ライフサイクルアセスメント(LCA)とは?目的から分析手順・事例、問題点まで
「ライフサイクルアセスメント(LCA:Life Cycle Assessment)」とは、商品やサービスを調達・提供するまでの過程から、廃棄やリサイクルに至るまでの一連のライフサイクルにおける環境負荷を算出する手法のことを指します。
具体的には、各段階における資源やエネルギーの使用量、排出量などを定量的に分析したあと、それらの環境や枯渇資源への影響を測り、最終的には環境改善に向けたメソッドを考案することをゴールとしています。
ライフサイクルアセスメント(LCA)の分析手順
ライフサイクルアセスメント(LCA)において環境負荷を分析する時には、いくつかの手順に沿って進めなければなりません。これは国際標準化機構(ISO:International Organization for Standardization)の規格に基づいています。この章では、この分析手順について解説します。
目的と調査範囲の設定
ライフサイクルアセスメントは「目的の調査範囲の設定」から始めます。これによって調査方法・内容が左右されるので注意しておこなう必要があります。
具体的には、次の3つです。
- 調査目的を明確にし、「製品機能」の特定をする
- 調査結果の用途を示す
- 目的に沿って「システム境界:対象プロセスを含む自然界との分かれ目」を整理する
インベントリ(収集したデータ)分析
調査対象の入力・出力のデータ収集をインベントリ分析(LCI:Life Cycle Inventory)と呼びます。このデータには材料使用量、エネルギー消費量、環境負荷物質の排出量、廃棄物量などが含まれています。
インパクト評価(影響評価)
インベントリ分析の結果から、製品の「目に見える部分」と「目に見えない部分」の影響を評価します。評価の詳細はライフサイクルアセスメント(LCA)の目標と調査範囲によって変わります。
結果の解釈
解釈では、インパクト評価の結果を調査目的と照らし合わせて結論を導き出します。この結論をもとに、ライフサイクルのどの段階でなんの環境負荷改善策を講じるべきか、具体的な方法を考えます。
ライフサイクルアセスメント(LCA)の企業事例
環境に配慮した経営が求められる近年で、ライフサイクルアセスメント(以下LCA)は順調に浸透しつつあります。この章では、実際にLCAを導入している企業を紹介します。
日本ハム
「日本ハム」は、LCAの手法を利用した「カーボンフットプリント」に取り組んでいます。カーボンフットプリントとは、商品またはサービスの原材料調達から廃棄またはリサイクルに至るまでの過程における温室効果ガス排出量をCO2に換算し、商品やサービスに表示する取り組みです。日本ハムはカーボンフットプリントのマークが付いた商品を販売しています。
富士通
「富士通」では、1998年より導入した「グリーン製品」への評価にLCAを用いています。それに加え、一部の商品にはLCAを生かして環境ラベル(エコリーフやEPEATなど)の取得を目指しています。
SUBARU
「SUBARU」では、自動車1台をつくる上での環境負荷を可視化し、環境負荷を軽減していくためにLCAを取り入れています。車の種類別にライフサイクルでのCO2排出量を表で表し開発を重ね、従来型車と比べると新型車は環境負荷軽減を成功させています。
ライフサイクルアセスメント(LCA)の課題
ライフサイクルアセスメント(以下LCA)は自社の製品やサービスにおける環境負荷やそれを改善する道筋を示すものとして重要視されてきています。しかし、このシステムは完璧なものではなく、いくつかの問題点が指摘されています。
ライフサイクルアセスメント(LCA)の正確性
その1つがLCAで導いた環境負荷の計算の正確性です。ひとつひとつの製品やサービスは違う条件で制作されたり構成されています。エアコンを例に挙げると、いつどのくらいの頻度で、どんな電力が使用されているかで環境負荷は大きく変わります。そのため、それら製品やサービスひとつひとつを取って環境負荷を計算しなければいけない、という点がLCAの課題点として挙げられています。
ライフサイクルアセスメント(LCA)の細かな計算
もう1つの課題は、LCAでは製品やサービスひとつひとつにより正確な環境負荷の値が求められるため、統一されたLCAデータベースでは細かい削減量の計算が不可能だという点です。そのため、LCAをきちんと理解し、自ら計算することが必要となります。
まとめ|ライフサイクルアセスメント(LCA)は環境保全の一環
ライフサイクルアセスメント(LCA)は脱炭素社会の実現には欠かせない取り組みです。正確な分析や調査を必要とするためハードルが高いように思われがちですが、工夫をこらしたり、コンサルティングを受けたりすることで、意外とかんたんに取り組むことが可能となります。
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