RE100 Technical Criteriaとは?基準の内容を分かりやすく解説 【2022年 最新版】

bannar

RE100と呼ばれるイニシアチブをご存知でしょうか。このイニシアチブでは、参加する企業や団体が事業活動で使用する電力を、100%再生可能エネルギーでまかなうことを目指します。そして、RE100に使用できる再生可能エネルギーの基準を示すものが、今回ご説明するRE100 Technical Criteriaです。直訳するとRE100の技術要件となります。

本記事では、RE100とRE100 Technical Criteriaの概要、そして基準の内容について詳しく解説していきます。

目次

RE100とは

「RE100」とはRenewable Energy 100%の略であり、2050年までに自社の事業運営をすべて(100%)再生可能エネルギー(Renewable Energy)に置き換える取り組みを推進している国際イニシアチブです。加盟している企業は、年に1度、具体的な目標を事務局に提出する必要があります。

RE100について、詳しくは下記の記事をご参照ください。

続いて、RE100 Technical Criteriaについて解説していきます。

RE100 Technical Criteriaとは

RE100 Technical Criteriaは、直訳するとRE100の技術要件です。

再生可能エネルギーを使用するには、自家発電する、再エネ電気を購入する、再エネ電力証書を購入するなど、さまざまな調達手段があります。RE100の成果を信頼できるものにするためにも、再生可能エネルギーの調達手段や市場等に関する世界的基準が必要です。

そうして定められたのが、RE100に用いることのできる再生可能エネルギーの世界基準を示すRE100 Technical Criteriaとなるのです。この基準は2年周期で改定されます。2022年10月24日には基準が改定され、主に2つの変更が加わりました。

引用文献
>>RE100 Technical Criteria Aug 2021.pdf (there100.org)

以下、RE100 Technical Criteriaで定められている再生可能エネルギーの基準を、それぞれ解説していきます。

RE100 Technical Criteriaには何がある?

RE100 Technical Criteriaで定められている再生可能エネルギーの調達方法を、自身で調達する場合と購入する場合に分けてご説明します。

自家発電した再生可能エネルギーを自家消費に使用

まず、再生可能エネルギーを自家発電により調達する場合です。この場合は、企業の敷地内外問わず、企業が所有する発電設備によって発電されたすべての再生可能エネルギーがRE100の対象になります。また、系統接続(※1)の有無も問われません。

この自家発電による再エネをRE100に用いるには、「属性証明(※2)」が必要になります。属性証明の仕組みが無い市場では、自社で発電した再エネ電力を他社が利用しないことを保証しなければなりません。

(※1)系統接続とは、発電した電気を利用者に届けるために、発電・変電・送電・配電からなる電力システムである「電力系統」に接続することです。

(※2)属性証明とは、証明書利用者のアクセス権限を示すものです。アクセス制限を行うために必要な個人情報(名前、所属、部署、役職など)を証明書内に記します。

再生可能エネルギーの購入

再生可能エネルギーを購入する場合には、どのような方法、そして要件があるのでしょうか。

企業の敷地内に供給者が設置した設備から購入

まずは、自社の敷地内に電力供給者が設備を設置する場合です。この方法で調達した電力をRE100に用いるには、電気を供給する企業との電力供給契約で再エネであることを裏付ける必要があります。

第三者が保有する設備からの再エネ電力を直接利用する場合、発電設備が系統接続されておらず電力消費量が計測されているならば、属性証明をおこなう必要はありません。ただし、系統接続されている場合は、自社で属性証明をおこなうか非化石証書の購入などによって小売電気事業者に償却してもらわなければなりません。

非化石証書について、詳しくは下記の記事をご参照ください。

企業の敷地外に設置した発電設備から送電網の切り替えを必要としない専用線を経由して直接購入

こちらは、企業の敷地外に設置されている、第三者が所有・管理する発電設備から、自営線(発電所から電力連系点までを結ぶ送電ルート)を通じて直接再エネ電力を供給する方法です。

前項の自社の敷地内に電力供給者が設備を設置する場合と同じく、発電設備が系統接続されておらず電力消費量が計測されているならば、属性証明をおこなう必要はありません。

企業の敷地外にある系統に接続した発電設備から直接購入(例:PPA 電力販売契約)

電力購入契約(PPA:Power Purchase Agreement)として知られる方法です。発電事業者(および小売電気事業者)と電力使用者との間で、再生可能エネルギーを発電するために電力契約を結びます。太陽光発電設備の設置費用をPPA業者が負担してくれるという金銭的なメリットがあります。

この方法で調達された電力をRE100に用いるには、属性証明が企業に移転されて償却されるか、PPA業者が企業に代わって償却しなければなりません。企業が再エネ属性を他の法人に売った場合は、再エネをRE100に用いることはできないため注意が必要です。

PPAについて、詳しくは下記の記事をご参照ください。

供給者(電気事業者)との契約(例:Green Tariff「グリーン料金メニュー」)

再エネ電力を供給する業者が、企業の電力使用量とさまざまな事業や電源による再生可能エネルギー電力量を一致させる方法です。このような種類の契約は、グリーン電力商品や、グリーン電力料金と呼ばれます。

この方法で調達する場合、再エネ供給業者が電力を使用する企業に代わって属性証明書を購入しなければなりません。購入した証明書は、供給業者が保有または償却します。また、属性証明が保有者のみに使用されることを保証するために、製品は第三者により検証されなければなりません(米国やカナダにおける Green Tariff「グリーン料金メニュー」など)。

