトコルのメリット

GHGプロトコルを採用することによって企業にどのようなメリットがあるでしょうか。本章では、GHGプロトコルのメリットについて紹介していきます。

エコロジーなメリット:温室効果ガスの削減

GHGプロトコルでGHG排出量の算定・報告基準を採用することで、サプライチェーンまで排出量を把握することができます。したがって、排出量の多い部分や削減ポテンシャルの大きい部分を全工程にわたって明確に把握し、優先的に削減すべき対象を特定することができます。

ビジネス的なメリット:リスク管理&情報開示

GHGプロトコルを採用することによって、GHG排出量を正確に把握することができ、自社のみならずサプライチェーンまでのビジネスリスクを把握することができます。

また、GHGプロトコルを採用したESG情報を企業の情報開示の1つとすることで、ESG投資をおこなう投資家へのアピールや社会的信頼を向上させることができます。

ほかのイニシアチブとの関係性

GHGプロトコルは、地球環境にまつわる企業・組織の行動を求める数多くの国際的なイニシアチブが採用しています。本章では、代表的な国際的イニシアチブのうちのいくつかをご紹介します。

他の国際イニシアチブとの比較

RE100

「RE100」とは2050年までに事業運営を100%再生可能エネルギーで賄うことを目的とした国際的なイニシアチブです。様々な国の300を超える企業が参加しており、そのうち63社が日本企業です。(2021年12月時点)

RE100 の温室効果ガス排出量の査定・報告はGHGプロトコルに基づいています。

SBT

「SBT」とは2015年に、COP(締約国会議)、WWF(世界自然保護基金)、UNGC(国連グローバルコンパクト)、WRI(世界資源研究所)の4つの団体が共同で設立した国際的なイニシアチブです。パリ協定で採択された「世界平均気温を産業革命以前と比べ2℃より低く抑え、1.5℃に保つ努力をする」を目標に企業に温室効果ガス削減を求めています。

SBTの温室効果ガス算定もGHGプロトコルに基づいています。

CDP

「CDP」とは「旧名:Carbon Disclosure Project」の略で、企業に温室効果ガス排出量・削減目標の開示・環境変動に対する企業の取り組みの情報開示を促す国際的なイニシアチブです。

温室効果ガス排出量に関しての報告を、GHGプロトコルに従っておこないます。

Climate Neutral Now(CNN)

Climate Neutral Nowとは国連のUNFCCCによって設立された気候変動対策強化のための国際的なイニシアチブです。2050年までにカーボンニュートラルを達成することを目標としています。

Climate Neutral Nowの温室効果ガス算定・削減もGHGプロトコルに則っておこないます。

またこのwebメディアを運営している、株式会社ECOLOGICAでは、グリーンプロジェクトとして国内外の自社拠点に太陽光発電由来の再エネ電源導入を企画検討されている国内企業に対し、さまざまなサービスを提供、支援をおこなっています。ECOLOGICAは、世界最大級の太陽光専門商社PROINSOグループの日本総代理店です。温室効果ガスの排出量削減手段として、再生可能エネルギーの導入(特に海外拠点の再エネ調達)を検討している、という方は、こちらからお問い合わせください。

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まとめ|GHGプロトコルで企業価値UP

GHGプロトコルは世界で最も幅広く使用されている国際基準の温室効果ガス算定・報告の基準です。気候変動に対する国際的なイニシアチブのほとんどに、GHGプロトコルの基準が使われています。日本では現在、GHGプロトコルの報告基準と日本国内の温対法の報告基準に違いがあり、国内ルールを使用すると国際的なイニシアチブへ参加ができない場合があります。国際的信用を得るためにも、重要性やメリットを認識し、温室効果ガス算定・報告の際には導入してみてはいかがでしょうか。

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