企業のCO2削減|中小企業が取り組むべきこととそのメリット【ESG/J-クレジット】

bannar

近年、地球温暖化は深刻化しており、低炭素社会(脱炭素社会)への転換を必要としています。地球温暖化の原因となる温室効果ガスの削減は、今や企業にとって、CSV(Creating Shared Value)の考え方に結びつきます。社会価値と企業価値の両立を追求することが競争優位の源泉となり、結果的に社会課題の解決と企業の利益、競争力向上を両立させ、社会と企業の両方に価値を生み出すことに繋がります。ここでは国内の企業がCO2削減を実践するために、まず知っておくべきことを分かりやすく解説します。

CO2削減が企業に求められるのはなぜか

日本政府は、国内全体のCO2排出量を大幅に減らすために必要不可欠なものの1つは企業の協力だと考え、国内の企業に積極的なCO2削減の取り組みを求めています。

パリ協定とカーボンニュートラル

2016年に発効されたパリ協定では、世界平均気温を産業革命以前と比べ2℃より低く抑え、1.5℃に保つ努力をすることを目的としています。このことを受け日本政府は、2050年までに温室効果ガスの排出量を合計でゼロにするという目標を明らかにしました。この「合計でゼロにする」という言葉の意味は、「排出量から吸収量と除去量を差し引いた合計をゼロにする」ということであり、すなわち国内では2050年までにカーボンニュートラルや脱炭素社会の実現を目指しています。

※パリ協定とは

「パリ協定」とは、1997年に定められた、京都議定書の後を継ぐ国際的な脱炭素化の取り組みです。パリ協定では各国に5年ごとに削減目標を再提出することを課しており、削減状況の見える化を図っています。

CO2削減の企業に対するメリット

企業にとってCO2を削減することは、手間や時間などのデメリットより、メリットのほうが圧倒的に大きいと言えるでしょう。その代表的なメリットを紹介します。

投資価値のある企業:ESG投資

まず「ESG」とは、
・Environment(環境:環境問題に配慮しているか)、
・Social(社会:ボランティアや労働環境の改善など、社会に貢献しているか)、
・Governance(ガバナンス・企業統治:不正なことをしていないか)
の3つの目標の頭文字を取った言葉です。ESGを軽視している企業は長期的な発展が見込めない、という考えが世間に浸透してきており、これからの社会を生きる上で企業にとっては欠かせない目標となっています。

そして「ESG投資」とは、この3つの観点を考慮した投資活動のことを指します。投資家はESGの取り組みを可視化した「ESGスコア」で投資をする企業を判断しています。スコアは年に2回更新されており、年々このスコアを獲得することが難しくなっているため、スコアに対する信頼性も高まっています。

グローバル企業の取り組み:RE100、SBT、TCFD

2050年までに脱炭素社会を実現するという目標を達成するために、国内外でカーボンニュートラルに向けた働きが急速に進められつつあります。また、グローバル企業を中心として、RE100(Renewable Energy 100%)、SBT(Sience Based Targets)、TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)などの脱炭素経営への転換が広まっています。

加えて、RE100やSBTに加盟している企業は自身の環境活動だけでなく、取引先の企業にも再生可能エネルギーの導入を求めており、世界的に有名なApple社は取引先の選考基準の中に再エネ化の取り組み状況を入れ、企業へのCO2削減を広く呼びかけています。

画像引用:中小規模事業者のための 脱炭素経営ハンドブック (env.go.jp)

CO2削減の施策

政府(環境省)は、脱炭素化に向けた各企業の在り方について、ハンドブックを通し提案しています。

CO2削減の基本的な考え方

環境省が公表した『中小規模事業者のための脱炭素経営ハンドブック』を元に、企業が目指すべき脱炭素化に向けた在り方を見ていきましょう。
引用:中小規模事業者のための 脱炭素経営ハンドブック (env.go.jp)


