バーチャルPPAとは?フィジカルPPAとの違いやメリットを紹介

bannar

バーチャルPPAは、コーポレートPPAの1つであり、再エネ電力に含まれる「環境価値」のみを供給する方法を指します。日本ではあまり普及していませんが、海外ではすでに主流の仕組みです。本記事では、今後普及が期待されるバーチャルPPAのメリットや日本における課題と海外での事例を紹介します。

目次

バーチャルPPAとは

図1 off-site corporate.pdf (env.go.jp)より引用

バーチャルPPAとは、「バーチャル」が「仮想の」を意味する通り、実際に再エネ電力を供給するのではなく再エネ電力に含まれる「環境価値」のみを供給する方法のことです。

「環境価値」という言葉をご存じでしょうか。どのような方法で発電しようと電気自体に違いはありませんが、再エネ電力は、化石燃料由来の電力と異なり二酸化炭素を排出せず環境に優しいという価値を持っていますよね。この価値を「環境価値」と呼びます。環境価値は、通常再エネ電力を事業者から購入する際に再エネ電力証書という形で付与されるものですが、このバーチャルPPAでは、環境価値と電力を切り離して供給します。

この仕組みでは金銭のみを取引するため、別称は「ファイナンシャルPPA」です。電力の取引をおこなう必要がなく、再生可能エネルギーについてあまり詳しくない企業が取り入れやすい方法になります。

バーチャルPPAの契約においてまずおこなうのは、需要家と発電事業者の間の、再エネ電力の価格や売買に関する契約です。その後、発電事業者は電力会社などへ電力を販売し、収入を得ます。そして、発電事業者と需要家は市場価格と契約した価格の差額を清算し、再エネ電力証書を保有する権利を需要家に移します。最後に、需要家が電力会社や市場から通常通り電力を購入し、終了です。

フィジカルPPAとは

図2 off-site corporate.pdf (env.go.jp)より引用

バーチャルPPAと対照的な仕組みが、フィジカルPPAです。こちらは、発電事業者が需要家に、電力と環境価値をセットで供給する仕組みになります。「バーチャル」ではなく「フィジカル」に、電力会社を通して直接電力を供給します。

バーチャルPPAとフィジカルPPAとの違い

バーチャルPPAが再エネ電力証書によって環境価値のみを供給するのに対し、フィジカルPPAは電力と環境価値をセットで供給します。つまりバーチャルPPAでは、需要家は再エネ電力証書を発電事業者から直接購入することができるのです。フィジカルPPAでは、電力会社を通して、電力とセットでなければ再エネ電力証書を購入することはできません。

バーチャルPPAのメリット

再エネ電力証書を電力とセットでなくても購入できるのが、バーチャルPPAの特徴です。このことによってどのようなメリットがあるのでしょうか。

環境配慮とブランド力向上

現在、企業が環境に配慮していることを望む顧客や投資家が増えてきています。この傾向の中で、「グリーンウォッシング」と呼ばれるような、環境保全に取り組んでいると見せかけて実際にはその取組に効果がないという事態は避けなければなりません。

ここでバーチャルPPAでは、オンラインで取引をおこなうため、フィジカルPPAよりも化石燃料の使用を抑えられます。さらに、オンラインなら、投資家がどのCO2削減プロジェクトに投資したのかも明確です。そのため、バーチャルPPAはステークホルダーに自社の事業の効果を分かりやすく伝えられ、企業のブランドイメージの向上に繋がるのです。

物理的な拘束がない

バーチャルPPAでおこなわれるのは、金銭の取引のみです。企業がおこなうのは、これまで通り電力を電力会社から購入するだけとなります。そのため、会社の事業にほとんど影響を与えません。さらに、風力発電や太陽光発電などあらゆるタイプの再生可能エネルギーを契約することができ、また契約するのは1つでなくても構いません。投資におけるリスクを抑えながら、その価値を最大限に活用することができるのです。

長期間の確実なREC供給源となり得る

バーチャルPPAによって、10年〜20年の間REC(グリーン電力証書)の安定的な入手が保証される点も、大きなメリットです。グリーン電力証書の保有によって、企業は購入した電力が再エネ由来であるとみなされます。これによりScope2の排出を抑えられ、温室効果ガス排出量削減の目標に近づくことができるでしょう。

電力コストを抑えられる

バーチャル PPA であれば、電力の小売が自由化されていない地域に企業の事業拠点がある場合でも、遠くの発電事業者と契約を結んで再生可能エネルギーの電力を調達できます。自然エネルギーが豊富で発電コストの低い地域を選ぶこともできるため、賢く選べば電力のコストを長期的に抑えられるのです。

バーチャルPPA導入における日本の課題

魅力的なバーチャルPPAですが、日本では海外と比べ導入が進んでいません。それは、現行の制度では再エネ証書を購入することができないためです。日本では需要家が環境価値を直接購入することは認められていないため、発電事業者と需要家との間を電力会社などが仲介します。

しかし現在、経済産業省は、日本でもバーチャルPPAを導入するために制度改革を検討しています。具体的には、「非FIT再エネ証書(※)」を利用する方法です。非FIT再エネからの電気に由来する電力をPPAを用いて購入した場合、条件を満たせば発電事業者と需要家の間で直接「非FIT再エネ証書」を取引することができます。

※ 非FIT再エネ証書は、電力が再エネ由来であることを証明する「非化石証書」の1つです。詳しくは下記の記事をご参照ください。

バーチャルPPAの海外事例

日本では導入の進んでいないバーチャルPPAですが、海外ではすでに多数の事例があります。

マクドナルド

大手ファストフードチェーンのマクドナルド社は、2021年8月に、ライトソースBP社の建設する大規模太陽光発電所とバーチャルPPAの取引を開始したと発表しました。この事業によって、合計380MWの再生可能エネルギーの発電が見込まれ、毎年70万トン以上の二酸化炭素排出を防ぐことができます。

これまでバーチャルPPAを用いて大規模な再生可能エネルギー調達をおこなってきた企業には、GoogleやAmazonなどの大手IT企業が並びます。そのため今回の契約は、食品業界におけるバーチャルPPA導入の先駆けとなるでしょう。

Apple

米国のApple社は、事業所での消費電力を100%再エネでまかなうことに成功しました。この成功を支えたのが、バーチャルPPAの仕組みです。同社はバーチャルPPAに47億ドルを投資して、1.2GWもの再エネを生み出しています。さらに2020年、Appleは17の環境保全プロジェクトに資金援助をおこない、年間平均921,000トンの二酸化炭素排出量を削減しました。

ハイネケン・ヌーリオン・フィリップス・シグニファイ

ビール製造・販売会社のハイネケン社、化学メーカーのヌーリオン社、医療機器販売会社のフィリップス社、そして照明機器開発メーカーのシグニファイ社が、2020年12月に共同でバーチャルPPAの取引を開始しました。共同体としてバーチャルPPAを利用した例は、ヨーロッパでは初めてです。

この事業では、バーチャルPPAにより毎年330GWhの再エネを生み出しており、この数値は40000世帯の家庭が消費する電力量と同じとなります。

まとめ|バーチャルPPA、日本での普及に期待

バーチャルPPAは、海外ではすでに主流になっている方法です。今後日本でも普及が予測されるため、仕組みやメリットをよく理解し導入の準備をおこないましょう。

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