グリーン購入とは?目的・メリットと企業の取り組み事例を紹介
「グリーン購入」とは、環境や社会に配慮した買い物のしかたです。また、「グリーン購入法」とは、持続可能な社会を実現するため、大量生産・消費・廃棄型の経済活動を改善することを目的として制定された法律です。企業による積極的なグリーン購入のメリットは大きく、世界的な達成目標にある脱炭素社会の一助となります。本記事では、グリーン購入およびグリーン購入法とは何か、その目的・メリットから4つの基本原則や企業の取り組み事例を紹介していきます。
グリーン購入とは?
「グリーン購入」とは、環境や社会に配慮した買い物のしかたです。まず、購入するかどうかを、今欲しいからという理由だけでなく、本当に今後必要なのか、という視点で吟味します。また、高品質で低価格といった部分も大切ですが、その商品が作られる過程や、廃棄後の処理などにおいて、社会問題や環境問題を引き起こしていないかという点にも注目する必要があります。これは、製品だけでなく、サービスにも言えます。他にも、商品を提供している企業が、環境負荷を減らす努力をしているか、企業の社会的責任(CSR)を果たしているか、環境経営をおこなっているか、などを調べ、判断するという方法もあります。
そもそも「グリーン購入」という言葉は、「グリーンコンシューマー」などの言葉を元にした造語です。言葉ができる以前にも、エコマーク制度が始まった1989年には、グリーン購入はおこなわれていたとされています。1994年には、滋賀県庁が「滋賀県環境にやさしい物品の購入基本指針」を定めるなど、環境にやさしい商品を購入していこうという動きが見られています。そして、1996年、「グリーン購入ネットワーク(GNP)」が設立されました。グリーン購入を全国に広めることが目的であり、この時に「グリーン購入」という言葉も作られました。
グリーン購入の目的・メリット
グリーン購入の目的は、再利用がより活発におこなわれる、循環型の社会を作り上げ、現在の環境問題を解決していくことです。すでに環境問題対策にはさまざまな方法がありますが、個人が始めるにはハードルが高いものもあります。その点、グリーン購入は思い立った瞬間から始めることができます。
4つのグリーン購入基本原則
グリーン購入基本原則とは、個人や組織がグリーン購入をする上で理解すべき、重要な考え方です。グリーン購入を始める前に、以下の4つの基本原則を知っておきましょう。
必要性の考慮
まず、購入する前に、本当にそれが必要なのかを考えましょう。いくらその時欲しくとも、家に代わりになるようなものがある場合、同じものでも中古品やレンタルで済む場合には購入する必要はないかもしれません。こうして、そもそもの購入量を減らすのです。
製品・サービスのライフサイクルの考慮
購入したいと考えた商品が、どのような影響を社会や環境に及ぼすのか調べることも大切です。買った後のことのみならず、買う前、そして自分が使わなくなった後のことまで考えなければなりません。具体的には、以下のような部分に注目しましょう。
有害化学物質等の削減
有害化学物質、重金属、オゾン層破壊物質などは、排出されると、人体や生態系に被害が出るおそれがあります。そのため、このような物質が使用されていない、または極力減らされていることが求められます。
省資源・省エネルギー
鉱物資源や化石燃料は有限です。現在の使用ペースを続ければ、あと数十年で枯渇すると言われています。加えて、石油や石炭などの化石燃料の使用は、地球温暖化の原因となります。これらの理由から、製造、流通、使用というすべての状況において、資源やエネルギーをなるべく使わないよう、心掛けなければならないのです。
天然資源の持続可能な利用