 分離型契約証書の購入

企業は、同じ市場で稼働している再エネ発電設備によって発行された電力属性証明書を取得することによっても、RE100に成果として報告することができます。

このような証明書には、北アメリカのRECs、ヨーロッパの発電源証明Guarantee of Origin、その他地域のI-RECsなどの電力と分離した証明書などがあります。企業はこれらを購入することで、RE100に用いることのできない化石燃料などによる電力消費に割り当てることが可能になるのです。

送電網を通じて標準的に供給される再生可能エネルギー

こちらは、消費者が自主的に調達したものではなく、電力供給会社がデフォルトとして供給している再生可能エネルギーです。

企業はこのような再生可能エネルギー電力を、使用量に応じたEAC(Energy Attribute Certification)(※3)を発行する場合にのみRE100に用いることができます。また、RE100 の基準を満たした電力は、電力供給者が償却します。

このような方法で調達したエネルギーをRE100に用いる場合、電力供給者から関連情報を入手し、その電力が RE100の他の要件を満たしていること、および適切な再生可能エネルギー源から発電されていることを確認しなければなりません。

(※3)EACは、再生可能エネルギーの持つ環境価値(環境を保護するという働き)を証明するための証書の総称です。非化石証書、グリーン電力証書などが含まれます。

詳しくは下記の記事をご参照ください。

送電網を通じて標準的に供給される再生可能エネルギーが95%以上かつ再生可能エネルギーを特別に割当てる仕組みがない場合

その国の標準の電力系統における再生可能エネルギーの割合が 95%以上であり、電力系統から再生可能エネルギー電力を調達する仕組みがない場合、その国の電力系統は再生可能エネルギーとして扱われます。これは、国の送電網全体が高い比率である場合にのみ適用されます。つまり、1つの州や地域が 95%を超えていてもRE100への使用は認められず、また、その国の使用電力が系統以外からのものである場合も適用されないのです。

現時点では、RE100はパラグアイ、ウルグアイ、エチオピアのみこの基準を満たしています。ノルウェーやアイスランドなど、電力系統に再生可能エネルギーが導入されている国では、再生可能エネルギーが特定の顧客により取引されているため、RE100の対象にはなりません。また、ネパールのように再生可能エネルギーの割合が高くても、大量の電力を輸入している場合は対象外です。

その他の要件

これまで、RE100に用いることのできる再生可能エネルギーの調達方法・証明方法について説明してきました。本章では、RE100 Technical Criteriaで定められている参加要件、市場の境界についての基準について解説します。

Joining Criteria(参加要件)

RE100には、企業が参加するための条件があります。今回は、代表的な4つの基準をご紹介します。

  1. 年間電力需要が、少なくとも0.1TWh / 100GWh / 100,000MWh であること。
  1. 事業活動全体を通じて再生可能エネルギー率100%の電力を調達する、もしくは調達済みであることを公約し、目標年次を公言していること。また、再生可能エネルギー使用率100%を達成するための現実的な戦略を持っていること。
  1. グループ単位でRE100に参加すること。ただし、年間1TWh以上の電力を使用している企業と親会社と完全に分離している子会社は除かれます。
  1. イニシアチブの全体的な進捗状況を把握し、毎年進捗状況を報告すること。企業は、RE100報告用のスプレッドシートを用いて報告します。

全文は下記のURLからご覧いただけます。

RE100 Joining Criteria Aug 2021_1.pdf (there100.org)

Market Boundary Criteria(市場の境界についての基準)

どのような市場が再生可能エネルギーを扱っていると言えるのか、を判断する基準も存在します。具体的には、電力部門を管理する法律や規制が発電する土地と消費する土地の間で同じであり、国家間のシステム全体のレベルを示す電力系統がある市場です。そして、これらの国の電力供給者が、互いのエネルギー調達手段を認識していることが理想的です。

例えば北アメリカ大陸では、米国とカナダは合わせて1つの市場とみなされています。またヨーロッパ大陸では、欧州の国を合わせて欧州単一市場(European Single Market)を形成しています。ただし、アイスランドは送電網がないため、この市場には参加していません。

今後、EUとの相互協定の変更や、新たな系統などの大きな変化に応じて、定期的に欧州単一市場を見直す予定です。その際、一部の国を除外する提案があれば、その国の市場も見直します。現在の市場の定義を変更する場合は、それまでの取引のグランドファザリング(※4)を設けた後に協議されます。

(※4) グランドファザリングとは、定められた期間の温室効果ガス削減実績を基に、削減分の排出枠を与える仕組みです。

2022年の改定での変更点

2022年10月24日に基準が新たに改定され、主に2つの変更が加わりました。本章では、その改定内容について詳しく紹介していきます。

稼働15年以内の期限設定

再エネ電力の購入について、発電所の運転開始または再稼働から15年以内という制限が加わりました。電気事業者の小売供給契約とエネルギー属性証明書(EAC)を購入する場合が対象となります。日本国内では非化石証書、グリーン電力証書、J-クレジットが対象となります。

欧州における単一市場の定義見直し

欧州における再エネ電力の単一市場の定義が見直されました。RE100では、以下のすべての要件を満たす国や地域を、欧州における再エネ電力の単一市場とみなします。

  • EUの単一市場に属していること
  • 欧州エネルギー証書システム(EECS)の原産地保証を発行する発行機関協会(AIB)に加盟していること
  • 最初の2つの要件を満たす他国との系統接続があること

まとめ

RE100に用いることのできる再生可能エネルギーの国際的な基準について、ご理解いただけましたでしょうか。今回挙げた調達方法や証明方法から自社に合っているものを選んでRE100に加盟し、再生可能エネルギーの普及に貢献していきましょう。

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