2015年に公表した「温室効果ガス削減中長期ビジョン検討会 とりまとめ」においては、温室効果ガス大幅削減の方向性として以下の3点を挙げています。

  1. 可能な限り、エネルギー消費量を削減する(省エネを進める)
    例)高効率の照明・空調・熱源機器の利用等
  1. 可能な限り、エネルギー消費量を削減する(省エネを進める)
    例)高効率の照明・空調・熱源機器の利用等
  1. 可能な限り、エネルギー消費量を削減する(省エネを進める)
    例)高効率の照明・空調・熱源機器の利用等
画像引用:中小規模事業者のための 脱炭素経営ハンドブック (env.go.jp)

CO2削減の計画策定の検討手順

温室効果ガスを充分に削減するためには環境活動や省エネ対策だけでは困難であり、バイオマス発電や水素エネルギーなど、温室効果ガス排出量の少ないエネルギーの利用を視野にいれることが必要となります。その可能性を以下の4つのステップで考えてみましょう。

画像引用:中小規模事業者のための 脱炭素経営ハンドブック (env.go.jp)

STEP1:長期的なエネルギー転換の方針の検討

省エネ対策のみでは温室効果ガスの大量排出を止めることは難しいため、根本的にエネルギーの種類を、温室効果ガス排出量が多いものから少ないまたはゼロへ、転換することが必要となります。例えば、ボイラーをバイオマスボイラーに変更することで、大幅に温室効果ガスを削減することが可能になります。

STEP2:短中期的な省エネ対策の洗い出し

STEP1で検討したエネルギー変換を前提とし、短中期的な省エネ対策を考えます。例を挙げると、冷暖房の設定温度を緩和したり、LED照明を導入したりすることが可能です。

STEP3:再生可能エネルギー電気の調達手段の検討

再生可能エネルギー電気は、STEP1のエネルギー転換と並行することで、大幅なCO2削減が可能となります。具体的な再生可能エネルギー電気の調達手段としては、自家発電や小売電気事業者との契約が挙げられます。

STEP4:削減対策の精査と計画の取りまとめ

STEP1~3の検証結果をまとめ、良いとされる削減対策について、想定される削減量・投資金額・光熱費などを整理し、その削減対策が本当に良いものなのかどうかを判断します。

目次

企業に推奨される取り組み

政府は、各企業が取り組むことのできる、CO2削減のための具体的な方法を提案しています。

働き方改革(テレワーク・リモートワーク)

「働き方改革」とは、従来当たり前であった日本企業の労働環境や働き方を見直し、改善させていく、という取り組みです。そこで頻繁に注目を浴びるのは「テレワーク/リモートワーク」といった、これまで会社内で行っていた業務を家の中で行う、という新しいワークスタイルです。
コロナウイルス感染拡大防止のため普及したテレワーク・リモートワークですが、この働き方は環境負荷を下げCO2削減にもつながるため、近年注目を浴びはじめました。
一般的な会社員が通勤や業務の中で排出するCO2のうち、90%以上が通勤で占められているため、通勤をしないスタイル、すなわちテレワークは日本のCO2削減に大きく貢献すると言われています。

カーボンオフセット

「カーボンオフセット」とは、経済活動や日常生活で排出される温室効果ガスのうち、削減しようと努力しても削減しきれない分を、CO2削減事業や他国との取引によって相殺しようとする制度です。
カーボンオフセットについて詳しく知りたい方は、こちらを参照してください。

まとめ|CO2を削減して企業価値を高める

CO2を削減することで環境への負荷を下げるだけでなく、企業としての競争力を向上させることにもつながります。長期的な視点ではもちろん、短中期的に見ても、企業の発展を大きく手助けすることも可能です。
また、環境問題に対する企業の協力は、日本政府が設定した2050年までの目標を達成するためには欠かせないものとなっています。
持続できる企業となるために、CO2削減に積極的に取り組んでみてはいかがでしょうか。

この記事をSNSでシェア
目次
閉じる