天然資源には、生物資源と無生物資源があります。生物資源とは、森林や水産生物のことです。また、無生物資源には、鉱物や水などがあてはまります。先述したとおり、鉱物は枯渇する可能性があります。一方で、森林などの生物資源は、再生サイクルを超えた過度な伐採などを行わなければ、無くなることのない再生可能資源と言えます。それぞれの資源の特徴をふまえ、利用ペースを考えなければなりません。他にも、資源を採掘するには労働力が必要ですが、価格を抑えるための児童労働や不当な低賃金が問題になっています。フェアトレードの取り組みも盛んになっているため、気にかけてみましょう。
長期使用性
製品は、長持ちするものを選びましょう。これは、修理や部品交換によって、長期間使えるものでもかまいません。ついつい新しい機種に変えたくなりますが、まだ使えるのなら控えましょう。
再使用可能性
よくリサイクルが取り上げられますが、リユース、すなわちそのまま再使用する方が環境にやさしいです。再使用に適した作りになっていたり、回収して再使用される取り組みがあったりする商品を探しましょう。
リサイクル可能性
リユースが理想的ではありますが、リユースが難しい製品もあります。その場合は、その商品がリサイクルできるのか調べてみます。具体的には、リサイクルしやすい素材の使用、リサイクルに出す際の分別が容易か、そもそも回収してもらえるものなのか、が大切になってきます。
再生材料等の利用
再生紙を利用しています、という表示を見たことがあるかもしれませんが、そのように、再生された材料・部品を使って作られた製品も選んでいくべきです。
処理・処分の容易性
長期使用、再使用、リサイクルを繰り返しても、どうしても使えなくなって、廃棄されてしまうものはあります。焼却や埋立の際に、可燃・不燃や有害物質を分けるためには、分解がしやすい作りだと、環境への負荷も小さくなります。
社会面の配慮
ここまで環境への負荷がよく考慮されてきましたが、先ほど触れたような人権への配慮も必要です。製造から廃棄の長い過程の中で、国際労働基準に違反していないか、フェアトレードが行われていないかにも注目しなければなりません。
事業者の取り組みの考慮
環境問題や人権問題に対して、積極的に取り組んでいる事業者の製品やサービスを買うようにしましょう。具体的には、以下のような部分がポイントとなります。
環境マネジメントシステムの導入
実際に、環境問題に対して一定の成果をあげるための体制ができている必要があります。例えば、従業員に対し、環境問題への理解を深める機会をつくったり、会社全体で達成すべき目標を掲げ、実行し、結果を受けてフィードバックをするなどの取り組みをおこなっている事業者を選びましょう。
環境への取り組み内容
具体的な取り組みとしては、製品・サービスのライフサイクルの考慮で触れたような商品作りの他に、公害・災害の防止や、グリーン購入、環境保護活動などがあげられます。
情報の公開
取り組みをいくらおこなっていても、消費者にそれを知る手段が無ければ意味がありません。自社の取り組みを公開するのはもちろんのこと、環境問題や人権問題に関して問題がないと分かるような透明性が必要です。
情報の入手・活用
私たちが購入に際して判断材料にできる情報は、2種類あります。1つ目は、第三者機関によって提供されるもの、2つ目は、事業者自らが公開するものです。前者の中では、環境ラベルやグリーン購入ネットワークのデータベースなどが参考になるでしょう。後者は、ウェブサイトなどから知ることができます。CSR報告書やサステナビリティ報告書を読むのも良い方法です。こうして情報開示を求め、グリーン購入を繰り返すことは、環境にやさしい製品・サービスを提供する事業者を増やすことに繋がるでしょう。
さらに詳しく知りたい方は、こちらをご参照ください。
グリーン購入法とは?
