PCAFとは?世界初金融機関の環境イニシアチブをわかりやすく解説
「PCAF」は、金融機関の温室効果ガス算定・開示を目的とした国際イニシアチブです。金融機関を対象とした環境イニシアチブは世界初であり、注目を集めました。GHGプロトコルでは「直接的な排出」だけでなく「間接的な排出」も削減の対象となるため、金融機関が投資・融資した先の温室効果ガスを算定・報告することを求めています。
PCAFとは
「PCAF」とは「Partnership for Carbon Accounting Financials」の略であり、日本語では「金融向け炭素会計パートナーシップ」と呼ばれています。2015年にオランダで発足し、2018年には北米、そして2019年には全世界で取り組まれる国際イニシアチブの1つになりました。おもに金融機関の投資や融資を通して排出した温室効果ガスの算定・開示が目的とされています。
世界中の企業がPCAFに加盟しており、全世界で取り組み始めてからわずか3年で41カ国の138社以上の企業が参加し、総資産約41兆米ドルに相当するグローバルパートナーシップになりました。日本も例外ではなく、みずほフィナンシャルグループを筆頭に、東京海上日動火災保険、三菱UFJフィナンシャルグループなど、さまざまな金融機関が加盟しています。
参考:Partnership for Carbon Accounting Financials (cdn.cdp.net)
世界初、金融機関に特化した環境イニシアチブ
TCFDやRE100など、企業や団体の脱炭素化を求める国際的な環境イニシアチブはさまざまな種類がありますが、金融機関に特化した業界主導型イニシアチブは、この「PCAF」が初めてです。参加するための費用は発生せず、金融機関が自由に参加することが可能です。
今までは、金融機関には直接的な温室効果ガス排出がほぼゼロのため、算定・報告の対象にはなりませんでした。しかし温室効果ガス算定・報告の世界的な基準として「GHGプロトコル」という基準があり、そこでは直接排出だけでなく、間接排出も対象とする広範囲な基準を示しています。「間接的な排出」の算定・報告の一環として、金融機関の投資・融資をしたプロジェクトでの排出量も計算し、企業のバリューチェーン全体の排出をカバーすることを目指したPCAFが発足されました。
※GHGプロトコルとは
「GHGプロトコル」とは、温室効果ガス(Greenhouse Gas:GHG)排出量の算定・報告の世界的な基準のことを指しており、以下の3つのスコープを設定しています。
Scope1:直接的な排出
Scope2:事業活動での、エネルギーにともなって間接的な排出
Scope3:Scope1、Scope2以外での間接的な排出
そのため、
サプライチェーン排出量=Scope1+Scope2+Scope3
の公式が成り立ちます。
PCAF加盟のメリット
本章では、PCAF加盟のメリットを2つ紹介していきます。
社会的責任の達成
地球温暖化の加速が国際問題となっている今、自社の温室効果ガス(CO2)排出量の算定・報告に取り組むことは義務と化しています。
特に、2015年のCOP26にて採択されたパリ協定では、気候変動枠組条約に加盟するすべての国(197カ国)が温室効果ガス排出削減の削減をルールとしました。そのため地球上のほぼすべての国がこのパリ協定をもとに排出削減に勤しんでいます。
透明性の確保
リーマンショック以降、金融機関のステークホルダーは、自身・自社の資金の使い方、すなわち投資・融資がどのようにおこなわれているのか、といった情報の開示を求めることが多くなりました。
GHGプロトコルが世界に浸透し、製造業や運輸業などの業界のみならず金融機関もGHGプロトコルの「Scope」という考え方を活用し、算定・報告をする機関が増えています。
外部への透明性を確保し、ステークホルダーや社会から信頼の置ける金融機関を目指しましょう。
PCAFに加盟している日本の金融機関
みずほフィナンシャルグループを筆頭に、さまざまな日本の金融機関がPCAFに加盟しています。2021年11月には、PCAFの日本加盟機関からなる「PCAF Japan coalition」が発足しました。2022年2月末時点の加盟機関は以下の13社です。
- MS&ADインシュアランスグループホールディングス
- かんぽ生命保険
- 住友生命保険
- SOMPOホールディングス
- 大和証券グループ本社
- 東京海上日動火災保険
- ニッセイアセットマネジメント
- 野村アセットマネジメント
- みずほフィナンシャルグループ
- 三菱UFJフィナンシャルグループ
- 三井住友トラスト・ホールディングス
- 三井住友フィナンシャルグループ
- ゆうちょ銀行
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参考:PCAF Japan coalition (env.go.jp)
りそな銀行の例
りそな銀行ではTCFD炭素関連の4つのセクターを対象とし、排出量を分析しています。
排出量のデータの取得が可能な150社ほどの上場企業にはボトムアップ分析、データの取得が困難な中小企業(大手も含む)にはトップダウン分析をおこないました。
ボトムアップ分析とは
「ボトムアップ分析」とは、各社で開示されている排出量のデータから得る事業自体を反映した排出量算定の分析方法です。データの質が高く、各社の排出削減努力をきちんと反映することができる一方、情報開示している企業の数が限られる点やコストがかかる点が懸念されています。
トップダウン分析とは
「トップダウン分析」とは、対象のセクターの平均的な排出係数から導き出した排出量の推定の数値を使用する分析方法です。情報開示していない企業も満遍なく分析でき、簡易的に全体の傾向を把握することができますが、あくまでも平均的な数値を使用するためデータの質が下がってしまいます。
まとめ|PCAFに加盟し、金融機関の排出量算定の波についていこう
今まで温室効果ガス排出量算定・報告の観点において、あまり注目されることがなかった金融機関。パリ協定で設定された「2050年までにカーボンニュートラル達成」の目標を達成するためには金融機関の協力が不可欠だということがわかり、PCAFを先頭に、金融機関の温室効果ガス算定・報告を求める声が世界中で挙がっています。PCAFに加盟し、世界の金融機関の排出量算定の波に置いていかれないようにしましょう。