グリーン購入法とは、2000年5月24日に成立し、2001年4月1日から施行された法律です。グリーン購入法の正式名称は、「国等による環境物品等の調達の推進等に関する法律」です。国の機関にグリーン購入を義務づけるほか、事業者に商品生産や廃棄の過程などについて正しい情報を提供することや、地方自治体や国民がグリーン購入をおこなうことを呼びかけています。近年の環境問題の一因に、大量生産・消費・廃棄型の経済活動があるとして、制定されました。グリーン購入法は、どのような商品をグリーン購入すべきかを定めています。次の章では、それらを具体的に紹介します。
グリーン購入法で指定されている特定調達品目一覧
グリーン購入法では、国などが重点的に調達を推進すべき環境物品などの分野・品目、特定調達品目を指定しています。2021年4月の時点では、22分野282品目となっています。
以下は、指定されている22分野および、その分野にあてはまる品目の例です。
- 紙類(例)コピー用紙
- 文具類(例)のり、ステープラー
- オフィス家具等(例)いす、傘立て
- 画像機器等(例)コピー機、インクカートリッジ
- 電子計算機等(例)電子計算機、ディスプレイ
- オフィス機器等(例)シュレッダー、掛時計
- 移動電話等(例)スマートフォン
- 家電製品(例)電子レンジ
- エアーコンディショナー等(例)エアーコンディショナー、ストーブ
- 温水器等(例)ガス温水器
- 照明(例)蛍光ランプ
- 自動車等(例)乗用車、乗用車用タイヤ
- 消火器(例)消火器
- 制服・作業服等(例)制服、作業服
- インテリア・寝装寝具(例)カーテン、ふとん
- 作業手袋(例)作業手袋
- その他繊維製品(例)集会用テント、モップ
- 設備(例)太陽光発電システム、燃料電池
- 災害備蓄用品(例)毛布、ブルーシート
- 公共工事(資材)(例)間伐材、LED道路照明
- 役務(例)清掃、旅客輸送
- ゴミ袋等(例)プラスチック製ごみ袋
グリーン購入の取り組み事例
ASAHI
ASAHIの中でも、有名な商品である、「アサヒスーパードライ」350ml・500ml缶、「アサヒドライゼロ」350ml缶、ギフトセット内のビール類は、グリーン電力を使い、作られています。グリーン電力とは、地球温暖化の原因となる、二酸化炭素を排出しない再生可能エネルギーのことです。
他にも、ビール6缶をまとめる紙資材は、缶の安定性を確保しながらも形状を変更し、紙使用量を削減しました。加えて、右からしか開封できなかった作りを、左右どちらからも開封できるようにする、ユニバーサルデザインも取り入れています。
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エーザイ
医薬品の高い品質を確保するためには、大量の水が必要です。そのため、工場や研究所から多くの水が排出されています。そこで、エーザイグループは、水の使用量削減の取り組みを進めたり、排出される水が環境を汚染しないよう品質確保に努めたりしています。
また同グループは、社員一人ひとりに対し、グリーン購入を推進しています。また、エーザイ株式会社は、グリーン購入ネットワークへ参加していますし、独自のガイドラインを定め、活動しています。
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コスモ石油
コスモ石油も、グリーン購入をおこなっています。具体的には、購入の基準として、品質・価格などの通常の要素の他に、グリーン度評価を盛り込んでいます。グリーン度評価は、「商品自体」の環境特性とサプライヤーの「環境への取り組み」の両面から総合的に判断されます。
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バスクリン
会社名を冠した商品を始めとし、医療部外品や化粧品などを製造しているバスクリンでは、エコレポートを発表し、自社の環境問題への取り組みを公開しています。
エコレポートの中で、さまざまな活動を公表していますが、グリーン購入の推進もおこなっています。環境対応マークの付いた文房具の購入を推進しており、小さなところから、社員一人ひとりの意識を変えようとしていることがうかがえます。
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エレクター
スチールワイヤー棚などを製造するエレクターは、環境理念や行動指針を明確に定め、環境問題に取り組んでいます。配送の効率化やエコカーによる、運送面での環境配慮をおこなっている他、エレクターの札幌営業所、仙台営業所、名古屋営業所、福岡営業所は、各自治体の定める「エコ事業所」認定を受けています。エコ事業所とは、環境に配慮した取り組みを自主的かつ積極的に実施している事業所のことです。
また、グリーン購入法に適合する製品を製造・販売しています。
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グリーン購入で企業も消費者も環境に配慮を
環境や社会に配慮して商品・サービスを買うグリーン購入は、今すぐにでも個人で始めることができる環境や社会に対する貢献活動です。すでに多くの企業で取り組みがおこなわれています。
購入した再生可能エネルギーで自社の商品を製造することも、グリーン購入の一環です。
またこのwebメディアを運営している、株式会社ECOLOGICAでは、グリーンプロジェクトとして国内外の自社拠点に太陽光発電由来の再エネ電源導入を企画検討されている国内企業に対し、さまざまなサービスを提供、支援をおこなっています。ECOLOGICAは、世界最大級の太陽光専門商社PROINSOグループの日本総代理店です。温室効果ガスの排出量削減手段として、再生可能エネルギーの導入(特に海外拠点の再エネ調達)を検討している、という方は、こちらからお問い合わせください。
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